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指揮者修業、その7

基礎技術的な指揮の難しさは沢山あるのですが、やはりソルフェージュは基本中の基本。複雑な連符はヘミオラ(バロック時代からある作曲技法で、曲の中で、2小節をまとめてそれを3つの拍に分け、大きな3拍子のようにすること)ポリリズム(完全に異なった拍子が同時進行で表される)などなど。

音楽的に難しいのは、基本はフェルマータやルバート、rit, rall。音楽の数だけあると思われる速度変化にフレーズ冒頭でのパルス的な演奏(大まかに説明すると拍感を大きく取ってその中で揺らす)など本当に無限にあり、それをすべて棒で対応出来て、尚且つロジック的にも奏者に説明が出来ないといけないのです。
例えばフェルマータ(元のイタリア語はバス停ですね)は日本の楽典の本の多くに約1.5倍~2倍と書いてありますが、これは少し乱暴で、とてもこれでは説明しきれないです。
音楽が一度止まりリスタートすることは間違いないのですが、ここで注目したいのは音価のある音符や休符の上に書かれている事。という事はその書かれた音価は勿論伸ばしますが、それ以上どの位の音価が伸ばされるのか?

一番的を得ている表現は次の演奏へのアインザッツ(休止後の歌い始め)次の点に向かう線の長さ分が伸びている感じでしょうか。(実際はフェルマータが書かれた音の音価分から改めて次の打点まで線を描く分)

となると、同じテンポで4分音符で一度止まりフェルマータ。また次の音楽が同じテンポでブレスして始まるとなると、約二倍になりますね。
問題はここからです。

例えばゆっくりした曲の2分音符でフェルマータ。次がアレグロで軽快な感じ。これはどうでしょう?
答えは2分音符+うんとテンポの速いアインザッツで始めたらトータルすると1.05倍くらいにしかならないという事もあり得ます。
逆にプレストで目まぐるしく16分音符で駆けて来て4分音符で止まって、その後がうんと遅いグラーヴェとすると6倍とかになる可能性もあるので、
規定を設けるのが難しいのだと思います。

もっと言ってしまうと、曲の最後の音の上にあるフェルマータ。
これは音価通りの演奏が終わり、もう一度アインザッツして音を閉じるため。
最後は曲は休符で終わっているのに、曲の終始線の上にあるフェルマータ。
これは私は音を閉じてから「はい、これで曲が終わりましたよ!」
握った音のリリースのアインザッツがあって手を降ろすと判断しています。
こう考えてみると、面白いですし様々なパターンがあることが分かりますよね。

続く

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