見出し画像

【雑記】「この犬は私だ」という感覚

2日前、犬の去勢手術をした。

発情期があることでのストレスや、先々の病気のリスクを考えて去勢手術をしたものの、まだ体調が安定せずしんどそうにしている姿を見るとハラハラしていて、ゴールデンウイークはずっと犬の隣で過ごすことになりそう。
そんな中、最近の犬との暮らしで感じたことを覚書的に残しておこうと思う。

~去勢手術の経過を見ながら考えたこと~

・自分はこの犬であり、同時に犬の母である

去勢手術から数時間経つと、犬はひゅんひゅん泣きはじめた。
麻酔が切れたことで傷口が痛むのだと思う。頭で考えるよりも先に体が動き、犬の体を撫で「大丈夫だよ」と言う。その時、自分はこの犬そのものでもあり、同時にこの犬の母でもある。

*"母"という表現がしっくりくるかは悩む。自分の人生に引き寄せて考えると、父性のようなものが実体験に存在しないので暫定的に母といってみる。

・母と私は別の生物だ

「母と私は別の生物なんだ」ということを心底理解するのにとても時間がかかった。

良くも悪くも、親子の距離が近い。
私の性質や言動を徹底的にに否定するのも、全力で味方してくれるのも母であったし、私自身、母の暮らしや人間関係を自分のことのように捉えていて
状況が変わるたびに自分事のように狼狽えたり、憤怒したりしていた。

30歳になって「なんだこの人生、まるで無駄死にやんけ」と思えたことで
母と私は別の生物なんだということがようやく理解できたような気がする。

今はほどよい距離感で、お互いそこそこの仲良さでいられていると思うけれど、それでもこれまでの人生を思うと、被害に遭ったような気持ちも少しは感じてしまう。

精神的な調子が悪い時には、母や出生すべてを呪うような気持ちもある。
親子の同一化や、母子分離が未完、といったキーワードが頭に浮かぶ。

・「この犬は私だ」という感覚

一歳未満であるこの犬は、時々体調が悪くなる。

突然震えだして病院へ連れて行ったこともある。うんち、おしっこ、げろ、その他汚いものを処理することもある。夜通し様子を見ていたこともある。

そんな、この犬だけでは対処できない苦しみに、代わりに対峙する時。
"自分とは別の生物だ"と思うと、その場から一歩も動けなくなりそうなほど圧倒されるようなものを、それでも私自身がやらなければ前に進むことができない苦しみを、出来るかぎり自分事に引き寄せるため、「この犬は自分だ」という心のバリアのようなものが発動する。

・一生懸命だったのかもしれない

犬と人間の子どもは別物だろうけれど、自分が他者を保護する立ち位置になり、「この犬は自分だ」というような心の動きが起こったことであらためて母と私の関係について思いを馳せた。

早くに離婚し、母一人で子育てをする中で、もしかしたら母自身も「この子は私だ」という感覚を持っていたのかもしれない。そういうある意味、野性的な気迫をもって私を育ててくれていたのかもしれない。

・苦しみは続く

こうして私は自分の過去のつらさや現在の苦しみを、つい自分に引き寄せては、「あの時母も同じ感覚だったのかな」などと考えてしまう。

だからといって、「母を許してあげよう!」と心の救済の方向に意識がいくわけではなく、「自分はあの時の母と同じ酷い人間なんだ」と自分を責めるわけでもなく「あぁ、こういう仕組みだったんだな」と、難問を解読しているような感覚でいる。(もうこれは趣味なのかもしれない!)

「今はほどよい距離感で母と接している」つもりであるけれど、精神的に解決しきれていない難問をずっと理解したいと思っている。自分や、母を理解したいと思ってしまう。
そんな気持ちがなければ、犬との暮らしで母との関係について考えることなんてないだろう。
正直、めんどくせえ生き方だなと思う。他者や自分のことを諦められないでいるのかもしれない。なかなか苦しい作業なのに、止められない。

止められないのなら仕方ない。わざわざこんなことをぐるぐる考えている自分を、すごいやんと褒めてあげたい。

・他者が介入する暮らし

自分には愛着障害でいうところの回避型と呼ばれるような性質があり人間関係において相手と親密な関係になることを恐れる傾向があると、自分では思っている。そのため、「他者とともに生きる」というような要素が自分の人生に介入することをあまり想定していない。(恋愛や恋愛以外に限らず)

ただ、昨年夏からこの犬と暮らしはじめたことで、「他者が介入する暮らし」の質感を、ようやく誰のものでもない自分自身の手のひらでもって、おそるおそる確かめはじめたような気がしている。

もしかしたら何十年か後には人間と暮らしを共にしているかもしれない、
そういう人生だってアリかもしれないよね、と思いつつ、今はそんなことは全く考えられない、むしろ全力で逃げたい、犬と暮らす家があればいい、という気持ちでいる。



犬との暮らしについて


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?