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ミュージカルヲタは何を考えているのか

\ほぼ無料で読めます/

よく「ミュージカルってなぜ突然歌い出すの?」「なんでそれが当たり前のことのように進んでいくの?」などの質問が飛び交っているので、ひよっこミュージカルヲタクの私がどこに喜びを見出しているのか、ちょっと全然興味ないすねってひとも聞いて行ってほしい。


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(インスタでこの質問をもらって語りきれなくなったので書きました)


ミュージカルは漬け物

まず、ミュージカルはもちろん生の舞台あってこそだが、サントラがあることで日々の精神を支えてくれる。ミュージカルは漬け物、なんどもなんども繰り返して楽しめるところによさがある。日々その曲を聴くたび感動した記憶が思い出されてドバドバ涙出てくる。

突然ですが『ALWAYS 3丁目の夕日』って映画がある。ミュージカルぜんぜん関係ないけど観た人が多そうだからあれを例に出すと、終盤の吉岡秀隆さん演じる茶川が須賀健太さん演じる淳之介と再会するシーン、あれがそのまま曲になったと想像してみてほしい。(ちなみに私はあのシーンだけ切り取って見て号泣できるのだがその姿を見て友人にドン引きされたことがある)

映画のサントラと違うのは、ミュージカルのばあい、声も入って曲が完成するので、曲を再生するといきなり好きな演者の名ぜりふがiPhoneのスピーカーを通じて日常生活にダイレクトアタックしてくる、これはもうチートというか、そんなん泣くやん!!!!!てなる(吉岡さんが個人的に好きというのがバレていくだけだが、お好きな作品で考えてほしい)。

むしろ重い、重すぎる、自分の推しが作品の中での演技もしながら本気で歌っているところをBGMとして流していいのか?という気持ちになるので、本当に心が揺れるほど自分の中で重要な作品は気軽に聴けない(それが私の中ではウィキッドだったりする)。だって人生を変えた曲だったり映画だったりアニメのOPだったりが仕事中にいきなりかかったら動揺して手が進まないよね??

めっちゃ落ち込んだ日、落ち込みすぎて大好きな作品2時間かけて観る心の余裕もない。そんな時ミュージカルはたった1分半、たった1曲で最大火力のパフォーマンスを提供してくれる

また例をあげてみる。キングヌーさんとかを想像してほしいんですが、まず歌う人が俳優をやっているわけです。歌手で推しがいる方はこれの大変みがわかっていただけるかと思うんですが。「えっ!?演技もできるし歌えるの…!?歌えるのに演技もできるの…!?なんなの……!?」という動揺が走るわけですね。最近の窪田正孝さんがマウントレーニアのCMで突然歌ってファン大爆発みたいな(どんどん好きな俳優さんがバレていく)ことも記憶に新しいと思います。満島ひかりさんとか星野源さんとか本当にすごすぎて怖い。

それでいうと出演者がエンディングを歌うドラマ『カルテット』はミュージカルに近いんじゃないかと思っている。

そして、また例えばofficial髭男dismさんの「Pretender」の歌詞など、曲単体で配信されると、この歌は失恋の曲だけど、どんな風に作られたんだろう…?背景にどんなストーリーがあるんだろう…?というところを想像するのがひとつの楽しみだったりするが、好きなアーティストの場合、フィクションなのかフィクションじゃないのか!?といらないハラハラを抱えないといけなかったりする。テイラースウィフトが私生活をガンガン出してたり、日本にも愛すべき人がいたりするので、そこの疑問はずっと晴れない。

でもミュージカルはフィクションというのがわかった上で楽しめる。登場人物が「この曲をこの人が歌おうとした経緯」が丁寧に描いてあるので、作品を観終わった後しばらく経ってその曲だけを聴いても、一気に物語を思い出してその世界に連れて行かれてしまう。自分の大好きな曲から作られた映画があったら絶対観てしまいません??PVで本人が演じているし歌っている…の映画版みたいな……といったらわかってもらえるだろうか…(わかりづらい)

作中で登場人物が「何かのきっかけで今までの価値観が変わる瞬間」というのに居合せることがある。突然恋に落ちたり、依存してた恋人と別れると決めたり、悪役が改心したり、ダメな自分なんて思うのをやめると決めたり、夢に向かって行動しはじめたり。そんな登場人物のターニングポイントにあわせて曲が始まる、というのがミュージカルの流れだ。

歌の中に決心があり、人生が進み、本人の立場や価値観が動いていく。そういう曲はどんな時に助けになるか、そう、私たち聴き手の価値観が揺らいでいる時に寄り添ってくれる。

曲の中に人生のターニングポイントがある

たとえば最近の実写化アラジンの新曲『Speechless』は、もう私は黙らない!とジャスミンが歌い上げる曲だが、王室の決まったルールに声をあげると決心し、行動した瞬間が収められている。アナ雪の『Let it go』も、自分の能力を隠していたけどこれからはありのままで生きていくわ!という決心し、行動している。


作品を見ればどんな経緯で歌っているのかがわかるので、普段私たちが声をあげたくてもあげられなかったり、自分を出すのが怖い、それでも!と行動したい時に寄り添ってくれる曲になるのだ。

ミュージカルの登場人物が我々より先に人生につまづき、悩み抜いて出した答えがひとつの曲になっている。それはつまり、ミュージカルをひとつ見るたび、人生の応援歌となるアルバムが1枚増えていくということを意味する。

この、曲を自分ごと化できる鑑賞力が養われると、どんな曲を聴いても「もしかしてこれ私のことを言ってるんじゃないか」と思ってしまう感覚がどんどん鋭敏になっていくような気がするんだけど、これによって生まれたのが海外ドラマの『glee』じゃないかなと思うほどだ。

『glee』はドラマの中で名作ミュージカルの曲も多くカバーしているが、この元となる曲の背景がしっかり共有されているので登場人物たちもその曲に励まされ、「これはアタイの曲!!」と名曲を取り合いながら自分の人生を進もうと決心していく。これぞ漬物ミュージカルの醍醐味。カバーすればするほどよい。

ここまで読んでくれた方はミュージカルヲタたちがサントラで曲を聴いている時、BGMを聴いているのではなくナマモノの作品に触れていることをおわかりいただけただろうか。もちろん舞台や映画でダンスや美術が合わさって完成するのだけど、インスタのストーリーの音楽スタンプで名曲を載せるだけでも同じヲタがドキっ!!っとしないように気をつけているほど。

フラッシュバックの魔力「リプライズ」


ここで少し細かい話をひとつ。作中の歌には決心する瞬間だけじゃないような曲も多々登場する。登場人物の現在地を描写するような曲や、作品を盛り上げるような曲、自己紹介のような曲もある。悪役の自己紹介大好き。『アニー』に出てくる継母の曲とか。

そのなかでも、「リプライズ」という手法をつかって主人公が物語の序盤に言っていた言葉が、物語が進むにつれて違う意味を持ってくる、という大変エモーショナルな展開になることがある。わかる方はわかるよね。例えばアラジンの中で「自慢の息子」という曲が最初に出てくる。

貧乏で盗みばかりするアラジンがこのままじゃだめだ、母さんの自慢の息子になる!と決心する曲。これが作品の後半に「自慢の息子/リプライズ」という曲で出てくる。この頃にはアラジンはジーニーの魔法で身分の高い王子として国王になる寸前まで来ている。ここで、本当の自慢の息子ってなんだ、嘘をついてまでこんなことしていいのか、と立ち返る時に同じ曲が使われる時のこの、うわああああ!!!!(語彙)!!!感。

思ってた未来の自分とは違う、こんなはずじゃなかった、あの頃にはもう戻れない。そんな気持ちのなか、人生がフラッシュバックしていく感覚。

このように前半で使われたメロディーが作品の後半で意味が変わってくるような使われ方をするのがリプライズという手法、ミュージカル式の伏線回収。私はこれが大好物だ。

この他にも、アップテンポで使われていた曲が同じメロディーでバラード曲になったり、主人公が自分の人生を振り返る時に使われたり、主人公のテーマ曲と悪役のテーマ曲のコード進行が実は同じで、最終決戦の時に重なり、美しくも奥行きのあるハーモニーの中で決着がついていく(これは子供向けの劇団四季ファミリーミュージカルの中でよく使われる手法です)という風に色々な使われ方をする。最高だね。もう抜け出せないね。

とつぜんだけど東京事変の「生きる」という曲がある。アルバム「スポーツ」の1曲目、コーラスだけの、あまりに長くゆっくりなメロディーに思わずこれはなんだ???と飛ばしそうになった中2の私だったが、メロディーが1周したあととつぜんドラムが入ってアップテンポのロック曲に様変わりした時、一生このバンドについていくと決めたのを思い出したりなど。

目次のような1曲目「オーバーチュア」

リプライズの話をしちゃったのでこれだけ書いて終わりにしようと思うのですが、ミュージカルは1曲ごとの集まりというより、大きな流れがあってひとつの作品になっている。その中でも最初の曲は、オーバーチュア(序曲、overture)といってファンファーレのように「パンパカパーン!今からこの作品、始まり始まり〜!みんなよってらっしゃい!」と作品を紹介するような役割を果たす(ない作品も)。イメージとしてはディズニーランドのエントランスでかかっている曲を想像してもらえたらと思う。


私はオーバーチュアの、最初にやってくれるカーテンコール感がとても好きだ。スターウォーズも、ミュージカルではないですがプロローグの曲が同じ役割を果たしてるよね、あのテーマが家の中で響きわたったらテレビの前に集合しちゃう感じ。私はなんでこのオーバーチュアが好きかというと、この作品ではこんなメロディーを使いますよ〜!と最初に教えてくれる感じが初見さんに優しいなって思うから。悪役用だったりちょっとネガティブなメロディーもチラチラっと見せてくれるというか、ひとつの作品がはじまる前にこんな役が出てきますよ〜と全体感をさらっと紹介してくれる感じがとてもよい。

私はそれが好きすぎるので、ミュージカルの1曲目だけを集めたプレイリストがあります。歌声がなくて長いパターンが多く、オーケストラっぽさを摂取したい時によい。BGMとしても楽しめる。


ミュージカル興味ちょっと持ったって人は、この12分で22種類のミュージカルやってみたって動画がメチャおもろいのでよかったら観てみて〜!


ちなみに「ミュージカルってなぜ突然歌い出すの?」「なんでそれが当たり前のことのように進んでいくの?」という質問に関しては、

すみません、ミュージカルを見て育ったので私生活で突然歌い出すしそれが普通だと思っていたのでむしろなんでみんな突然歌わないのか気になります…好みかな…って…

以上、「とっておきおすすめ曲おしえてください」と聞かれて、この曲をおすすめしたことがきっかけでこの記事を書いたのであった……。

☝️ウィキッドというミュージカルの中に出てくる名場面の1曲。全てはこの曲というかこの作品を推したいがために書いた記事でした。

初見のかたはじめまして。文章書いたり役者をやったりやりたかったりしているフリーランスです。最近、ブロードウェイ行きの航空券を取ったのですが3月の頭だったために行けなくなってしまいオヨオヨしながらこれを書いているよ…自分の守備範囲はこんな感じなので、あまりミュージカルオタクの友達もいませんが(🕊めぐくらい)ぜひ仲良くしてほしいな…

自分は普段こんな感じで生きています👇またミュージカル系の記事書けたら良いな〜!

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さいごに

最後に、舞台周りでちょっと反省したことがありまして、


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