畠山勝太/サルタック

アフリカや南アジアでの国際教育協力を専門にしています。頂いたサポートは私が理事を務める…

畠山勝太/サルタック

アフリカや南アジアでの国際教育協力を専門にしています。頂いたサポートは私が理事を務めるNGOの活動資金にしますのでよろしくお願いします。詳しい自己紹介はコチラ→http://www.sarthakshiksha.org/ja/who-we-are/staffs/sh/

マガジン

  • 教育政策・教育経済学について

    教育政策や教育経済学についての雑記帳。

  • 「Wezzyー女子教育が世界を救う」

    かつて存在したWezzyというWebマガジンが2024年3月末で閉鎖されてしまったので、そこで連載していた「女子教育が世界を救う」の記事の一覧です

  • 国際協力について

    国際教育開発/国際教育協力、開発とジェンダー、開発政策を中心に、国際協力について思った・考えたこと

  • 国際機関での仕事の話

    世界銀行本部での4年間、ユニセフ・ジンバブエ事務所/本部/マラウイ事務所での5年間の経験と、コンサルタントとして再び世銀・ネパール事務所に戻ってきた経験から、国際協力でのキャリア形成に役立ちそうな情報を掲載しています。

  • NGOの話

    ネパールの子ども達に良質な教育を届けるべく活動しているNGO、サルタック・シクシャに関連する話です。

最近の記事

日本の教育民営化政策は、教育格差も社会の分断も加速させる可能性がある(Wezzy2022.02.06掲載)

前回から引き続き、教育の民営化・私立学校の問題についてお話したいと思います。前回は女子教育と私立学校について取り上げましたが、今回は教育の民営化・私立学校の究極の問題といえる、障害を持った子供達・特殊な教育ニーズを持つ子供達についてお話したいと思います(以下では文字数の関係で障害児に焦点を絞って話を進めますが、似たような話は後者の子供達にも当てはまります)。 前回、私も自分なりの正解すらよく分かっていないトピックなので、読者の方も一緒に悩んでみて下さいと書きました。今回は前

    • 女子教育問題にもつながる、稚拙でめちゃくちゃな日本の教育民営化政策(Wezzy2022.01.04掲載)

      新型コロナウイルスの感染拡大が始まる以前、教育問題で最も注目を集めていたトピックは教育の民営化・私立学校の問題でした。国際機関のユネスコも、教育業界で最も重要な年次報告書の2021/22年版でこのトピックを扱っています。 この問題の重要性は日本にとっても例外ではありません。これまでwezzyで繰り返し議論してきた女子教育の問題の根幹にあると言っても過言ではありませんし、ここ数年に限っても、特殊な教育ニーズを持つ子供達をどう教育していくのか? という問題に大きな影響を与えてい

      • 女性議員の割合が先進国最低の日本 女子教育問題の解決に乗り出してくれそうな女性候補者は?(Wezzy2021.10.23掲載)

        10月31日は衆議院選挙投開票日です。今回は女子教育の問題を解決するために活動してくれるのでは、と期待できる女性の候補者を列挙してみようと思います。 先進国の中で日本が、女子教育の問題が最も大きな国であることは繰り返し言及してきました。実はインドやドイツでは、女性の議員が増えるとチャイルドケアや女子教育が改善するという因果関係を明らかにした研究があります(チャイルドケアや女子教育が推進されている社会だから女性の政治家が多く誕生する、という逆側の因果関係ではないのがポイントで

        • スクールバスの意外なメリット・デメリット 学力向上の可能性といじめ対策の問題(Wezzy2021.09.17掲載)

          スクールバスには子供たちの学力を向上させる効果があるかもしれない、と聞くと驚く方がほとんどではないでしょうか? 実は今、日本とアメリカの双方でスクールバスが大きな話題となっています。 今年の6月に千葉県八街市で飲酒運転のトラックが下校中の小学生たちに突っ込み、5人が死傷した事故がありました。これをきっかけに子供達の登下校時の安全を確保する手段としてスクールバスに注目が集まりました。この結果、8月に与党内で全国の公立小学校にスクールバスの導入を目指す議員連盟が立ち上がりました

        日本の教育民営化政策は、教育格差も社会の分断も加速させる可能性がある(Wezzy2022.02.06掲載)

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        • 教育政策・教育経済学について
          50本
        • 「Wezzyー女子教育が世界を救う」
          42本
        • 国際協力について
          19本
        • 国際機関での仕事の話
          39本
          ¥500
        • NGOの話
          11本
        • 国際機関での仕事の話(個別記事)
          38本

        記事

          女子教育は環境問題を解決するための切り札? 国際会議で取り上げられたSDGsトピックを検証する(Wezzy2021.08.20掲載)

          女子教育は環境問題を解決するための切り札か? というのはなかなか興味深い問いではないでしょうか。過去に「女子教育が世界を救う」という連載を持ちながらも、環境問題については考えたことがありませんでした。 実はこの問い、イギリスとアメリカの大手シンクタンクが、教育に関する大きな国際会議を前にがっぷり四つに組んで議論していたトピックなのです。日本には超大型のシンクタンクが存在しないので想像しがたいかもしれませんが、まるで怪獣映画を見ているような迫力があり面白い議論でした。 今回

          女子教育は環境問題を解決するための切り札? 国際会議で取り上げられたSDGsトピックを検証する(Wezzy2021.08.20掲載)

          幼児教育問題「幼児教育の学校化」と「遊びを通じた学び」のどちらがいい?(Wezzy2021.07.16掲載)

          小学校に入学した子供が、幼稚園・保育園からの環境の変化に馴染めず、教室を歩き回る、授業中に大きな声を出すなどの行動に出る「小1プロブレム」を解決するため、文科省が5歳児に教育プログラムを策定するという報道がありました。 このプログラムは少し前から話題になっており、文部科学省では「幼児教育スタートプラン」と呼ばれています。肝になるのが「幼保小架け橋プログラム」で、5月25日の大臣の会見や7月8日の会議資料に詳細が書かれています。 簡単に要約すると、①子ども庁が創設されるのを

          幼児教育問題「幼児教育の学校化」と「遊びを通じた学び」のどちらがいい?(Wezzy2021.07.16掲載)

          オンライン学校の在籍年数が伸びるほど学力は伸び悩む?(Wezzy2021.06.18掲載)

          ICTを活用した教育の中で、今最も注目を集めているのは、恐らくオンライン学校ないしはネット学校と呼ばれるものだと思います。日本だと、N高等学校がこれの走りではないでしょうか。 N高等学校は、著名人を講師に招いたり、東大合格者を排出したりと良い面で注目を集める一方で、進学率の粉飾や教員の過酷な労働環境といった好ましくない点でもメディアを賑わせています。 アメリカでもオンライン学校は世間の注目を集めています。しかし、日本と違う点は、このオンライン学校に関する学術的な分析が進め

          オンライン学校の在籍年数が伸びるほど学力は伸び悩む?(Wezzy2021.06.18掲載)

          新型コロナで導入が進む、ICTを活用した教育の効果とは?(Wezzy2021.05.21掲載)

          新型コロナウイルス感染症による子供達の学びの損失が、世界的に大きな話題となっています。英米では現在学校で学んでいる子供達は、学びの損失が発生しなかった場合と比べて、将来収入が3%程度下がってしまうのではないかと言われています。 そんな中で注目を集めているのがICTを活用した教育、ないしはEdTechと呼ばれる分野です。 この分野は中身が非常に多様であるため、ICTを活用した教育は効果がある/ないを一概に論じることが難しいですし、その多様な中身をどう分類するのかもなかなかに

          新型コロナで導入が進む、ICTを活用した教育の効果とは?(Wezzy2021.05.21掲載)

          問題だらけのジェンダーギャップ指数 信頼のできる国際的な指標とは?(Wezzy2021.04.16掲載)

          先月末に2020年のジェンダーギャップ指数が発表され、日本は156国中120位と、相変わらずの3桁番台であったことが話題となりました。 毎年ジェンダーギャップ指数が発表されると、「ジェンダーギャップ指数はインチキだ。国連開発計画が出しているジェンダー不平等指数だと日本は20番前後と非常に良好な位置にいる」などの声がSNSなどで見られます。 以前も書いた通り、指標の中には質の高いものもあれば低いものもあります。また指標ごとに重視する領域が異なるため、特定のランキングを持ち出

          問題だらけのジェンダーギャップ指数 信頼のできる国際的な指標とは?(Wezzy2021.04.16掲載)

          「日本は世界で◯◯位」にダマされないために 女性差別に関する報告書でみる国際ランキングの読み方(Wezzy2021.03.13掲載)

          「日本は世界で◯◯位」という調査結果がたびたび話題になります。ジェンダーの分野で有名なのは、世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダーギャップ指数」でしょう。日本はこの男女格差を測るジェンダーギャップ指数で例年、非常に悪い成績を残しており、女性差別がいまだに根強く残っていることの証拠としてたびたび取り上げられます。ちなみに2020年の日本のジェンダーギャップ指数は153カ国中121位でした。 以前、連載「女子教育が世界を救う」でも取り上げたように、実はジェンダーギャッ

          「日本は世界で◯◯位」にダマされないために 女性差別に関する報告書でみる国際ランキングの読み方(Wezzy2021.03.13掲載)

          森喜朗元会長の女性差別発言を「炎上」で終わらせないために必要なこと(Wezzy2021.02.17掲載)

          東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗元会長の「女性は競争意識が強い」「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」といった発言が女性差別であるとして大きな話題になりました(発言の全文はこちら)。 この件を受けた経団連会長や自民党の二階俊博幹事長の発言も同様に批判の対象となり、ボンバーマンの連鎖でも見ているような気分になります。 森元会長の発言に限らず、社会ではいまだにあらゆる場面で女性差別が行われています。こうした状況を改善するためにすべきことは多数ありま

          森喜朗元会長の女性差別発言を「炎上」で終わらせないために必要なこと(Wezzy2021.02.17掲載)

          マイナンバーカードと成績の紐付けは、教育政策の質を高める?(Wezzy2021.02.01掲載)

          昨年末、「マイナンバーカードと学校の成績などの教育データが結び付けられるかもしれない」という報道が話題になりました。報道後すぐ、SNSなどでは「個人情報が漏洩する可能性がある」「学校の成績が一生付き纏うのか」といった非難が殺到していましたし、みなさんも「何となく怖い」という感想をもっただろうと思います。 「何となく良い/悪い」という感想を抱かれがちなトピックは、0か1かの極端な議論になることがたびたびあります。 しかし、こうしたトピックは、やらないという選択も含めて、もし

          マイナンバーカードと成績の紐付けは、教育政策の質を高める?(Wezzy2021.02.01掲載)

          「使えない学生ばかり」と嘆く前に、企業は「こんな人材を高く買います」と伝えているか 学校教育と「スキル習得」の問題(Wezzy2020.12.26掲載)

          みなさんは学校に行くことにはどのような価値があるとお考えでしょうか? コネを作る、自分の実力・学力を示す、学ぶことそのものが楽しい、社会で活躍するためなど、学校に行くことには様々な価値が見いだせるはずです。そのうちの一つである「スキル」の習得についてお話したいと思います(「スキル」とはなにかは、あとで説明します)。 学校教育に対して否定的な人からは「大学にいっても学生は何も学んでいない≒スキルを身に付けられていない」という批判が頻繁に出てきます。大企業の社長や会長が、そのよ

          「使えない学生ばかり」と嘆く前に、企業は「こんな人材を高く買います」と伝えているか 学校教育と「スキル習得」の問題(Wezzy2020.12.26掲載)

          アメリカの手厚い失業給付金が批判されている理由「トランプは米国経済の根本的な仕組みを分かっていないのか」(Wezzy2020.11.01掲載)

          日本は25歳以上の大学入学者が少ない 今日はまず、各国の大学と短大に入学する人達の中で25歳以上の人達の割合を示した図を見てもらおうと思います。 なお二つの注意点があります。一つは軍隊と大学入学の関係です。徴兵制がある国々は、日本のような国と比べて、教育とキャリアの関係が複雑化しやすくなります。また、米国のように、徴兵制は無いものの、貧困層の子供にとって、軍隊に行って奨学金を得ることが大学へのアクセスを切り開く、という貧困と軍隊が少なからず関係している国々でも教育とキャリ

          アメリカの手厚い失業給付金が批判されている理由「トランプは米国経済の根本的な仕組みを分かっていないのか」(Wezzy2020.11.01掲載)

          自民党が理解できていない「大学受験生に2万円の給付」の意義(Wezzy2020.10.20掲載)

          公明党が、「大学受験を控えた高校3年生や浪人生を対象に、大学入学共通テストの受験料に相当する2万円の給付を提言した」ことと、それに対して、萩生田文部科学大臣が、「その目的は何なのかということも含めて与党でよく相談をしてほしい」という返答をしたことが話題となっています。 報道されている教育関係の政治家の反応や、メディアの反応を見ていると、ものの見事に何も分かっていないようで、かなり驚きます。 米国は良くも悪くも、何か教育政策上でよく分からない事があると、実験してみたり、研究

          自民党が理解できていない「大学受験生に2万円の給付」の意義(Wezzy2020.10.20掲載)

          「女性が輝く社会づくり」の安倍政権は7年8カ月かけて女子教育問題を解決できたのか(Wezzy2020.09.09掲載)

          8月28日に、安倍首相が健康問題により辞任を表明しました。安倍政権は「すべての女性が輝く社会づくり」を掲げていた政権です。数ある政策分野の中でもジェンダーを大きな課題として、解決しようとしていました。実際に、経団連に女性役員の要望を出したり、女性活躍推進法を定めて一定以上の規模の会社に対して女性の雇用に関する情報を公開させたりするなど、ジェンダー問題解決のために数々の施策も打ち出しました。 また、対外的にも、去年の国連総会で途上国の女子教育問題に取り組むことを安倍首相は表明

          「女性が輝く社会づくり」の安倍政権は7年8カ月かけて女子教育問題を解決できたのか(Wezzy2020.09.09掲載)