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配達が、配達することとは限らない(5/8)

さて、フランスの郵便局「ラ・ポスト」から通知がきた。"5月8日(水)あなたの家に日本からの荷物をお届けします。ご都合が悪ければ、日程変更か受け取り場所を選択して指定してください。"という内容が添えられていた。

時間指定というものがないのが不便だが、日本と全く同じものを求める方が違うって話なので、そこは甘んじてこの不便を受け入れよう。

でも、私は知っている。ラ・ポストの地獄のような低品質サービスを!(フランスなんて殆ど、どこ行っても地獄のような低品質サービスだが)

まず、家まで段ボールを運んでくれる姿を拝見したことは一度もない。配達とは...?とうっかり初心に帰ろうものなら大変だ。遠路はるばる 初心まで帰省した方が負けなのである。仮に今日がお盆や元旦であっても、決して軽々しく帰るべからず。それが初心ってやつだ、気をつけろ!

そんな、届かないことがむしろ当たり前の配達サービスだが、8日の今日、結局荷物は届く事がなかったどころか、音沙汰すらなしである。
一日中自宅待機していたせいで、サラダの付け合わせ用のパンが買えませんでしたが?という嫌味ったらしい気持ちがポンっと宙に投げ出されたが、それを目にしたのは残念ながら私だけだった。

いやはや、通知の意味ってなんなのさ!なんで予告してきた?!と思いながら、日時変更をしようとマイページを開いた。

するとどうだろう。「日時を選ぶ」のボタンは選択できないではないか!私が選べるボタンはただ一つ「別の場所に受け取りに行く」だった。

なんでやねん。なんで私が取りに行く選択肢しかないねん。

元同僚に愚痴のメッセージを送ったら、「ああ、今日祝日っしょ。ポストが配達なんてするわけないじゃん。そもそも、テキトーに配達予告してるだけなんだから無視無視!それより今バカンス来てんだよね。ヒロコも家で待機なんかしてないで楽しんで!」との返事。

......ちっ


うっかり、自慢の長い前歯の隙間から小さな破裂音が飛び出してしまったようだ。こっちは今日来てってお願いしてないのよ。来ないなら来ないで良いんだけど、じゃあ何故通知をしてきたのかって話なのよ。

カップルの喧嘩か何かですか?というような、文字にするとあまりに下らない口論をぶちまけているようなしょうもない内容に口許をもごつかせる。
時間が経てばすぐに諦めて忘れるくせに、こういう怒りには一度ぶつかってしまうの。なんなんでしょうね。

下に降りると管理人さんがいて、配達に関することを幾つか質問した。今日が祝日だから、おそらく明日の午前中に来ると思う、とのこと。管理人さんの距離感が近すぎるところに若干の警戒心を持っているが、実際には色々と助けられている部分もある。

「今日は祝日だからね。戦勝記念日。あ、でも正確にいうと別に僕らが勝ったわけじゃなくて他の国の便乗勝ちみたいなもんよ。我らがフランスっぽいっしょ?今日明日が祝日だから、バカンスに行こうよって話になって」

そんなことを、元同僚も言っていたな。

この物言いはとてもフランスらしくて、本気でイラついている時に耳にすると大変危険だが、本当にバカバカしすぎてこれがクセになってくるのだ。
しっかり自覚的に、ボエム風に「これもまた自分たちの魅力なのさぁ☆〜(ゝ。∂)」と悪びれないフランスの自己肯定感の高さは、我々としても学ぶところもあろう。

さて、私の荷物は果たして明日届くのであろうか。

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