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#3 日本からの旅人

8月の中旬、大学生正確には院生のN君が夏休みを過ごしに日本からやって来た。

実際に彼が来るまでどんな滞在になるのか想像もできなかったが、今回はN君がいた6週間の日々と彼の旅を振り返ってみる。

N君撮影
ケベックシティの街

(タイトル上の写真を含め
写真は全てN君より拝借)

1.出会いからのカナダ行き

たまたま彼が到着する前日から、カナダの友達家族が泊まっていた。

娘が冬にスポーツイベント行った際お世話になったご家族で、高校生の娘さんと息子さんがいる。

宿の朝食時間が終わると、一番年上でお料理上手なN君の指揮の元、大量のパンケーキを焼くところから始まる忙しくて楽しい大所帯の1週間。

お互いにたくさんの思い出作って週末家族はカナダへ帰って行ったその余韻も冷めやらぬうちに、偶然の出会いからN君がその家族のいるカナダへ出発することになった。

海外は初一人旅でさらにカナダへ行くという、ある意味彼の門出を娘と一緒に散歩がてら町の駅まで見送りに行った。

電車の中に消えていく後ろ姿には、お父さんが昔海外旅行で使っていたというバックパック。今度は息子さんが背負ってカナダへ。

ケベックシティの丘から

2.意外なお客さま

宿のお客さまはほとんどがアメリカ国内かカナダ、夏はヨーロッパなどから。日本からのお客さまは年間を通じてない年がほとんど。

主要都市から離れているし、何をわざわざというロケーションでもあるので不思議はないが、N君がカナダに行っている間に彼の大学の先生がまさかの出張名目による便乗宿泊。

旅の最終目的にしていたナイアガラの滝を観て帰って来たN君。なぜか居るゼミの教授と1週間過ごすことになった後、気を取り直して次の目的地へ。

トロントでメジャーリーグ観戦

3.旅の合間

N君のお父さんと夫は昔の同僚。ご両親の初デートにうちの夫がいたという笑い話を聞いたことがある。

そしてN君10歳の時、家族4人で遊びに来てくれたのが初めてのアメリカ。

彼のことは生まれた時から知っていて何度か会ってはいるけど、前来た時は小さかったし今回の滞在までそんなに喋ったことはなかった。

そのN君、自分の旅だから自分はお客さんをして楽しんでいればいいというタイプではなかった。

我が家にいるときはなんでも気持ち良く手伝ってくれ、宿の掃除から家族の食事、お皿洗いまで、忙しい時期だったので居てくれると本当に心強い存在だった。

おばさんの話もよく聞いてくれるので、娘ともこんなに喋ったことがないってくらい調子に乗って喋っていたのに、日本に帰る前「よく語り合ったよね。」と言ってくれて嬉しかった。

ブルックリン橋

4.あの時の場所へ

行く先々で撮った写真やビデオを毎日送ってくれるという好青年は、旅先でも友達を作って一緒にご飯を食べたりしながら、都市から都市へと行動範囲をどんどん広げていった。

こちらに来た当初、自転車で近場を走り回っていたのも束の間すぐさま電車に乗って日帰り観光、さらには国境越えのカナダ行きで彼は大きな翼を付けて帰って来た。

そして次なる準備ができると、今度はニューヨークへ乗り込んで行ったN君。

前回よりも速やかに、旅程も宿泊先もあっという間に決めていなくなった。

13年後のニューヨーク

ある日の深夜近く、夜景がきれいだからとN君がライブ中継してくれたとき、まだ見たことがないナイアガラの滝中継よりも感動した。

それは彼が子供のとき家族で行ったマンハッタンの展望台からだったから。

20代になった今、あの時と同じ景色を見てるんだと思って一人感慨にふけっていたら彼のご両親から写真が送信されてきた。

野球帽を被った小さなN君と弟さん、
展望台で撮った13年前の家族写真に
涙腺が緩む50代。

リンカーン記念館

5.線路は続くよD.C.までも

ニューヨークでもメジャーリーグを観戦した翌日、彼はそのままさらに先を目指してアメリカの首都ワシントンD.C.行きの電車に乗っていた。

この辺でしばし連絡が途絶えてどうしてるのかなと思っていたら、ちょっと体調不良だったけど回復したと、後日また旅の写真が届き出してホッとする。

そんなある日首都の街を歩いていたN君、地元の人達が公園でビーチバレーをやっているのを見かける。

中学生からバレーボールを始めて今も現役選手の彼は、その場で声を掛けて一緒にプレーからのディナーにも参加という彼ならではの経験もして帰ってきた。

コートの向こうに
ナショナルモニュメント

6.ラストは小学校

一連の旅で、もうどこにでも飛んでいける翼を身につけた後、旅の終わりに彼が向かったのは娘の通った小学校。

将来は小学校の先生になるN君。もう教員免許も持っている。6週間もいるならと夫が事前にかつての担任経由で学校に連絡し、喜んで受け入れてくれるという返事を日本を発つずっと前にもらっていた。

ところが直前になって、町の教育委員会から先生も誰も予期していなかった証明書の提出を求められるという事態が発生し、予定より随分遅くなってしまったが滞在最後の一週間でN君はやっと小学校に行けることになった。

登校から下校時間まで丸一日を学校で過ごし、子供達とカフェテリアでランチを食べ、放課後イベントがあれば手伝ってから帰ってきた。

フィナーレは3年生とキンダー全てのクラスに、便乗教授さんが持ってきてくれた忍者コスチュームで折り紙の授業をして、短かった小学校での一週間も終わりを迎えた。

ナイアガラの滝
国境の橋から
(アメリカ左側・カナダ右側)

8.旅のあり方

小学校を一日見学しておしまいでもよかったし、アメリカに来たことで満足してうちで毎日こじんまりと過ごすこともできたのに、彼は若い時のお父さん同様もっと大きな世界を観に行った。

旅に行こうか迷って時間が過ぎてしまう人もあれば、ためらわずに旅に出る人もある。

何も言ってなかったけど、彼だって最初は飛び出して行くことに少し躊躇していたのかもしれない。

どんな旅をするかという、モデルとしての旅はあってもこれが正解という旅はない。

同じ場所に行っても受け取る経験は人それぞれ。そして残していく印象も。

国境ライン
放人:放たれた人?

8.Life goes on

帰国が迫る最後の週末は、日本へのお土産ショッピングや近くの町にドライブに行ったり、娘も一緒にロッククライミングに挑戦したり。

そして彼らしく、最後の最後まで宿と家の手伝いをしていってくれた。

6週間でちょっと伸びた髪の毛以外見た目はちっとも変わらないけれど、この間に自分で行動して体験したすべてを詰め込んで、彼は八月に到着した頃の進化版になって帰っていく。

寂しいけどこれもまた門出。

NYセントラルパーク


旅人の帰りを楽しみに待っていた電車の音はいつもの生活音に戻り、彼がいた頃庭を走り回っていたウサギも最近あまり姿を見なくなった。

そしてこちらは次の週末から冬時間が始まる。


これからもっといろんな所に行ってみたいとも言っていたね。

  次の旅はどこへ行くのかな


お互いに英語をやり直そっかっていう話、一応細々勉強してるから報告しておく。




  最後まで読んでいただきまして
    ありがとうございました

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