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コーチェラと宇多田ヒカルと88risingと「Asian Pops」の時代の突端

3年ぶりのコーチェラ・フェスティバル。YouTubeで観てました。特にビリー・アイリッシュがヘッドライナーをつとめた2日目は、とても感慨深いものがあった。いろんな意味で時代の転換点が見てとれた。

驚いたのは直前で宇多田ヒカルの出演が決まったこと。しかもメインステージの「88rising's HEAD IN THE CLOUDS FOREVER」への出演。88risingのショーン・ミヤシロから誘われたということらしい。

88risingといえばアジアのポップカルチャーをグローバルに発信するレーベル/プラットフォームで、特にここ数年での北米のヒップホップ/R&Bのシーンではかなりの存在感を示している。「HEAD IN THE CLOUDS」は2018年から88rising がLAで開催してきたフェスティバルの名前。そこに”日本代表”として宇多田ヒカルが呼ばれた、ということになる。

https://mobile.twitter.com/88rising/status/1515215996335779844

■宇多田ヒカルの文脈

宇多田ヒカルは国内のフェスにも一度も出たこともないので、デビュー以来これが初のフェス出演。披露したのは「Simple And Clean」、「First Love」、「Face My Fears」、「Automatic」の4曲。『キングダムハーツ』シリーズの主題歌2曲に、デビュー作からの2曲というセレクト。

「Automatic」のときのダンサーたちのパフォーマンスも含めて、まさに88risingが「The soundtrack to our youth」(僕らの青春のサウンドトラック)と紹介してた通りのステージだった。

もともと宇多田ヒカルの歌声は大きなステージより密室感ある場所のほうが映える(だからこそスタジオライブは極上)なのと、最新作『BADモード』からの楽曲を披露するのかなと思っていたから、個人的にはちょっと物足りなさもあったものの、最後にWarren Hueと共演した新曲「T」がすごく良くて、グッときた。

「T」はフェスの出演後に配信リリースもされてました。

この日の「Head in the Clouds Forever」に出演したのは、Warren Hue(インドネシア)、MILLI(タイ)、BIBI(韓国)、NIKI(インドネシア)、Rich Brian(インドネシア)、宇多田ヒカル(日本)、Jackson One(中国)、CL&2NE1(韓国)という面々。

そういう現在進行形のアジア各国のアーティストが集ったステージで、宇多田ヒカルがちゃんと未来を見せてくれたことが何より格好良かった。

■RINA SAWAYAMA、きゃりーぱみゅぱみゅ、アジア系アーティストの躍進

今年のコーチェラの特徴は、ラインナップに英米圏以外のアーティストが顕著に増えてきていることにもあった。もちろんそれはラテン/ヒスパニックやアフリカも含めて、ヒットチャートや音楽ファンの興味関心が全体的にグローバルに広がってきているということを意味しているわけだけれど、やっぱり個人的には特にアジア系の躍進が印象に残った。その象徴が88Rising勢なわけだけど、もちろんそれだけじゃなくて、Japanese Breakfastもいて、Beabadoobieもいる。そしてRina Sawayamaがいて、きゃりーぱみゅぱみゅがいる。

Rina Sawayamaのステージもめちゃめちゃよかった。バンドとダンサーを従えた編成で、バキバキに力の入ったパフォーマンス。フロリダ州議会で可決されて物議を呼んでいる「Don’t Say Gay」法案に言及して「私はクイアで日本人の自分を誇りに思う」というMC。LGBTQコミュニティへの連帯と「Say Gay!」のコールアンドレスポンスから「Plastic Love」のイントロのオマージュを挟んで「Cherry」に入るのもよかった。

きゃりーぱみゅぱみゅはビリー・アイリッシュの裏という、初出演のコーチェラにしてはエグいところの枠で、でも、配信で見るかぎり観客もきっちり集まって、バッチリ盛り上がってた。やっぱり「どどんぱ」の破壊力が抜群。

そうやって、いろんなアーティストが織り成すAsian Popsのカルチャーの脈動の中に、J-POPの過去と現在と未来も織り込まれていくような感触がして、それがとても感慨深かった。

ちなみにコーチェラ出演直後のRINA SAWAYAMAのインスタのストーリーに藤井風とのツーショットが写っていて。これも何かの伏線になればいいなと思う。コーチェラのステージに藤井風が立っている未来、楽しみすぎる。

■やっぱりクライマックスはビリー・アイリッシュ

そして何より感動的だったのは、やっぱりビリー・アイリッシュだった。最年少ヘッドライナーらしいけど、そんなこと全然感じさせない貫禄。

ライブも演出も格好よかったけど、何より印象に残ったのは大歓声とシンガロング。ああ、この光景が戻ってきたんだなあと思った。で、オーディエンスに包容力たっぷりに呼びかけるビリー・アイリッシュの感じもよかった。

毎年コーチェラはサプライズが沢山あるんだけれど、ビリー・アイリッシュがサプライズゲストに呼んだのはデーモン・アルバーン。幼少期の自分の姿をビジョンに写した「Getting Older」でステージに呼び込んでデュエット。この声のハモリがとてもいい。そして「自分の人生を変えた人」と紹介して、そこからのゴリラズ「Feel Good Inc.」も最高でした。


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