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おせっかい or アドバイス

たまに誰かのありようを見ていて、つい思ってしまうことがあります。それは「こうしたらもっと良くなるのになあ……」ということです。ファッションで例えるのなら「そのトップスならボトムはスカートにしたほうが似合うのに」とか、「小柄だからその丈ではスタイルが悪く見えてしまうんだろうな」だったりします。

けれども近しい間でもない限り、そんなアドバイスをしたところで相手を困らせるだけなのだろうと思って言わないようにしています。実際に自分自身がこういったアドバイスによって何度か傷ついたことがあるのもありますが、誰かがどういったものを選ぶかは基本的に自由だと思うからです。

自分がアドバイスを求めるとして、そのときはやはり相手を選びたいと思います。身近な人や信頼している人、またその道に詳しい人に聞いてみたいとまず考えるでしょう。それがもし全然知らない人だったらどう感じるのでしょうか?

今回はアドバイスをテーマに書いてみようと思います。




何年か前にプリーツスカートを履いて出かけたことがあり、街中で初老の女性に呼び止められたことがありました。何だろうと振り返ってみれば「スカートの裏地部分がめくれて見えてしまっているわよ」という指摘でした。私は慌ててスカートを直し、お礼を言いました。この人がいなければ私は恥ずかしい姿でそのまま歩いていたんだと思って恐ろしくなったからです。

一方で、母から聞いた母の友人の話です。エレベーターに乗り、立ち止まってふと見ると近くの若い女性の服に「M」と書かれたシールが貼ってあったといいます。服屋さんで買うときにサイズを知らせるために貼られているものです。どうしようかと迷ったらしいのですが、声を掛けたところ相手は無言でシールを剥がしてさっさとエレベーターを降りていったといいます。

きっと他人に指摘された恥ずかしさがそうさせたのだろうと母の友人は言っていたそうですが、私はこの話を聞いてそれってどうなのかなあと思ってしまいました。この2つのケースの共通点は「そのままでいたら(人目に触れて)嫌な思いをするだろう」という優しさからの行動ではないかと感じます。

これをおせっかいと表現する人もいると思いますが、私はそう思っていません。何故ならこれは緊急時のようなものだからです。そのときにきちんと教えてもらっていないとあとになってから困ってしまうこと。そういった部分に属するものだと考えています。


私がおせっかいと思っていることは、むしろ「その人が変えなくてもやっていける」部分を、求められてもいないのに「こうしたほうがいいよ」と提案することです。そう、全てのアドバイスが良くないとは思いません。相手が求めていないときに押し付ける形になってしまうものがあまり好きではないと思っています。

例えば冒頭にあげた「そのトップスならボトムはスカートにしたほうが似合うのに」というアドバイスを、私が初対面の人へといきなりぶつけてしまったらどうでしょうか。まず相手は「どうして知らない人にこんなことを言われるのか」と思うかもしれません。アドバイスには距離感も関係しているからです。

私のことばはその人にとって「そのコーディネート、変ですよ」と言っているのと同じ意味になってしまいます。相手にとっては「スカートを履くのがあまり好きじゃないから」など事情もあることでしょう。一方的に言われた側は自分の価値観を否定された気持ちになり、不快な気持ちになるかもしれません。この場合「スカートにしたほうが似合う」という後半の肝心なアドバイス部分は伝わりにくくなってしまいます。

知らない人に突然距離感を無視したアドバイスをされ、ここで「そうですか、教えて下さってありがとうございます」と受け取って立ち去ることのできる人は相当人間としての器が大きい人だと思います。私もできることならそうなりたいものです。


最近では「好きなことをしよう」という考え方が広まりつつあります。自己肯定感を高める方法であったり、自分の人生を少しでも長く有意義に過ごすためには大切な考え方です。その一方で「好きなことをしているのに変なアドバイスをされてしまって水を差されたような気持ちになる」という人もいるのではないでしょうか。

アドバイスとは基本的によかれと思ってされることが多いのだと思います。けれども相手が恥ずかしい思いをしてしまうかもしれない場合と、単に相手の持つ事情に干渉する場合では随分と受け取り方は違ってきてしまいます。私自身アドバイスをしたこともされたこともありますが、本当の意味で相手(もしくは私)のためになったのかと考えてみると人によるので難しいところです。

私としては「こうしたほうがいいよ」って言いたくなる気持ちもわかるのです。困っているのかもしれないなら役に立ちたい、助けてあげたいという気持ちから手を差し伸べたくなるのは優しさの表れです。そして人と人とのそういった心の触れ合いは温かいですし、それが相手のためになることもあります。私にも誰かに助けてもらわなかったら進めなかったと感じる場面が幾度となくありました。

アドバイスが不要だったとしても「気持ちは嬉しかった」と受け入れることができれば、少し違うのかもしれないと思いました。ちなみに私は知らない人からのアドバイスでも大切にしているものがあります。実際に受け取るかどうかは自分で決めていいんだと感じました。もし失礼だったりあまりに的外れだったりするのならきっと受け入れなくてもいいのです。


ここまで読んで下さってありがとうございました。




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