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実家が全焼した話

こんにちは。
実家が全焼したサノと申します。

今回は僕のアカウント名の由来でもある、
実家が全焼した話をします。

僕の実家が全焼したのは小学生の時です。
ご近所さんの寝タバコが原因でした。

家も、家具も、服も、写真も、
全て燃えて無くなってしまいました。

とはいえ元々貧乏だったので、
全焼した時の悲しみは
それ程大きくありませんでした。

むしろ父にとっては、
中途半端に半焼にされるよりも
しっかりと全焼してくれた方が
保険金が多く貰えるので、
父は「全焼になれ!」と
燃え盛る炎に向かって祈っていました。

当時の僕にとって何より辛かったのは、
お気に入りだったウルトラマンの貯金箱が
丸焦げになってしまったことでした。

お年玉やお小遣いも全部そこへ
入れていたのですが、
貯金箱はまるで即身仏のように
なってしまっていました。

しかし数日後、そのボロボロの貯金箱を
父は5000円で買い取ると言ってきました。

僕にとってこんなにありがたい提案は
なかったのですが、なぜか少しだけ欲張って
「7000円ならいいよ。」と言いました。

驚いたことに父はその提案すらも、
素直に受け入れてくれました。

流石に小学生にして実家が全焼してしまった
僕を不憫に思ってくれたのでしょうか。
それとも誰かから見舞金でも
受け取ったのでしょうか。

どちらにせよありがたい話なので、
僕は父にお礼を言い、お金を受け取りました。

僕に7000円を支払った父は、
「ありがとう」とつぶやきました。

僕が不思議そうに父を見ていると、
父は無造作に貯金箱を開けました。

貯金箱の中には、
お年玉やお小遣いが綺麗に残っていて、
10万円近くのお金が入っていました。

父は貯金箱の中身が
無事であることを知っていたのです。
そして実の息子から9万3000円
ふんだくったのです。

僕はあまりにショックで、
膝から崩れ落ちて泣きました。

すると父は真っ直ぐな目で

「人も物も外見で判断したらあかん」

と僕に語りかけました。

確かに僕はボロボロの貯金箱を見て、
中身もボロボロに違いないと、
見た目で判断してしまいました。

今後、見た目で判断するのは
絶対にやめようと心に誓いました。

ただ、その教訓を語りながら
ボロボロのGパンのポケットに
1万円札を数枚突っ込んで
競馬に向かった父親の姿は、
見た目通りにイカれてやがりました。


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