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Vol.38 拝啓、宇多丸さま2(あるいは、映画『デューン 砂の惑星 PART2』若干ネタバレ感想)

先日、遠出した際に まだ一部の映画館で上映中だった『デューン 砂の惑星 PART2』(注1)を鑑賞。
4回目の鑑賞でしたが、なかなか語りがいのある作品だと改めて思いましたので、TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』(注2)の人気コーナー「週刊映画時評ムービーウォッチメン」(注3)の同作品の評論回(2024.03.28放送回)』に送った、私の感想メール(※番組内で触れられる事が無かった、不採用メールです(笑))を転載してみます。

※下記、転載↓

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宇多丸さん、こんばんは。
ラジオネーム:ユーフォニア・ノビリッシマと申します。
 
『デューン 砂の惑星 Part2』をIMAXレーザー字幕版で2回、通常の字幕版で1回、合計3回ウォッチしてきました。
(注:その後、通常の字幕版でもう1回鑑賞したので計4回の鑑賞になりました。)
 
なお、前作のPart1は劇場公開当時に鑑賞済み。
原作小説は未読(ただし、大まかな“あらすじ”は知っている)。
過去の映像作品は未鑑賞です。
 
感想は「賛」です。
 
この作品を描く上で難しい点を考えた場合、真っ先に思い浮かべてしまうのは、技術的な「砂漠での撮影」の問題とか、CG等々の「SF的ガジェットの構築」といったところですが、それ以上に、それぞれのキャラクターを突き動かす「復讐」と「宿命」と「謀略」、そして「本能」という、似て非なる動機を描き分ける事が、案外難しいのではないか?と思うのです。
 
例えば、
主人公のポールは「謀略」を用いた「復讐」を果たす気持ちはあるものの、「宿命」に身をゆだねる気は無いが、結局は「宿命」に取り込まれてしまう。
 
一方、ポールの母のジェシカは「復讐」には価値を見出さないものの、「宿命」には身をゆだね、ポールをも「宿命」にゆだねる地ならしとしての「謀略」を図る。
 
また、ヒロインのチャニは、「宿命」に抗う気概を持ち、一人の人間としてポールを愛するものの、結果的にポールが「宿命」に取り込まれる後押しをしてしまう。
 
そして、覚醒する新たな強烈な「本能」(ポールの妹、アリア)。
 
今作の場合、役者の力量と相まって、その辺りの「似て非なる動機」が、過剰な演出もなく伝わってくる点が、実は凄いのではないか?と思うのです。
 
なお、それに近い観点で言えば、本作は、
「偽りの予言」と
「偽りの予言を利用する者」と
「噓から出た実(まこと)的に覚醒する、新たな救世主」
…が混在するお話ですが、その辺りも整理して描けていた様に思いますし、それによって「宗教的映画に見える瞬間」と「それを相対化する瞬間」が1本の映画の中に共存するという、見どころも感じました。
 
映像的な見どころという点では、
・冒頭の「状況確認するために見上げた瞬間にドカドカ落ちてくるハルコンネンの兵隊」のシーンは割とビックリしましたし、
・ジェシカがハルコンネンの兵隊を岩で叩き潰すシーンは、「2001年宇宙の旅」の「骨を振りかざす猿」のオマージュっぽく見えて微笑ましかったですし、
・ジェシカが「命の水」を飲んで覚醒するシーンのドラッギーな演出の果てに「胎児(アリア)が覚醒する」という見せ場も、ドキッとしたと同時にこれまた「2001年宇宙の旅」の「スターチャイルド」っぽく見えて、微笑ましかったですし
・「サンドワーム(砂虫)を操る」という、通過儀礼の成功のカタルシスと、それが信仰に変化する異様さは、ハンス・ジマーの劇伴(音楽)と相まって最高でしたし、
・ハルコンネンの惑星の競技場のシーンはバトルが見ごたえあるだけでなく、黒い太陽による視覚効果や、花火の視覚効果も良かったです。
(ちなみに、ハルコンネンの惑星の、競技場のシーンも、パレードのシーンもモノクロの映像と相まって、ナチスの記録映像を見ている様で、何とも言えないグロテスクな印象を受けました。)
 
たしかに、端折り方が強引な部分も目につきましたが、
(「ポールが課せられる最初の通過儀礼の顛末」…とか、「葛藤の果てに、北の民を引き連れて南に向かったポールが、次のシーンでは、覚醒の儀式のための祠に一人到着している」…とか)
チャニの視点から始まったPart1が、Part2では、チャニの視点で幕を閉じるという、一貫した構造と相まって、個人的には大満足の1本でした。
 
どうやら、ドゥニ・ビルヌーブ監督はPart3まで撮るつもりみたいですが、(多分、原作小説の「デューン 砂漠の救世主」までですよね?)ここまできたら、ティモシー・シャラメ版ポールの最後まで見たいです。

※※※※※※※※

相変わらず底が浅い感想というのはさておき(笑)、今回のPart2で印象深い点を付け加えるならば、音楽面の締めくくりが「ヒロインのチャニ(もしくは惑星アラキスの雄大な自然)を印象付けるライトモチーフだった事」ですね。

では今週も締めの「吃音短歌(注6)」を…

水田の プールに浸かる カエルども 俺より鳴くの 上手いじゃないか

※私の田舎では、今年もカエルの鳴き声が響き始めました(笑)

【注釈】

注1)映画「デューン 砂の惑星 PART2」

「遥かなる未来。転封したばかりの「砂の惑星 ” アラキス ” 」にて、ハルコンネン男爵と皇帝の共謀により、一族皆殺しの憂き目に遭ったアトレイデス公爵の息子 ” ポール ” 。母と共に脱出し、砂漠の民 ” フレメン ” の集落に身を寄せ、復讐を決意する ” ポール ” だったが…」
ドゥニ・ヴィルヌーブ監督による、SF小説「デューン」シリーズ(著:フランク・ハーバード)の映画化作品の第二弾。

※下記予告編↓

注2)アフター6ジャンクション2

TBSラジオにて、月曜日~木曜日の22時~23時55分に放送されている、カルチャー・キュレーション番組。略称は「アトロク2」。

注3)週刊映画時評「ムービーウォッチメン」

前身番組の「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル」(注4)から続く人気コーナー。
ランダムに選ばれた劇場公開中の映画を、番組パーソナリティーの宇多丸(注5)が自腹で鑑賞し評論する。

注4)ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル

TBSラジオで2007年4月~2018年3月にかけて、土曜日の夜に放送されていたラジオ番組。略称は「タマフル」。

注5)宇多丸

日本語ラップの草分け的存在であるヒップホップグループ「RHYMESTER」のマイクロフォンNo.1。
ラッパーにして、ラジオパーソナリティー、ライター、映画時評、アイドルソング時評、とマルチな活動を展開する才人。

注6)吃音短歌

筆者のハンディキャップでもある、吃音{きつおん}(注7)を題材にして詠んだ短歌。
この中では『「吃音」「どもり」の単語は使用しない』という自分ルールを適用中。

注7)吃音(きつおん)

かつては「吃り(どもり)」とも呼ばれた発話障害の一種。症状としては連発、伸発、難発があり、日本国内では人口の1%程度が吃音とのこと。


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