イブン・アジーバ『神秘階梯』

回心
回心は、悔悟より厳密な心の働きである。なぜなら回心とは魂を砕き、神に至る旅へと足を踏み出すからである。回心には三つの段階がある。即ち、罪を犯すのを止め悔い改めること、神を忘れていた状態から目覚めること、神から離れていた状態から、神と共にいる状態へと変わることである。

恐れ
恐れとは、神が忌み嫌うものや我欲が望むものを避ける感情である。恐れは神への従順へと人を誘い、神への背反から人を遠ざける。もしそのような日々の行いとして反映されないのであれば、その者の恐れの感情は偽物である。一般の恐れとは神から罰が与えられることや来世の報酬を逃すことへの恐れである。選良の恐れとは、神からの非難や神に近づく機会を失うことへの恐れである。選良の内の選良の恐れとは不品行というヴェールに覆われ、神を目撃する機会を失うことへの恐れである。

希望
現世を精一杯生きることで、愛される御方(神)を臨む静かな心の状態を指す。そのような努力を行わないのであれば、その安寧はまやかしである。一般の希望とは報酬を得ることで安寧の地(来世)にたどり着くことである。選良の希望とは、神の満足を得、神の傍にたどり着くことである。選良の内の選良の希望とは、神を目撃することで確固たる境地を獲得し、真に崇拝に値すべき王(神)の神秘の中で自らを引き上げることである。恐れと希望は鳥の両翼のようなものである。鳥は片翼では飛び立てないように、人間には恐れと希望どちらも必要である。しかし真智の徒は希望をより好み、至誠の徒は恐れをより好む。

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