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#6 ビッグ・マウス・ストライクス・アゲイン/ザ・スミス

渋谷陽一の「サウンドストリート」「FMホットライン」を聴いていた高校生の私は、「ロッキング・オン」がどんな雑誌がずっと気になっていた。

そのうち、「日立ミュージック&ミュージック」が民放でスタートし大好きなDJとして揺るがない存在となっていく。住んでいる町の本屋には置いていない。雑誌の実物を一度も見ないまま、編集長の声ばかりを聴いていたわけだ。

旭川の高校に行くようになって、大きな書店を注意深く見るようになったが、やはり音楽/映画雑誌コーナーで見かけることはなく、相変わらずFM誌が音楽情報のすべてだった。

そのうち「ロッキンf」という雑誌をみかけるようになり、渋谷陽一の雑誌はコレだろうか?としばし眺めることがあったが、編集長のクレジットが違うし、どうも自分の好きそうなバンドが出ていないので、やはり違うようだった。

高校2年の秋、バス通の私が珍しく駅まで歩いている途中、小さな書店に何とは無しに立ち寄った。初めて訪れる小さな本屋だった。どうせないだろうとタカをくくっていると、“rockin’on”の文字が飛び込んできた。表紙はモリッシーの薄ぼんやりとした表情。見出しには“ザ・スミス、ジョニー・マー脱退!”まさか、最初に出会った号で最愛のバンドの崩壊を知るとは。帰りのバスの中でむさぼるように読破し茫然自失となった。この時から実に30代半ばまで、18年にわたり買い続ける相棒になろうとは知る由もなかった。

83年にデビューしたマンチェスターのバンドは、日本のラジオで滅多にプレイされなかったが、FM誌の広告に載った半裸の男性が写るデビューアルバムはなぜか気になっていた。高校に入ってから6条通にあったレコファンで、全英で1位になったという【ミート・イズ・マーダー】の輸入盤を買いハマった。

【クイーン・イズ・デッド】が出て少しずつラジオでもかかるようになった。NHK-FMでライブコンサートの番組があり、まるまるエアチェックした。DJは矢口清治さんだった。ライブバンドたるザ・スミスの輝きがそこにはあった。

「クイーン・イズ・デッド」から珠玉の名曲が次々とプレイされる。元アズテック・カメラ、クレイグ・ギャノンのサポートが効いており、縦横無尽なジョニー・マーのプレイをお腹いっぱい堪能できる。「心に茨を持つ少年」はスタジオ版よりギターが際立っている。「セメトリー・ゲイツ」もひときわポップに聞こえる。特に「ビッグ・マウス・ストライクス・アゲイン」の暴力性はすさまじい。狼のように咆哮するモリッシーはまるで暴君だ。何度もそのカセットを聴いた。「アイ・ノウ・イッツ・オーヴァー」は、バンドの臨終を見送るファンファーレに聞こえた。

88年になってライブアルバム【ランク】輸入盤をこれまたレコファンで購入。繰り返し聞いたカセットのライブ音源そのままだったのには驚いたけれど、ザ・スミスの喪失とともに、私と“rockin’on”との長い付き合いが始まった。


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