見出し画像

Vol.37 笛を吹く少女。

急に小学校の頃の思い出がよみがえることがありまして、今回はそんな思い出話。

その昔、私が通っていた小学校には「 ” 笛を吹く少女 ” という像」があったんですね、横笛を吹いているとおぼしき像が。

なぜ「横笛を吹いているとおぼしき」と、 ” ぼかして ” 書いているのかといいますと、その少女像はポーズはとっているものの、 ” 笛 ” 自体は見当たらないのです。

そんな姿を不審に思った某教師が、ある日 笛代わりに ” 緑の棒 ” を突っ込んだのですが、白い少女像に緑の棒が差し込まれたので、なんとも間抜けというか、滑稽の一言。

それが目立った為か、当時の校長先生が「元々、少女像が持っていた笛はどこに消えたのか?」と調べ始め、相談した相手というのが、元教員だった ” 私の祖父 ” 。

すると祖父は、少女像制作の経緯をよく知っていて、校長先生に「笛を吹く少女」のいきさつについて語ったのですが、その内容は…

…………………………

以前、この小学校出身の財を成した人が「母校に芸術的なモノを寄贈したい」と考えて、東京の名のある彫刻家に依頼したのが事の始まり。
すると彫刻家が「 ” 笛を持たない ” 笛を吹く少女像」を作ったので依頼人は
「 ” 笛を吹く少女 ” なのに笛が無い!笛を持たせろ!」
…と激怒!

それに対して、彫刻家は
『これだから芸術を理解しない人間は困る。あえて笛を見せない事で、それを見た子供たちが「どんな笛を吹いているのだろう?」とか、「どんな音色なのだろう?」とか、色々と想像するじゃないか!想像することが芸術の始まりなんだ!』
…と反論し、依頼主の要求を突っぱねた。
だから、あの少女像は「そもそも笛を持っていない」。

…………………………

校長先生がその話を聞いた後、少女像に突っ込まれた ” 緑の棒 ” は取り除かれ、元の姿を取り戻しました。

数年後、校舎の移築によって目立たない隅に追いやられた「笛を吹く少女」ですが、今でも見えぬ笛を奏で続けています。

では、今週の締めの『吃音短歌(注1)』を…

お前たち 気づかないのか おしゃべりも 言葉も全て 表現なんだぜ

【注釈】

注1)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注2)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注2)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?