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ランチタイム

ランチパックと言う食べ物がある。ランチの名こそ冠しているが、あの軽やかな食べ心地は朝にこそ相応しいと思う。ブレックファストパックに改名してはいかがだろう。

と思って調べてみたところ、既にアメリカの食品会社が「ブレックファストパック」なる製品を販売しているという。その食品会社の名前は「ゼネラル・ミルズ」、なんでもハーゲンダッツのブランドを所有している会社なのだそうだ。

閑話休題。会社。或いは学校。或いは家庭。例を挙げれば枚挙に暇がないが、何かしらと戦っている者にとってランチタイムは午前の空腹を癒しながら午後を駆け抜けるための燃料を補給する大事な時間だ。朝食をしっかりととることのメリットは常々声高に叫ばれてこそいるが、それでも朝食をとらずに出社する人間が少なくない数いる一方で、重い軽いの違いこそあれど特に何も叫ばれていない昼食を食べない人間を僕はあまり聞いたことがない。それは朝食よりもより逼迫した必要性から生み出される必然であり、つまりは「腹が減っては戦はできぬ」というやつである。

全ての食事は精神的に豊かで、そして丁寧に美味しくあるべきだとする信条も立派だと思うが、どだい「いくさ」を戦い抜くための「燃料」を限られた時間と予算で効率的且つ効果的に摂取すると言う目的が無視できないため、それは慌ただしくたって構わない。むしろ、慌ただしいほうが趣がある。文字通り戦場のように混雑した食堂で定食をかきこむ姿を清少納言が見たらきっと枕草子で言及していたことだろう。「優雅なランチタイム」なんてものは戦いを知らぬ者の間でしか成立し得ない無粋な虚構なのである。

そんな私はつい最近復職したばかりなのだが、実家が会社の近くにあるため昼休みになるたび母が作ってくれた栄養満点そうなご飯を優雅に食べている。しかしこれは私が戦いを知らない訳ではないことをここに記しておこう。優雅さとは精神の栄養であり、私にとって真に恐ろしい敗北とは精神の枯渇であるからして、これもまた私の「燃料」なのである。そしてこれを人は詭弁と言うのだろう。

全ての戦う人々に勝利の栄光と安くてうまい飯のあらんことを。

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