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#5 好きなことを優先して生きるということ


げ、もう9、9、9時半やん

#4 睡眠導入剤の効果は十分に発揮され、私はその晩、途切れることなくこんこんと眠り続けた。

そして翌朝、目を覚ましてスマホを見ると、不正なクレジットカードの使用を通知する一通のメールを発見したのである。

(まさか眠ってる間に泥棒来たorフィッシング詐欺? でも、2000円っていくらなんでもショボすぎるし…)

娘のベビ子に聞くと、こういう事情らしかった。

ベビ子は仙台に帰る前に私と藤子・F・不二雄ミュージアムに行きたがっていたのだが、ミュージアムは完全予約制で、クレジットカードでチケットを事前に購入する必要があったのだと言う。
それで、薬を飲んでいびきをかいて眠っている私に声をかけたところ、私が「母さんのカードで買いな」と財布を投げつけたのだそうだ。

1ミリの覚えもないが、ベビ子が嘘をつくとは思えないので、きっとそういうことなのだろう。

記憶にないカード利用って毎月結構ある

いや、待てよ、これは大変危険である。
もしもベビ子がまさお(ベビ子の彼氏)の影響でグレて睡眠導入剤で眠っている私に「ヴィトンのバッグを買いたい」と言っても、私は朦朧とした意識でカードを渡してしまう可能性があるのではないか。
以降、この薬の使い方には十分注意が必要だ。

藤子・F・不二雄ミュージアムへ行く

この時期、花粉症対策は必須

そんな訳で、私とベビ子はベビ子の埼玉帰省の最終日に、埼玉の某ど田舎町から藤子・F・不二雄ミュージアムがある神奈川県・登戸へ、電車で2時間かけて向かったのである。

正直なところ、体が重く、遠出には乗り気でなかった。
ただ、せっかく埼玉に帰って来たベビ子に、今回は大したことをしてあげられなかったという思いがあり、付き合うことにした。

なぜドラえもんはこんなにも愛されるのか

ベビ子は小さい頃から異様にドラえもんが好きな子だった。
19歳になった今でも、パソコンでドラえもんチャンネルを夜な夜な見ている。
ちなみに、ベビ子の父も大変な変わり者で、(ベビ子によると)58歳にして映画のドラえもんを見て号泣しているそうだ。

藤子・F・不二雄氏の苦節と努力がわかる素晴らしい展示

「僕は、すべてにおいて、『好き』であることを優先させてきました」

これは、現在同ミュージアムで開催されている藤子・F・不二雄生誕90周年記念原画展の宣伝文である。

最初にこのポスターを見た時は、そう言い切れる藤子・F・不二雄氏を、ただうらやましく思った。
「好きなことだけして、おまけに世の中に認められたら、そりゃいいよな」と。

これで中国行けたら営業コスト浮くなぁ

ところが、展示会場を出る頃には全く違った感想を抱いていた。

本当に自分が好きなことを、ひたむきかつストイックに表現してきたからこそ、こんなにもたくさんの人から「ドラえもん」が愛されてるんだな、と。

……。

そうして私は、自分自身が「好き」を等閑にしてきたことにも、気づいたのだ。

本当にやりたかったことは、言い訳ばかり重ねてやめてしまった。

生きる為、お金が必要だと、「好き」はいつも下位打線に送られた。
「好き」に打席が回ってこないことだってしばしばだった。

だから、自分の歩んできた四十年に自信や満足感を得られず、「くそですな」という感想しか湧いてこないんだな…。

館内のレストランで暗記パンとビーフシチューを注文

私「ベビ子はさあ、本当に自分が好きなことやりなよ」
ベビ子「え? まあまあしてるよ」
私「ならいいけど。今の時代、ジェンダーが騒がれるから、これ、元気な声では言えないんだけどさ…母さん、あなたはお金稼ぐプレッシャー感じる必要があんまないと思うわけ。だから、仕事も好きなこと重視で選びなね」
ベビ子「うん、そのつもり」
私「楽しくね」
ベビ子「母さんもね」

私はきっと生まれ持った性分的に「全てのことにおいて好きを優先させる」ことは出来ないだろうけれど、これからは、現実や条件を考慮しながらも、もっと自分のうちにある「好き」を尊重していこうと思った。

月並みでありながらも、今の私にとっては大切な気づきをくれた藤子・F・不二雄ミュージアムに、今日のありがとう。

試しに「ピリッとスナック」を買ったら、辛辣な言葉を頂きました

つづく

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