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Vol.28 銀幕からの眼差し。

その短編映画を知ったのは中学生の頃。
たまたま家族で立ち寄った古本屋で購入したSF映画の紹介書籍に、あらすじと概要が掲載されていました。

映画のタイトルは『ラ・ジュテ』(原題:La Jetée)と言いまして、どんなあらすじかといいますと…

第三次世界大戦の結果、地上は汚染され尽くし、勝者も捕虜も地下での生活を余儀なくされていた。そんな中、 ” 子供の頃 、オルリー空港の展望デッキで見た記憶 ” が、どうしても忘れられない一人の捕虜が科学者の実験台に選ばれる。狂気の実験の果てに彼が見たものとは…』

タイトルとあらすじが妙に記憶に残りまして(ちなみに書籍にはネタバレ全開であらすじが書いてました…)、昨年(2023年)一部のミニシアターでリバイバル上映されていた際も、「見てみようかな?」と思ったものの、タイミングが合わず断念。
ところが先日、「シネフィルWOWOW プラス」のYouTubeチャンネルで期間限定で無料配信されていることを知って、(ノートパソコン+ヘッドフォンという、やや残念な環境ながら)ようやく鑑賞できました。

正直、ストーリーだけを追った場合、様々なSF的な作品に見慣れている現在の目で見れば、新鮮さには欠ける所もありますが(※ちなみに本作は1962年の映画です)、それでも強烈な印象が刻まれる『「モノクロ写真」と「三人称のナレーション」で淡々と描かれる、スタイリッシュな構成』
寓話的であり、幻想的な唯一無二の世界観に圧倒されました。

そして、そんな中 特に印象に残ったのは ” あるキャラクターが目覚めるシーン ” 。
実は、その一瞬だけ「急に動画になる」のですが、それまで無意識的に『「見る側」という一種の優位性』に立っていたのが、『向こうからも「見られている」』という風に錯覚するような瞬間で、結果『一方的に「見る」という事の暴力性』にまで思いが至り、ドキリとしてしまいました。

わずか上映時間28分間(資料によっては29分間)とは思えないほどのインパクトを持った一作。
もし、ご覧になれそうな機会があれば、僭越ながら 鑑賞をおすすめ致します。
(なお本作品は、映画「12モンキーズ」のインスパイア元としても知られています。)

では、今週の締めの『吃音短歌(注1)』を…

あきらめて 言葉飲み込む ぼくの背を 真上の月が そっと見ている

【注釈】

注1)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注2)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注2)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。

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