【“あの”山田孝之】デビューシングルのキャッチコピーはいまでも活きている

【“あの”山田孝之】というのは、彼のデビューシングル『真夏の天使 〜All I want for this Summer is you〜』(2002年)の帯にあったキャッチコピーだ。憂いのある横顔が印象的な、青いジャケットのデビューシングルは、まさに真夏にぴったりの爽やかな楽曲。B面の『GET OVER』がこれまた良曲であった。

「あぁ、山田孝之かわいかったなぁ…」。いまやとんでもない俳優になった彼の面影を、ときどき懐古してしまう自分がいる。

■瞬く間に人気俳優へ

デビュー当時の山田孝之(敬称略)は、とにかくカワイイ顔をしていた。『サイコメトラーEIJI 2』にちょろっと出たと思えば、NHK『六番目の小夜子』では準主役級の役を演じた。『葵・徳川三代』、そして朝ドラ『ちゅらさん』で、その知名度と人気を確実なものとした。

『ちゅらさん』では、バンドマンである“低学年の恵達”を演じた。姉・恵里(国仲涼子)を傷つけた文也(小橋賢児)につかみかかるシーンは、いま思い出してもグっとくる。

「バカでも俺のねぇねぇは世界一なんだからな!」

涙ながらの熱演に、母親世代の心もコロッとさらってしまった。

■どことなくあった“陰”のイメージ

テレビ出演ではあまり多くは語らず、おとなしいイメージの少年だった。雑誌のグラビアでも、ときどき驚くほど切ないような、悲しいような横顔を見せることがあり(この子は大丈夫なのかな)と思ったものだ。

当時「誰とも連絡がとれないようにして1日ぼんやり過ごしてみたい」というようなことをインタビューで語っていた。
なぜこんなことを覚えているかというと、冒頭で紹介したデビュー曲の歌詞にこんな一節がある。

携帯は置いてきた
誰にも教えたくない時間だから…

昼ドラ主題歌ということもあり、キャッチーかつ爽やかな楽曲だ。勝手に抱いていた“陰”のイメージとは少し異なるデビュー曲のなかに、ひとつだけ見つけた彼らしい部分だった。

だからなんとなく、印象に残っている。

■いつまでも【“あの”山田孝之が】と驚かせてほしい

正直言ってめちゃくちゃ好きだった。まず、顔が好きだった。いま思えば、アイドル的に好きだったような気がする。

たしかメールアドレスにも、山田孝之をにおわすようなキーワードを入れていたような気がする。イタい記憶ほど覚えている、人間の悲しい性だ。

あらためて彼の出演作を見てみると、2007年くらいまでの作品はおおかた観ており、記憶にも残っている。

残念ながらそれ以降は、進学や就職でエンタメから離れた時期にちょうど重なる。つまり私は、山田孝之がこれから面白くなっていくという時期の作品をすっぽりと見落としているのだ。

とはいえ知らぬ間に山田少年が『全裸監督』になっていたわけではないから安心してほしい。いくつかは後追いながら鑑賞しているので、引き続きゆっくりと山田孝之をアップデートしていきたい。

“あの”山田孝之…。当時のファンとして、実に誇らしいキャッチコピーだった。あれから20年近くが経ったいま、彼はいつまでも【“あの”山田孝之】で居続けている。

求められることをキッチリやりきる役者であるようにも思うし、反面、しっかりとしたビジョンとプライドを持った役者であるとも思う。

かわいかった山田孝之をもはや知らない世代もいる。昔の話をしても、信用されないことも多い。それってすごいことだと思う。何色にもなる役者なんだと実感する。

【“あの”山田孝之】が、これから先もなにをやってくれるのか、どんな姿を見せてくれるのか、楽しみでならない。

もしも中学生のころの自分にひとこと伝えられるとしたら。

「いずれ山田孝之がバストを測定してくれるという素晴らしくカオスなイベントが開かれる世界が待っているから、いま会えなくても決して落ち込まずに生きろ」と言いたい。(※ふんわりルームブラ)(※参加はしていない)

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