清水将吾@哲学者 Shogo Shimizu, PhD

哲学博士。哲学ファンタジー小説『大いなる夜の物語』発売中(https://amzn.t…

清水将吾@哲学者 Shogo Shimizu, PhD

哲学博士。哲学ファンタジー小説『大いなる夜の物語』発売中(https://amzn.to/2RRwJJv)。 子どもの哲学・哲学対話プラクティショナー。哲学をして、物語を書いて、絵を描きます。

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    文芸部「ふみのわ」の文芸集です。 顧問のわたし、文(ふみ)先生が定期的に課題 "ぶんげぇむ" を出しますので、部員の皆さんはしっかりと課題に取り組んでくださいね! もちろん部員でない方も、ご自由にお読みいただけます。 ぜひフォローしてくださいね。

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    死者たちと動物たちについて考えることで、私たちについての何かがわかるかもしれない。

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映画《ゴッドランド》における神的闘争

※画像は「みんなのフォトギャラリー」より 【以下、ネタバレを含みます】 この世界を超えて沈黙する神。 マグマを噴き出し激しく活動する大地。 どちらがより偉大なのだろうか。 デンマークの牧師ルーカスは、アイスランドでの教会建設を命じられた。 命じた老司教は、アイスランドの人々と環境に適応するようにと助言した。 困難を乗り越えて宣教をした使徒たちのことを思い出すように、とも。 あまりにも過酷なアイスランドの旅。 その途中で牧師ルーカスは、旅と同行者を激しく憎み、神に向かっ

    • インクルーシブ哲学へ⑪:言葉に仮面をかぶせる――無限の他者はどこにいる?

      ▲前回 2024年4月5日 ■作品:《おく》(Oku Project) ■会場:CALM & PUNK GALLERY ■相手のプレイヤー:藤中康輝さん(Oku Project) Oku Projectの作品、《おく》に、プレイヤーとして参加してきた。 二人のプレイヤーが、言葉を交わさず、棚から物を選び、交互に物を置いていく。 これを読んでいる人は、仮面をつけた経験があるだろう。 仮面をつけた人を見る経験をしたこともあるだろう。 仮面をつけた人は、見る人にとって、未

      • インクルーシブ哲学へ⑩:山の無限のインクルージョン

        ▲前回 2024年3月30日 ■イベント:FOXLab構想・発表(藤原さとさんのご厚意で参加させていただく) ■場所:檜原村 ■主催:こたえのない学校 ■Feel度Walkのファシリテーター:渡部由佳さん(ちきゅうのがっこう) 檜原村の山をひたすら上がってタクシーを降りると、十月に辻堂海岸に来ていた人たちが集まっていた。 山にも春が来ていた。 晴れやかな気持ちで、みんなの中に混ざった。 まずはFeel度Walkをした。 「なんとなく」 「とりあえず」 「ひたすら」

        • インクルーシブ哲学へ⑨:街の無限はツッコミも受けいれるーー川越Feel度Walk

          ▲前回 2024年3月5日 ■イベント:Feel度Walk ■場所:川越 ■ファシリテーター:市川力さん ■主催:須賀与恵さん Feel度Walkを開発した市川力さんは、すごく明るい。 雰囲気を変える力をもっている。 どんどん驚き、笑いながら、参加者を観察モードに入らせてしまう。 僕の住んでいる川越で、市川力さんとのFeel度Walkが行われた。 参加者は10名。 本川越駅で集合して、みんなで歩く。 歩くと言っても、ほとんど進まない。 力さんが立ち止まり、街の細かい

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        記事

          インクルーシブ哲学へ⑧:あなたの観点に間違いなどないーー檜原村Feel度Walk

          ▲前回 2024年2月28日 ■イベント:Feel度Walk ■場所:檜原村 ■ファシリテーター:渡部由佳さん(ちきゅうのがっこう) 「ボーダーレスてつがく」から2人と、友人5人の、あわせて7人で檜原村を訪れた。 ゆかさんが迎えてくれて、Feel度Walkを体験させてくれた。 Feel度Walkは、市川力さん発案のアクティヴィティだ。 みんなで歩いて、そのあと、それぞれの「知図」を描く。 「辻堂海岸ワンデイキャンプ」以来、自然の中での対話にますます関心が高まっていた

          インクルーシブ哲学へ⑧:あなたの観点に間違いなどないーー檜原村Feel度Walk

          インクルーシブ哲学へ⑦:音と言葉

          ▲前回 2023年12月21日 大学では、哲学対話の授業をやっている。 毎回の授業で、その日の担当の学生さんに、約80分を自由に使って哲学対話をしてもらう。 受講生の中に、哲学対話の活動を活発に行っている学生さんがいる。 その学生さんが、言葉を使わない対話を、実験的に試みてくれた。 その日、参加者はそれぞれ、音の出るものを持ってきた。 ビー玉の入った瓶、木の板、鈴のついたおもちゃ、それから柑橘の果物まで、いろんなものが机の上に置かれた。 参加者たちは、その中から気に

          インクルーシブ哲学へ⑦:音と言葉

          インクルーシブ哲学へ⑥:詰まりと循環

          ▲前回 2023年12月13日 ボーダーレスてつがくのチームで、檜原村を訪れた。 檜原村には、山があり、森があり、川があり、迎えてくれる素敵なゆかさんと娘さんがいた。 ゆかさんの娘さんは、落ち葉の上を歩きながら、寒いと言っていた。 ゆかさんが、娘さんの上着のチャックを上げようとすると、娘さんは上げなくてもいいと言った。 「ちきゅうのがっこう」を市川力先生と主宰しているゆかさんは、拠点の古民家に連れていってくれた。 美しい古民家には、囲炉裏もある。 カフェのような蔵書室

          インクルーシブ哲学へ⑥:詰まりと循環

          インクルーシブ哲学へ⑤:言葉と、言葉でないもの

          ▲前回 2023年11月17日 ■イベント:言葉と、言葉でないもの ■場所:オンライン ■主催:ボーダーレスてつがく インクルーシブ哲学に反応してくれた人がいたことをきっかけに、「ボーダーレスてつがく」というチームができた。 ボーダーレスてつがくによるイベント第一弾、「言葉と、言葉でないもの」。 一人ひとり順番に絵を描き足していって、みんなで一つの絵を創るというワークをした。 そのあとの哲学対話で、興味深い考えがいくつも出てきて、深く考えることができた。 言葉で

          インクルーシブ哲学へ⑤:言葉と、言葉でないもの

          インクルーシブ哲学へ④:対話において「健常」「障がい」とは?

          ▲前回 2023年11月6日 前回の記事を公開したら、対話的に反応してくれた人たちがいた。 最初に反応してくれたのは、お世話になっているインクルーシブの先輩だった。 その先輩から、「インクルーシブ」を考えたときに誰が(何が)アウトなのか? という問いをいただいた。 重大な問いだ。わからなくなる。 10月29日、辻堂海岸ワンデイキャンプで話しかけてくれた十代の男の子。 言葉はあまりうまく通じ合っていなかったかもしれない。 時間は短かったかもしれない。 でも、対話できた

          インクルーシブ哲学へ④:対話において「健常」「障がい」とは?

          インクルーシブ哲学へ③:相手のことを知るとは何か?

          ▲前回 2023年11月3日 ■イベント:映画『僕とオトウト』上映会&哲学対話+監督と哲学者たちによるトークセッション ■場所:かえつ有明中学校 ■主催:一般社団法人 こたえのない学校 FOXプロジェクト ■協力:NPO法人 こども哲学おとな哲学 アーダコーダ 映画「僕とオトウト」の冒頭で、髙木佑透監督は、重度の知的障害をもつ弟、壮真さんのことを「知りたい」と言っていた。 相手のことを知るとは何だろうか? 相手のことを知るとは、相手がしたことの理由を知ることだろうか

          インクルーシブ哲学へ③:相手のことを知るとは何か?

          インクルーシブ哲学へ②:インクルージョンとは何か?

          ▲前回 2023年10月30日 インクルージョンとは何だろうか。 昨日は、何が、何を、インクルージョンしたのだろうか。 印象的だったのは、海の向こうへ、向こうへと、進む人たちの姿だ。 水陸両用の車いすに乗った子どもも、大人に押してもらって、海の向こうへと進んでいた。 誰かが誰かをインクルージョンしたのではなく、みんなが海にインクルージョンされようとしていた。 波のリズムをもつ海に、みんながインクルージョンされ、みんなが一緒にいた。 それぞれの楽しみ方をしながら、それで

          インクルーシブ哲学へ②:インクルージョンとは何か?

          インクルーシブ哲学へ①:辻堂海岸ワンデイキャンプ

          2023年10月29日 ■イベント:Fox Project 辻堂海岸ワンデイキャンプ ■場所:神奈川県藤沢市辻堂海水浴場 ■主催:こたえのない学校 ■協力:サーフライダーファウンデーションジャパン、ナミニケーションズ、リノア、須磨UBP 今日は、みんなで波に乗る日だった。 波に乗れそうな人も、乗るのが難しそうな人も、みんなで海に入って波に乗る。 たくさんの人が来ていた。 僕は、たくさんの人の中にいると、緊張してどうしていいかわからなくなる。 しかも、そこは、い

          インクルーシブ哲学へ①:辻堂海岸ワンデイキャンプ

          奥井由香子の瓶

          学校の理科室に、緑色の美しい瓶があった。 その瓶は、「奥井由香子の瓶」と呼ばれていた。 「奥井由香子の瓶」は、鍵のかかったガラスケースに入っていた。 誰もその瓶をあけたことがなかった。 それどころか、誰もその瓶に触れたことがなかった。 あるとき、理科室に忍び込んだ生徒が、 ガラスケースを割り、「奥井由香子の瓶」を開けた。 瓶の中から、奥井由香子が現れた。 それは、皆が知っている奥井由香子だった。

          気ままな大臣

          ある王国に、気ままな大臣がいました。 気ままな大臣は、朝起きると、そのときの気分で、紅茶を飲むか、それともコーヒーを飲むか、決めるのでした。 そして、シャツを着ると、そのときの気分で、どんなネクタイをつけるか、決めるのでした。 その日は、王様の誕生日でした。 気ままな大臣が王様に会いにいくと、王様は言いました。 「私の誕生日だから、私が好きな黄色のネクタイをしてきたのだな。うれしいぞ。」 気ままな大臣は、王様に、生涯の忠誠を誓いました。 その次の月には、王子様の

          男の子と大きな石 A Boy and a Rock

          ある晴れた日、男の子は、一人で散歩へ出かけた。 男の子は、森に入って歩いた。 たくさんの鳥がないていた。 森を抜けると、広い草原が広がっていた。 草原を歩いていると、男の子は、大きな石を見つけた。 その大きな石は、色とりどりの、きれいなしま模様をしていた。 男の子は、大きな石をじっと見ていた。 この石を家に持って帰ろう、と男の子は思った。 お父さんとお母さんも、喜ぶにちがいない。 大きな石は、ずっしりと重たかった。 男の子が両手で持って、やっと歩けるくらいの重さだ

          男の子と大きな石 A Boy and a Rock

          【短編小説】パンテオン

          おそらく花の中に最初の視覚が試みられた  ――オディロン・ルドン  私の人生は割礼から始まった。世界を切り裂くような痛み、鋏を持つ男への激しい怒り。それが私の最初の記憶だ。 *  ニコラウス・コペルニクスは、外科医をレストランに招き、葡萄酒の入ったグラスを傾けていた。  外科医は、ただの外科医ではない。トレパネーションを施すことのできる医師だ。頭皮を切開し、頭蓋に硬貨ほどの大きさの穴をあける。その後、頭皮は縫い合わせられる。手術は憂鬱症などに効果を示す。  ニコラウスの

          【短編小説】パンテオン