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スマホをいじる男たち

 清少納言が今生きていれば、「にくきもの」の段で一刀両断するような、無神経な中年男を2人、正月早々見かけました。

息子に生返事

 長岡京の天満宮(=写真)に初詣に出かけた元日のことです。行きは梅田発の阪急の特急電車で。途中駅で親子4人が乗り込みました。丸い眼鏡にちょびひげ男と妻、園児らしい男の子と女の子。4人掛けのシートが1席空いていて、そこに座ったのが、なんと眼鏡男。妻と子どもそっちのけで、スマホを横に傾け、操作に熱中し始めました。
 妻と女の子は離れたところに空席を見つけて座り、男の子はドア付近をはしゃぎ回っています。次の駅で混み始め、男はさすがに男の子が気になったのか、「一緒に座ろ」と呼び寄せて、ひざの上に乗せました。男の子は窓の景色を見て、「マンション多い」とかお父さんに話しかけますが、「ああ」と生返事をするだけで目はスマホから離しません。私は長岡天神駅で降りました。それまでの20分間、難しい顔をし続けて、スマホとにらめっこできることに感心してしまいました。

娘の「ねえねえ」に無言

 初詣の帰り、長岡天神駅から乗ると、向かいの座席に親子5人が並んで座っていました。左端にいたのが、芸人の芋洗坂係長を大柄にした男。股をおっぴろげて、さっきの眼鏡男のように眉間にしわを寄せて横に傾けたスマホをにらんでいます。妻と3人の子どもは楽しそうにおしゃべり。お母さんとお父さんの間にいる一番下の女の子はずっとお母さんたちに話しかけ、表情も愛くるしい。小学校低学年ぐらいかな。時折、お父さんに「ねえねえ、完成した?」と言葉をかけて、スマホをのぞきこみます。でも、男は何も答えません。ずっとスマホを見ています。女の子以外の母子3人は「お父さん」に見向きもしません。
 十三駅で親子は降りました。窓からホームを見ましたが、男だけ1㍍ほど離れて歩いていました。さすがにスマホはいじっていません。家に帰ったら、親子の会話、いや夫婦の会話ってあるのかな、と心配になりました。

初詣から帰ると、能登半島地震

 初詣は妻と一緒でした。電車の中では2組の親子の様子を見ながら、2人でクスクス笑いをして時間つぶしができました。が、家族と一緒になにかをするときぐらい、一人きりの世界に閉じこもるのはやめたらどうなの、と思います。
 以前、レストランで親子4人がそれぞれスマホを手に会話もなくバラバラに食べているのを見たことがあり、それよりはましですかね。でも、初詣の行きと帰りに同じような場面を見るなんて、ああ不愉快。
 家に帰って、ソファに寝そべっていたら、横揺れが長い間続き、テレビをつけると、能登地方で震度6強(のちに震度7)の地震。津波警報(のちに大津波警報も)が出ました。大変な一年になる、と覚悟した元日です。
(総社ジャーナル担当教員・二木一夫=2024/01/02記)