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41歳からの〝ひろがる転職(チェンジ)!〟 ~転職は、プリキュアだ。~ ④


前回までのあらすじ


残業代を出すと口約束して9月10月に360時間という残業休出しまくりの高稼働を押し付けたにもかかわらず、騙し討ちで残業代を出さない最悪のブラック企業。そして、そんな地獄から脱出するため転職を決意した祥太。

こんなの私のなりたい祥太じゃない! フレフレ私!

Tech PMOとDXコンサルという新たなキャリアビジョンを描き、たくさんの企業に応募して一次面接を受けまくる日々。最初は苦戦するが、少しずつ評価も上がっていく。

転職とは、プリキュアと見つけたり――

ところが順調に見えた転職活動に、暗雲が立ち込めるのだった……。



第4話「お断りしますわ! 私、犯罪者になりません!!」


陰険&邪険! 違法のやからのナゾ!

11月30日木曜日17時、「指示書」なる文書が社長名で送付されてきました。

何でも、10月以降、全く身に覚えのない「再三にわたる当社からの出社指示」に私が従わず、「申請書を提出しないまま」テレワークをしているせいで「依頼業務に多大な支障が出て」いるので、週明けの12月4日月曜日から出社せよとのお達しでした。

率直に、デタラメな内容です。怪文書としか言いようがありません。

まず、「再三にわたる出社指示」とやらが記憶にも記録にも一切ありません。強いて言えば9月頃に一度だけ、A課長がモゴモゴと「そろそろ出社すべきではないか」と世迷い言を吐いたことがありました。「私は1.0人月フルの出向中であり客からテレワークを指定されているので、いい加減そろそろ理解しやがれ」という主旨を何重にもオブラートに包んで告げた記憶はあります。これを「出社指示」とするのは、あまりに無理があります。

当然ながら私は出向先から情報漏洩防止の観点から「自宅でのテレワーク」を指定され、誓約書に証明捺印をして自宅作業をしているわけです。決して自分の好き勝手な都合で自宅作業をしているわけではありません。確かに、転職活動を進めるのに自宅作業は好都合だったんですけど。

「申請書を提出していない」のも寝耳に水でした。確認すると当然の話で、私の出向契約が成立してA課長が自由にこき使えなくなったことが原因で社内にそのようなルールが後出しジャンケンで設けられ、そしてA課長がどうしたことか私には一切何も連絡していなかったというわけでした。アホか。

「依頼業務に多大な支障が出て」いるという話も、自部署の仕事を思い通り進められない責任を転嫁したいA課長の一方的な言い分をそのまま反映しており、ここまで来るともはや八つ当たりです。

人を採用することも連れてくることも満足にできず、部署の実力に見合った案件を引っ張ってくることもできず、残業代も一切支払わないのに残業や休日出勤前提のムチャクチャなスケジュールを私に押し付けようとして、思い通りにならないと全て私のせいにして逃げる。最悪です。

ここまで読んでくださった方なら、A課長の「仕事のできなさ」はイヤというほど理解していただけたと思います。そんな彼が何故度重なるプロジェクト失敗や人材流出にもかかわらず課長というポジションにしがみつけていられるかと言えば、F取締役や社長など「お偉方」に媚び諂うのだけは社内でピカイチに巧いからです。今にして思えば、そんなことが罷り通ってしまうダメな会社でした。

また最後の方には「追加報酬の支払いは出社が条件」というメチャクチャな一文があり、目を疑いました。私への残業代の支払いは会社が履行すべき義務であって、出社を人質にとるようなものではありません。

さすがにこの頃になると「この会社ちょっと、いやかなりおかしいんでは?」と完全に気付いていました。二度あることは三度あると言いますし、きっとまた騙してくるに違いありません。なので、きっちりと理論武装してから徹底抗戦することにしました。

違法のクソボケカス! 祥太、管理職になる!?

冷静に考えてみて、夜間や休日に残業をしたのに残業代が支払われないというのは普通におかしな話です。

まず「管理監督者だから残業代が支払われない」というメカニズムについて、自分で確かめるために色々と調べてみました。

その結果、労働基準法や基発(労働基準局長名の通達)でいう「管理監督者」とは、単に会社が管理職と言い張っているだけではダメで、経営に関与していたり人事権があったりと一定の条件を満たす必要があると判明しました。

(労働時間等に関する規定の適用除外)

第四十一条
 この章、第六章及び第六章の二で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。

 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者

労働基準法 | e-Gov法令検索

この時ようやく初めて、私は自分が典型的な「名ばかり管理職」であり、会社にされてきた仕打ちは全てが違法行為であったことを知ります。それまでずっとA課長やF取締役の説明を鵜呑みにしてしまっており、法令に対する無知というのはかくも恐ろしいことなのかと身をもって思い知らされました。

それまでにも「名ばかり管理職」というものは、ニュースで何度も聞いたことがあったのです。どういうものかはわかっていたつもりだったのに……。

労働基準法と労働基準局が心強い味方になると知り、勝算が見えてきます。

まずは指定日に会社に乗り込んで直接対峙し、即時テレワーク申請を出して帰ってくることにしました。

イリーガルな毎日! 違法残業へ定時後突入!

12月4日月曜日。7月以来久々となる出社です。A課長に残業代の件について確認すると、何故か場所を変えて社外で話したいとのことで、コソコソと会社からやや離れた喫茶店に連れていかれました。そんなに他の社員に聞かれるとマズいんでしょうか?

そこで入社以来2年以上経って初めて、労働条件通知書を交付されました。

第1話でも触れたように、本来は労働基準法15条で労働契約の締結時に交付されるべきと定められているものです。実際、今現在の現職では内定承諾前の12月、オファー面談の時点で提示され、正式版は内定承諾後の入社3週間前にオンラインで交付、および電子署名で合意というプロセスを踏みました。さすが東証プライム上場企業だけあって行き届いているなと感じましたが、冷静に考えればこれが本来あるべき「普通」だったのです。

そして案の定、ムチャクチャなことが書いてありました。

「従事する業務の内容」は「システムエンジニア及び管理業務 労働基準法第41条第2号該当労働者(労働時間等に関する規定の適用除外)」。

備考にはご丁寧に「在宅勤務は禁止とする。」の一文。

いずれも私は全く関知しておらず、合意をしたことも一切ありません。

そして「管理監督者」であることが明確になったので、反撃に出ます。

「職務内容、責任と権限、勤務態様、待遇から私の管理監督者性は否定される公算が高いんですけど、これって名ばかり管理職ですよね? 会社の一連の行為は違法性が濃厚ですよ? これから出るとこ出ましょうか?」

とA課長に伝えてみました。

私が労働基準法や基発などの知識を身につけていたことで、A課長は明らかに狼狽を隠せない様子でした。もともとちゃんと頭で考えて喋らない人ではありましたが、もはや完全にバグってしまい会話が成立しません。

このままでは埒が明かないので、もう一つの残業代支払について確認することにしました。

違法が決め手? 凍結残業代のレシピ!

残業代の支払いについて聞いてみると、意地でも「残業代」という表現はしたくないようで、「追加報酬」という謎の支払いを提示されました。

その算出基準も不可解なもので、出向先での作業を最初のF取締役による思い付き(半分出向、半分社内作業)の数字そのまま、後半はまともなリニューアル作業を想定した頃の見積もりのままで算入しており、いずれも実績値には全く即していません。9月も10月も私は9時から18時までの1.0人月フルで出向先の仕事をし、夜間や休日を使って通販サイトのリニューアル対応をしていたのです。

つまり「我々が依頼したのはこの通りだから、実態がどうであれここまでしか払わない。」ということです。もちろん、明白な労働基準法違反です。

しかも金額をケチるためか、休日出勤は全て強制的に振替休日とされています。もっとも、この悪だくみは後々で彼らの首を絞めることになります。

とはいえ、弁護士を立てて長期間争った末に得られそうな金額よりもちょっと上を提示してきたこと、またサッサと決着をつけてこの会社とおさらばしたいという思いから、合意して矛を収めることにしました。

幾分か失われる金銭もあるのでしょうが、それよりも私の貴重な人生の時間をこんな人達の相手に費やす方が勿体無いですもの。

さて、貰えるもんは貰ったというわけで、これ以上こいつらにつきあっていても時間の無駄です。早々にA課長にテレワーク申請を出してさっさと帰宅することにしました。ところがA課長は「テレワークが承認されるまで、しばらく何日かは出社しなければならない」とバカを言い出します。

…………はい?

OKわかった。課長部長役員社長と、承認プロセスに関与する人間は全員オフィスに居る。まず課長っていうのは、いま私の目の前にいる緊張感のない腑抜けた顔をした中年男性のことだな。その人がハンコを押して部長に出せばあとは即時全て滞りなく進むはずだが、えっ、あなた今なんと仰せに?

A課長に今すぐハンコを押すよう迫りますが、頑なに「じっくり審査してから上にまわす」と言い張って聞きません。

ドサクザでヤバスギ! 違法界に生まれたインシデント!

さて予想外の事態に、一旦出向先に電話で状況を説明することにしました。

まず、自社オフィスでの作業が可能なのか確認します。先方もリリースが迫っていて背に腹はかえられず、本来は契約違反ですが(そりゃあ、テレワーク可能という条件で念を押して連れてきたエンジニアですものね。)、「不用意に他の社員を近づけさせないように」「パーティションを使うか窓際で作業するなどして最大限セキュリティを確保してしのいでほしい」との回答。

さらに問題はこれだけにとどまりません。

自宅の安定した回線では何ら問題が起きなかったたのですが、自社から出向先のクラウド基盤上の仮想デスクトップにログオンすると、30秒に一度というハイペースで接続が切れます。調べてみたら弊社、どうも家庭用と大差ない回線を引いているようです。弊社、マジでITの会社ですか??? よく今までこんな環境で仕事してたな……。

致命的な回線トラブルに加えて、何かを勘違いしたF取締役がかわるがわる案件に無関係な社員を連れてきて、彼らに出向先の業務を教えてほしいと世迷い言を言いだし、出向先から貸与されている業務用端末を私からもぎとって数人で一斉に覗き込んできます。

ふざけんな。何を考えてんだ。上から下まで秘密保持契約違反じゃないか。弊社は今すぐPマーク返上しやがれ。

回線もセキュリティも終わってて仕事にならないとA課長にもF取締役にも訴えて即時のテレワーク再開を強く要求しますが、とりつく島もありません。

F取締役は本当に人の話を聞かない人で、どんなに冷静で論理的に説明をしようとしても大声で人の話を遮るという力技でねじ伏せてしまいます。

私の静止を無視して客先からの貸与端末を勝手に操作し、pingを打って「通るから問題なし」と勝手に納得して話を終わらせていきました。いや、一応リトライすれば繋がるんですからそりゃ到達はしてるでしょうよ。問題は仮想デスクトップへのログオンを1分間も維持できないくらいの「何か」が経路上に発生していることなのに……。

私も一応は電気通信主任技術者という専門家の端くれなので通信回線とネットワークについては多少なりとも知識があるつもりなのですが、そんな私を完全に遮って自分の見解をゴリ押しし続けます。脳裏には城島リーダーの有名な一コマ(「素人は黙っとれ――」)が過りました。

かくして「問題なし」として、そのまま出社は続行となりました。当然ですが、まったく仕事にはなりません。かといって出向先との契約がある以上、A課長が押し付けようとしている仕事をするわけにもいきません。

こうなれば、こちらも意地です。毎日出社して、客先端末を立ち上げ、切断とリトライを繰り返す様をただ眺めるだけの無意味な日々が始まります。

ここまで無意味な毎日を過ごしていれば、さすがにA課長やF取締役といえども自分達の馬鹿さ加減に気付くのではないか。そんな淡い期待を抱きましたが、まあ無意味でした。彼らにとっては、生産性よりも私が出社している(=ワンチャン委託作業を社内で掠め取れる)ことの方が重要らしいです。

違法の雇用形態! が、終わらな~い!!

この時期の出社再開は、転職活動には痛手となりました。自宅作業であれば定時後の18時から面接を入れられますが、出社から帰宅して落ち着いてからの面接となると、どんなに早くても20時以降になってしまうのです。

実際、今では現職となっている本命企業も、18時からの一次面接を予定日の2営業日という直前になって急遽20時に調整してもらいました。これがもし選考に影響していたらと思うと、肝を冷やします。(実際は書類選考の時点でぜひ実際に話を聞いてみたいと思ってもらえていたようですが。)

そして、A課長はあの手この手で私のテレワーク申請を妨害してきました。12月8日金曜日に私が強く問い詰めるまで申請書を自分の手元で「うっかり」止めていたのは序の口で、部長や役員に上げる際にもデタラメな申し送り事項を添えたり私が申請書にホチキス止めした出向先との誓約書の写しや出向先担当者の意見などの別紙資料を「うっかり」破棄して理由欄の「別紙参照」の意味を皆無にしたりとやりたい放題を尽くしてくれました。(申請プロセスの惨状は、私の退職が決まった後で執行役員の一人が教えてくれました。)

おかげで書類不備なのか何なのか、週明けの12月11日月曜日朝、私のテレワーク申請は会社の意思として正式に却下されました。

まるまる1週間を無駄にして、この体たらくです。さすがに溜まりかねてA課長を激詰めすると、彼はプルプル震えながらあまりにも衝撃的な、私が出社させられた本当の目論見を白状しました。はい。私、また騙された。

さよなら違法界!? 祥太と仲間の脱出プラン!

どうやらA課長とF取締役の思惑としては、私が担当している出向先のテレワーク作業を自社オフィスに出社させてやらせることで、出向先には黙って社内の他の人間に私の仕事を半分肩代わりさせることができる状況を作り出し、その隙に私にはA課長の地雷案件をやらせようということでした。

もはや何をどうしていいか自分でわからなくなったA課長がF取締役に泣きつき、この法令違反の思い付きが爆誕したのです。それならそうと回りくどいことをせず、例の怪文書に最初から明記しておいてほしいところです。

(もちろん、そうしなかったのは、証拠が残っては彼らが困るからです。)

当然ですが、出向先から委託されている業務を勝手にホイホイと他人に投げることなどできようはずもありません。また、私に貸与されている端末を、無関係の他人に勝手に触らせていいはずもありません。

火の玉ストレートで秘密保持契約違反ですし、さらに不正競争防止法違反という犯罪行為です。他にも色んなものに牴触するでしょう。

上記は何度もA課長やF取締役に説明したのですが、一向に聞く耳を持ちません。もはやコンプライアンスはプラプラ、ガバナンスはガバガバです。

ダメだ、これは。付き合いきれない。もう、帰ろう。

何もかもイヤになった私は、自分の判断で帰宅することにしました。

だって、私は会社がお墨付きを与えた「管理監督者」なのですから。何時に出社して何時に退社するか、全ては自分で決めることができるはずです。

ちなみに、もしこの時A課長やF取締役に押し切られて言うとおりにしていたら、一体どんな未来が待ち受けていたのでしょうか。最悪のシナリオを想定してみましょう。

もし客先の端末を他人に触らせた場合、その全責任は誓約書にサインした私が個人で負うことになります。なにしろF取締役の命令は全て口頭だったため、証拠が残っていません。つまり、状況的には「私が出向先から請け負った仕事を怠慢から自分の思い付きで勝手に社内の別の人間にやらせた」という構図が出来上がっているわけです。

残業代支払いを二度も騙し討ちでバックレようとするような会社ですから、そのくらいシラを切り通しても不思議ではありません。全責任を私に押し付けて懲戒解雇とし、出向先からは民事で多額の損害賠償金を請求され、刑事告訴もされて私は塀の中。そんな未来もあり得たわけです。ゾッとします。

この頃には転職活動も一刻の猶予もない本気モードになり、トーンも「いい会社があれば移りたい」から「1日でも早く出て行きたい」へ変化していました。

さて。帰宅前に、出向先の担当者さんには現状をありのままメールでお伝えしました。「こっちでも何とか動いてみるので端末と機密だけは何とか死守してほしい」という指示をもらいました。

わずか数か月とはいえ一緒に仕事をしてきた仲間達がリリース前で頑張ってるというのに自分は何もできない、という状況は非常にもどかしいものでしたが、その一方で彼らは私を助け出すために動いていてくれていたのです。

さよなら…違法つかい! 奇跡の違法よ、もう二度と!

というわけで、全ての端末をカバンに入れて帰宅します。

さっきまで勝ち誇ったような顔をしていたA課長とF取締役がみるみる表情を変えて、慌てて追いかけてきます。が、無視して退出しドアを閉めます。

ドアの向こうでA課長が何かブツブツ言っています

「社会人として最低限のルールと約束を守れないのはどうかと……」

このA課長の捨て台詞に思わずブチ切れた私は、咄嗟にドアを開けて大声で矢継ぎ早に叫び続けていました。

「先に約束を破って払うといった残業代を何ヶ月もバックレたのは誰でしたっけ? 国のルールやお客さんのルールも平気で反故にしているのは誰でしたっけ? 自分達のやってることが労働基準法違反だという認識はあるんですか?? 大嘘を社長に吹き込んで、もともと出向先の要請でやってる私のテレワークを中止させたくせに、出社してもマトモに仕事できないように邪魔ばかりしてるって認識はおありでしょうか?? 出向先との契約にも法令にも違反する命令を私に押し付けてるって自覚はあるんですか???」

そうそう。5月に残業代が出なかった時に日報メールで「わかる人にはわかる」形で騙し討ちへの嫌味を長文で書いておいたのですが、それ自体への回答はない一方でA課長やF取締役らに呼ばれて「日報におかしなことを書いた」点を咎められるという一幕もありました。まあ残業代について聞くと一瞬でその会議は解散になったんですけどね。マジで面白すぎんだろ弊社。

翌月、「社内コミュニケーションツール利用規約」という謎のお触れ書きが爆誕しました。

なんでも「全社に対して発信を行う場合は必ず上長の許可、承認が必要」「日報は全社員の目に触れることを意識」「個人の不平や不満を表現する場ではないので上長に相談しろ」とのこと。明らかに私封じです。

つまり、会社への不平や不満を全社員に見えるメールやチャットに書くのは禁止するということです。とんでもない情報統制が始まってしまいました。しかも「上長」に相談してもずっとガン無視されてきたというのに。

さすがにこの頃になると、会社の上層部が社員の横の連帯を恐れていることに感づいていました。A課長やF取締役の嘘が露呈してしまうからです。

現に出社後、他の社員と会話をして、こともあろうにA課長が「私が夏の暑さを嫌がって勝手にテレワークをしている」と他の社員に吹き込んでいたことが判明していました。

そうか、みんなにありのままを伝えれば何かが変わるかも知れない。

そう考えた末に、私が取った最後の手段が「大きな声で話す」でした。

そして今の私は別に、全社向けに発信しているわけではありません。すぐ目の前にいる「上長」に対して、「相談」しています。それに、これはメールでもチャットでもありません。私の地声です。少々声が大きかったかも知れませんが、別に窓ガラスも割れてませんし常識の範囲内といえるでしょう。

いつの間にかF取締役はどこかに消えてしまったのか見当たりません。こういう時の逃げ足だけは速いです。親分抜きで私に対峙する小心者のA課長は、ただオロオロしているだけです。何かモゴモゴ言っていますが、完全に私の声にかき消されて聞こえません。

「そもそも私は労働基準法41条2号でいう管理監督者なので、どこで仕事をしようが何時に出社して何時に帰ろうが、何もかも私の一存ですよね?! だいたい残業代ケチりたさに私を黙って管理監督者にしていたのは会社ですからね!!」

あまりの異様な状況に、さすがに別の部署の偉い人がすっ飛んできて、私とA課長を下のロビーに連れ出しました。

ひとまず別部署の偉い人が、場を収めました。終始わけのわからないことを言っていたA課長は、泣きそうな顔でフロアに戻っていきました。

この偉い人と二人きりになった時、「実は俺もやめようと思ってる」と明かされました。会社がおかしな新規事業に全振りして一番煮え湯を飲まされてきた、弊社の技術トップです。相当、腹に据えかねていたのでしょう。

後に、この時の問答は全社に波及します。

そしてこの日の夕方、私をこの状況から助け出すために出向先の担当者さんが計画した救出作戦が、ついに動き出しました。


次回予告 (第5話…5/18土曜 あさ8:00公開)


会社に入ってきた、一本の電話。みるみるうちに青ざめるF取締役。

信頼できる仲間たちの活躍により祥太は自由の身になり、自宅作業再開へ。

本命企業の内定もゲットし大成功のうちに終えたかに思われた転職活動だったが、自分の保身しか考えないA課長のセコい謀略により、内定取消の危機という最悪のピンチに陥る祥太。

一体、どうなってしまうのか?!

『41歳からの〝ひろがる転職(チェンジ)!〟』、
「社長(ボス)に投げよう! ワタシだけのレジグネーション☆」

転職は、プリキュアだ。


サブタイトル元ネタ…『ドキドキ!プリキュア』(2013) 第4話

小見出し元ネタ…『魔法つかいプリキュア!』(2016) 第19、46、41、37、20、30、9、49話


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