見出し画像

【WBC 2023】1次ラウンド第3戦 日本vsチェコを振り返る

WBC(World Bassball Classic)2023。
1次ラウンド第3戦の相手は、チェコ共和国。

一般的に、ヨーロッパのスポーツと言えばサッカーが中心で、あまり野球が盛んではないイメージですが、競技を行っている国もあります。
実は、予選免除を認められた国や地域以外で、4つのWBC出場枠をかけて予選が行われています。

ドイツで行われた予選グループA。
敗者復活を含むトーナメントで行われ、1位はイギリス、2位がチェコでした。

どれぐらいの戦力なのか全くわからなかったのですが、当日の事前番組などを見るとその全容が明らかになってきました。

国内でリーグ戦はあるようですが規模は小さく、選手のほとんどが別の仕事をしながら野球をプレーしているそうです。
企業に勤めていたり、高校の先生だったり。監督に至っては神経科の医者だそうです。

それだけ聞くとなんだか「本気の草野球チーム」みたいなイメージが湧きますが、そんな中にもメジャーでのプレー経験がある選手もいるし、リーグを戦っているだけあってみんな体格がいい。アジアの選手に比べると元々体が大きく、パワーが必要な野球にはもってこいなのかもしれません。

それでも国内での競技人口が少なく、野球がマイナースポーツであるチェコですが、WBC出場をきっかけに試合がテレビ中継されることになったそうです。
試合が中継されれば、出場選手のご家族や友人も活躍を見守る事ができますし、何より競技人口増加の糸口に繋がるかもしれない。

イメージが湧きにくいですが、オリンピックでそれまで全く知られていなかった競技で日本人選手がメダルを獲得し、その後その競技が注目される、といった流れでしょうか。東京オリンピック後、アーバンスポーツが注目されたのと同じような事がチェコでも起こっているのだと思います。

実力が未知数のチェコ代表との一戦。
侍ジャパンの先発投手は、昨年最年少で完全試合を達成し、一躍時の人になった佐々木朗希。
岩手県陸前高田市出身のピッチャーが、3.11というこの日にマウンドに立ちます。
特別な思いもあると思いますが、自身も代表公式戦のデビュー。
どんなピッチングを見せてくれるのでしょうか?

豪速球vs技巧派。息を呑む投手戦

先攻はチェコ。いよいよマウンドに佐々木朗希が上がる。
初球からなんと160キロ超え!顔色には緊張の色もなく、いつも通りの力強いピッチング。
全身を使って次々と速球を繰り出す。そして落差の大きいフォークに驚く。

しかし相手も負けていない。
3番クラップが佐々木のストレートにしっかり反応し、ヒットを放つ。
続く4番セルヴェンカの打球をショート中野が処理したものの、ファーストへ返球ミス!
痛い失点となってしまう。

それでも佐々木が与えた失点はこれだけ。
3回と2/3を投げたところで球数制限の65球を超え、あと一人を宇田川へ任せてマウンドを降りた。
国際試合デビュー戦で貫禄のピッチング。早くも次にどのタイミングで投げるのか楽しみになってくる。

対するチェコの先発はサトリア。
どんなピッチャーか全く想像がつかなかったが、投球を見るとそこまで球速は早くないようだ。
しかし、ストレートがバッターボックス付近でフワッと浮くような感じで打ちづらい。
その上スローボールも織り交ぜてくるのでタイミングが取りづらい。
百戦錬磨の侍ジャパン打線もこれには相当苦戦。

それでも3回裏。
近藤健介がヒットで出塁すると、村上がフォアボールを選んで1-2塁。
連日好調の吉田正尚にタイムリーが飛び出し逆転!
そして、この日セカンドでスタメンの山田哲人にも技ありのタイムリーが飛び出す!
さすがはミスタートリプルスリー。国際試合経験豊富な山田も結果を出した。

サトリアの投球もこの回まで。
まさかスローボールを使う技巧派ピッチャーに序盤苦しめられるとは思わなかった。
競技人口が少ないヨーロッパの国から、パワフルなバッターと技巧派ピッチャーが出てくるなんて、まるで「ドカベン」のような漫画の世界から飛び出したみたいなチームだ。

今日も打線が繋がる!侍ジャパンの猛攻

4回裏。チェコのピッチャーがサトリアからフラウチへ交代。
侍打線がここで猛攻を仕掛ける。

中野がフォアボールで出塁すると、続く甲斐が送りバントを決めて中野が2塁へ。
そして打席にはヌートバー。
連日の好調そのままに、この打席でもタイムリーを放って1点!
続く近藤健介にもヒットが飛び出してもう1点。
さらに、3番大谷の鋭いスイングがボールを捉える!
あわやホームランかと思われた打球はライトフェンスに直撃し3点目。
大谷はこれで終わらない。村上の打席に俊足を生かして3塁へ盗塁成功。
その後、村上にもフォアボールを許してしまい、ピッチャー交代。
5番吉田正尚の犠牲フライもあり、この回大量4得点のビッグイニング。

不安を払拭!後半戦へ弾みをつけた選手たち

侍ジャパンのピッチャーは5回から佐々木と同学年の宮城へ交代。
高卒2年目から注目され、所属するオリックスでは山本由伸と2枚看板。
21歳というのに既にベテランのような貫禄があるピッチャー。
しかし、強化試合では打ち込まれるシーンが多く心配していたが、栗山監督はここで起用。

元々いいピッチャーだけに波に乗れば問題ないと思っていたが、この試合でその通りになった。
いつもの持ち味を発揮し、チェコ打線をひとり、またひとりと抑えてゆく。
1点は献上したものの、球数制限がありながらも9回まで好投。
強化試合での不振が嘘のような大活躍!

9回はここまで一度もマウンドに上がっていない大勢が投げるものと思っていたが、宮城のピッチングで持ちこたえた。
大勢が見られなかったのは残念だが、今後の試合で接戦になった時に必ず必要になるピッチャー。温存しておいて損はないはず。
北中米の強力打線を前にしてもキッチリ抑えてくれるだろう。

後半、侍ジャパンは主力温存のため積極的に選手交代。
5回裏、ヌートバーに代わり、追加招集された牧原が打席へ。
すると、最初の打席でいきなりヒットを放つ!

鈴木誠也の負傷で追加招集された牧原。
宮崎での強化試合。侍ジャパン相手にソフトバンクから出場した牧原がファインプレーを見せた。
それがキッカケなのかはわからないが、侍ジャパンに入ってもしっかりと結果を残した。

8回裏には大谷に代わって牧がバッターボックスへ。
するといきなりレフトスタンドへホームランを放つ!
代打で出てきていきなりの活躍。初戦と同じく「デスターシャ」も飛び出す活躍!

次の打席は4番村上。
ここまでずっと苦しんでいたが、ようやく彼のバットも火を噴いた!
シングルヒットだったが、東京ドーム中が大歓声に沸く。
ようやく結果が出た村上。これからどんどん調子を上げて行ってほしい。

負けてノーサイド。チェコ野球の未来に光あれ!

終わってみれば今日も二桁得点の侍ジャパン。
準々決勝進出に弾みをつけた。

試合が終わると、チェコの選手が全員フィールドに出てきて拍手。
侍ジャパンとの健闘を称えた。

国内ではマイナースポーツかもしれないが、きっちり予選を勝ち上がって出場権を得て、本戦では堂々の戦いっぷり。
しかも相手は2度のWBC制覇とプレミア12のチャンピオン、重ねてオリンピック金メダリストの絶対王者、日本。
試合ができるだけでもすごい事だし、チャンピオン相手に堂々と戦ったと思う。
野球をプレーする者なら誰もが憧れるメジャーリーガーともプレーできたのだから、喜びは大きかっただろう。

そしてフィールドの上では紳士的な態度で会場を沸かせてくれた。

印象に残ったのは4回表。
7番エスカラの打席。佐々木朗希が投げたボールが膝に当たりデッドボール。
筋肉がない所に当たってしまったのか、エスカラはその場で倒れ込み、チームスタッフが出てくる騒ぎに。
佐々木も帽子を取って頭を下げ、状況を見守るが、しばらくするとエスカラが立ち上がり、自分の足で一塁へ。
一塁を守る山川も心配して声をかけるが、なんと塁を離れたと思ったらダッシュで戻ってきて、無事をアピール!
これには東京ドーム中割れんばかりの大歓声。

対戦相手へのリスペクトを忘れない。
そんな姿に、侍たちも最大のリスペクトで応える。
見ていて気持ちいい試合だった。

せっかくテレビ中継もされたのだから、チェコ国内でももっと野球が注目され、影響を受けた子供たちの中から多くの選手が育ってくれたら素晴らしい。
これを機に日本とももっと交流ができれば、尚素晴らしいと思う。

チェコ野球の未来に光あれ!

※J SPORTS 野球好き公式Twitterより。
デッドボールを受けたエスカラ選手、無事に翌日の試合にも出場できたそうです。

※Amazon PrimeVideoの公式Twitterより。
試合終了後にチェコの選手が全員フィールドに出てきて健闘を称える。
見ていて本当に気持ちのいいシーンでした。


今後の展開、他のプールは?

エスカラ選手は無事だったものの、侍ジャパンに衝撃のニュースが。
韓国戦で指を負傷した源田だが、実は骨折していたとのこと。
これでオーストラリア戦のショートも中野がつとめる事になるが、1次ラウンドを勝ち上がった後はどうするのか?
ラウンド終了後に事前登録していた選手の中から交代が可能だが、誰を事前登録しているか情報がないため不明。
誰を入れる予定なのか?今後が心配だが、選ばれた選手は厳しい局面ではあるが活躍を期待したい。

現在、日本は文句なしでプールB首位だが、日程としてはあと二日。
日本は3/12のオーストラリア戦を残すのみだが、まだ準々決勝進出は決まっていない。
絶対条件はオーストラリア戦に勝つこと。
もし負けてしまうと、可能性は低いと思うが、他のチームの結果いかんで敗退の可能性もある。

だが、連日二桁得点をマークし、好調の日本。
準々決勝進出は間違いないと思うが、気を抜かず応援したい。

隣の台湾で開催されているプールAは混戦。
今のところ台湾とオランダが1位2位を分け合っているが、これもどうなるかわからない。
準々決勝に残った先の相手はどこになるのか?
台湾も勢いがあるし、前回大会同様オランダもかなりの強豪。
さらに、一発勝負のトーナメントになるので、ますます気が抜けない戦いになりそうだ。

先発の山本由伸がどんなピッチングを見せてくれるか?
まずはオーストラリアに勝つこと。
その先を見据えるのはそれからだ。

タイトル画像はNHKニュースサイトより使用させていただきました。
佐々木朗希ナイスピッチング。勝ち進めば、アメリカで投げる姿を見る事ができそうです。

1次ラウンドの試合振り返り記事はこちらから。


この記事が参加している募集

野球が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?