大喜利部

「センパイっ!俺、大喜利で食っていきたいんです!俺、初めてセンパイの大喜利見て、感動したんです!センパイは本当に面白いんですよ!それなのに、なんで、辞めちまうんですか!」

「しょうがないだろ、大喜利でプロになれる確率はほんの数%。その中でも食っていけるやつは本当にごく僅かなんだ」

「でも、俺に大喜利の楽しさを教えてくれたのはセンパイなんですっ!そんなセンパイが辞めたら、俺は、俺は一体何を目指していけばいいんですかっ...」

「安心しろ、お前はもう立派な大喜利ストだ、お前だけでも大喜利を楽しんでくれれば、それでいい」

「センパーイ!!」

そうして、センパイは大喜利から身を引いた。しばらくすると、俺も徐々に大喜利をする機会が減り、センパイのことも思い出す機会が減っていた。

「あーあ、なんか面白いことないかなぁ。」

ふと部屋の隅に目を向ける。長い間掃除もしていなかったので埃が溜まっていた。

「暇だし、掃除すっか」

そう言って掃除を始めた。こういう掃除は、埃が多く溜まっている部屋の隅から始めるべきだ。

「んしょっ、いらない雑誌もこれで纏めてっと。」

わざとらしいセリフを呟いている。というか、わざと、わざとらしいセリフを言って見ている。

「っしかし、何がいるんだかいらないんだかわかんねーなぁ」

汚い。黒ずんだものばかりが出てくる。

「ん、これなんだ?」

大きなゾウリムシのようなものが見つかった。

「ホワイトボードイレーサーか」

ホワイトボードイレーサーをゾウリムシと喩えてしまった。別物である。

ふと謝罪の言葉が出た。あの時のセンパイにも申し訳ないと思ったからだ。

「ん、センパイ?」

疑問が湧き上がる。俺にセンパイなんていたか?いや、いないはず。そもそも俺は大喜利部になんか入っていない。大喜利部なんかがある学校があったら異常だと思う。あったら申し訳ないが。

歪められた記憶。これは何かの仕業に違いない。

「だっ、誰だ!」

いない。誰もいない。そこにあったのは鏡に写った俺だけだった。

-ボブスレー世界選手権開幕-

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