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【補足記事】ギルドと労基法〜ギルドは毒にも薬にもなる〜

昨日の「社員を全員フリーランスにしてギルド化します」の記事が、思いのほか拡がって、興味あるから一緒にやりたい!などの問い合わせもけっこう来ていて、ありがたく思っています。一方で「ギルドって労基法をスルーする仕組みだね」的なコメントもいくつか頂いたので、知り合いの詳しそうな方に聞いてみました。もちろんブルーパドルの場合は、全然そうはなり得ないんですが、なるほど、たしかに「ギルド」っていうのは、悪用すれば「社員に支払う保険とか税金対策をちょろまかすためのズルイ手段」にもなり得るわけですね。

悪いギルドもある

「新しい会社の在り方=ギルド!」みたいな、口当たりのいい見せ方をしつつその実態は、社員を守るための労働基準法を下回るような低賃金で働かせたり、出社義務、遅刻欠勤の概念は残ってたり…。そういう「実質的には社員かそれ以下なのに、外注先扱いでやっている」みたいな場合、労基法違反の対象になるようです。(…と僕は理解しました。)

もし昨日の記事によって、「悪いギルド」の手段に舵を切る会社が出てきたら、全く本意ではないし、ブルーパドルとしてはそこら辺どう考えているのかは補足した方がいいなと思い、記事を追加しました。

ただ、僕は法律のド素人です。「これって社員?外注?」に関する判断としては、以下の記事が分かりやすかったです。ぜひ、ご参照ください。

●その人が社員なのか?外注先なのか?
https://www.roumu55.com/knowhow/2012/04/post-8.html

以下は、ブルーパドルの場合の話をまとめました!

ブルーパドルの場合

まずそもそも、現在のブルーパドルは、もともと半分は社員ではなく、フリーランスとして独立して仕事している人達です。ブルーパドル以外の仕事もたくさんやっています。そして今回新しく加わるメンバーも、みんな独立してバリバリ仕事している人達です。

具体的に変化するのは、残りの社員2人と代表2人です。まず代表が2人でやっていた会社から、相方の深津さんは独立し、会社を設立します。ここは普通の代表分裂です。

そして残りの社員2人(エンジニア)が、フリーランスになります。今回の「ギルド化」はここが対象になります。労基法違反かどうかのところにあった、「フィー」「時間・勤務」などについて、現状のブルーパドル/ギルドにした場合を図にしてみました。

1:フィー体系

ブルーパドルの場合、ありがたいことに今のところは、お仕事はいろいろ頂いているため、エンジニアの2人の1ヶ月の稼ぎは、今の給与より大幅に増えることになります。具体的な数字は出せませんが、たぶん多いときには2〜3倍になる月も。ずっとそのペースであれば、相当稼げますし、今月は1ヶ月勉強に当てようとか、旅行しようとするのも自分次第です。

もちろん、仕事が全然なかったら稼ぎはなくなりますが、小規模の会社の場合、仕事がなければ潰れちゃうのは同じです。そこは皆で頑張るところですね…。

そして、2人には「フリーが大変で嫌なら社員に戻るのは全然OK」としています。

だから正直、こんな優秀な2人を「会社の給与分」だけでまるっと1人月のリソースを確保できるなら、そっちの方が全然嬉しいです。

でも優秀なメンバーの場合、長く社員のままやってくれるイメージはないし、退職しちゃうと、やっぱり少し疎遠になりがちだし。ということで逆にこっちからギルド提案をしました。(ギルドにした理由は、それ以外にも複数あるけど、そこは昨日の記事にまとめています)

だから「ギルドは経営者だけが得して、社員にはメリットがない」という指摘はピンと来てなかったのですが、なるほど、最初のような「ズルいギルド」もあることを知って納得しました。

2:一社での仕事の束縛→もちろんなし

あと、社員ではないのに、一社だけで仕事を拘束するのも、場合によっては労基法違反として疑われる可能性もあるようです。(ここはケースバイケース)ブルーパドルの場合、もともと副業OKだし、フリーランスになる2人ももちろんOK。むしろ、いろんな仕事で皆がスキルつけて、仕事の幅を広げて、それがまた新しい仕事を生んでくれるのは良さしかないです。

ただ、他での仕事が良すぎて、「ブルーパドルの案件なんかつまんねー」ってなって、僕が捨てられちゃったらヤバイ…という危機感はあります。でもそこは実力主義だし、対等な関係でいいなと思います。

3:時間・場所の拘束

次に、勤務時間や場所ですが、ギルドにした場合はもちろん何の拘束もなくなります。ただここについては、もともとけっこう自由でした。「タスクが終わる・いいもの作る」ことが目的で、いつ・どこでやるかは手段でしかないので。毎週の定例MTGなんか1つもないし、少人数ですが、なるべく遠隔作業でもクオリティを保てるように実験してきた経緯があります。

制作会社は、徹夜が多くブラックなイメージはありますが、設立してから2年半、徹夜なんて1回もないし、勤務時間はホワイトな方だったと思います。

とある平日に、エンジニアに電話MTGしようとしたら「おばあちゃんちに帰ってて今から新幹線乗るから2時間待ってくれ」と言われ、びっくりしたこともありました。

だからフィーの部分以外は、もともと社員契約っぽくない構造でやっていました。

4:まとめ

こうして、社長や社員の関係だったものを失くして、全員独立しつつ、でも助け合えるフリーランス集団に変化させようというのが、今回のギルドの狙いでした。でもちゃんと労基法のことも考えておかないと、悪気がなくても違反になってしまうこともあるし、意図的に悪いギルドもあるようですし、そこは皆さま、お気をつけください。

ちなみに、労基法の話になったので、ギルド化の対象が「個人」に限定されて語っていますが、もちろん「会社」も含めたギルドの形を考えています。「小規模の会社の連携」です。実際、独立した共同代表の深津は「会社」としてギルドに加わりますし、それ以外にも今後、会社として参加するところも出てくるかもしれません。

以上が、ギルドと労基法の話でした。

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そしてギルドについて、あと2つだけ補足させてください。

補足1:ギルドを推奨してる訳では全然ないです!

あと、ここも誤解があるかもなと思ったのですが、これからはギルド的な組織がイケてて、会社っていう形はダサい。みたいな主張では全くありません!!!!全くありません。

僕もこれから例えば、ボドゲ作りが伸びていって、そこに特化させようとした場合は、ボドゲ制作の専門会社を作ったりすることはあると思います。自社事業で目指すべきものがはっきりしている場合は、ギルドよりも会社の方が良いと思ってます。その上で、

「チームで仕事をやっていくっていう選択肢は「会社」っていう形式だけではないよね。会社だったものが、ギルドになるっていうパターンもありだよね。」

というのが僕の書いたことで、むしろ会社として大きくしてる組織には、尊敬の念しかありません。前職のカヤックは上場しながらもチャレンジを続けていて応援しています。グッドパッチさんもUI・UXに特化しつつ、100人規模の人数で戦っています。大好きな会社です。

長期的に見て、ギルドは続かない形式かもしれないとも思っていますし、でもこのまま停滞してるよりは、チャレンジしてみようと思った次第です。結果的にどうだったのかは、1年後5年後10年後に分かります。

補足2:社員よりフリーランスがいいっていう主張でもないです!

そして最後に「みんな、社員なんて意味ないから独立しようぜ!」という主張でも全くありません。フリーは自己責任ですし、能力がないと仕事は来ないし、自分を律することができないとダラけてしまいます。会社は絶対に、給与としての保証はあるし、日々の生活のことは考えず、作ること、仕事に没頭できます。

あと何を実現したいか、職業によって良し悪しは変わります。フリーの個人でできることなんて本当に限られてるし、会社でしか実現できないことばかり。編集者の箕輪さんは、ばりばり独立できるのに、幻冬社に残っているのは「ここの会社でしか実現できないものがあるからだ。むしろ、給与でなくてこっちが払いたいくらいだ。」みたいなことをおっしゃってました。(うろ覚え)

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昨日のギルド記事は、知り合い・関係者への告知がメインとして書いたので、今日の記事のような部分は「分かってる前提」で端折りましたが、いろんな方に見ていただき、いろんな意見も出てて、ちょっと怖くもなってきたので、補足記事を書かせていただきました。

以上です。よろしくお願いいたします。

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