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初陣の顔、去り際の後姿

 今年もたくさんのボーイが店の戸を叩き、たくさんのボーイが去り、たくさんのボーイが人知れず消えていった。俺は大して歴も長くないはずなのだが、今年もたくさんのボーイ達を見送った。

「あれ、先月入った子もういなくなったんですか?」
「だな。思ったより稼げなくて、だとよ」
「順当……いえ、なんでも」
「おい(笑)しかしまぁU輔もすっかり『おくりびと』化してきたな」
「立ち会ったの数人しかいないんですけど(笑)みんな知らない間に消えてるだけじゃないですか!」

 この業界は人の出入りが激しい。1年間定期的に出勤しているだけでも割と長い方である。意気揚々と入ってきたかと思えば1ヶ月も経たぬ内に去っていったり、実際に接客して無理だと感じたり、穏やかなフェードアウト、家庭事情、進学・就職・転居、突然の音信不通、違反行為(ヤミケン等)や悪辣な勤務態度によるクビ、店内の人間関係……。去っていく者達、行方不明になる者達には各々の事情がある。

 円満にというか、ボーイ自身が決めた目標や期限を達成して去っていくケースは非常に稀。その原因は至極単純で、大抵のボーイは自分が思うほど稼げないから。それだけだ。稼げないから目標は達成できないし、稼げないなら在籍する意味がないと考え期限関係なく見切りをつけて去っていく。


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真田U輔の業務レポート2021年12月号です。 12月に書いた記事の詰め合わせ。週3更新。

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市場調査とかやってみたいですね。