発動型能力と常在型能力 ― イジンデン ルール理解
前書き
大会などでイジンデンの真剣勝負をするなら、ルールをよく理解しておく必要があるだろう。しかし、イジンデン公式サイトのルールページにはルールが網羅的かつ体系的にまとめられた文書(MTG で言うところの「総合ルール」)はまだ存在せず、ルールカード、ルール補足、および個別カードの Q&A といった別個の文書に断片的に記載されているにとどまっているように見える。
この記事を含む「イジンデン ルール理解」シリーズでは、ルール文書を通読し、帰納的に共通項を見つけて命名して概念化することで、ルールを体系的に理解していきたいと思う。なお、一連のシリーズで使われている用語の中には非公式のものがあることに注意せよ。特に本文での初出時に「いわゆる」と付けた用語は明確に非公式である。用語は MTG でのそれを大いに参考にしている。
ルールページに掲載されているルールカード、ルール補足、Q&A 総合、および Q&A 最新追加分は次のバージョンのものを参考にした。
ルールカード_web用2.0_231225.pdf
イジンデンEXRule_230714.pdf
イジンデンQ&A_240216.pdf
イジンデンQ&A_240216+.pdf
今回は能力について。能力は2つの型に大別できそうである。いわゆる発動型能力と、いわゆる常在型能力である。
発動型能力
いわゆる発動型能力は「~たび」または「~とき」と書かれた能力であり、所定のイベントが起きたことを契機に発動する。MTG で言うところの「誘発型能力」だが、イジンデンでは「発動」という言葉が使われているため、このように名付けてみた。
「~たび」種の発動型能力
「~たび」と書かれた発動型能力は、所定のイベントが複数同時に起きた場合、その回数と同じだけ発動する。
「~とき」種の発動型能力
「~とき」と書かれた発動型能力は、所定のイベントが複数同時に起きた場合でも、1回しか発動しない。ルールテキストを読む際には「1枚以上の~」を加えてやると分かりやすくなるかもしれない。
能力語を持つ発動型能力
発動型能力のいくつかはルールテキストの先頭にいわゆる能力語を持つ。能力語自体に意味はないが、他の能力から参照されることがある。
第2弾現在、能力語を持つ発動型能力には次のものがある。執筆は「~たび」種と「~とき」種が混在していることに注意せよ。
執筆 - ハイケイが戦場に置かれるたび~/置かれたとき~
航海 - アタッカーになったとき~
決起 - マリョク配置によってカードが自分の魔力ゾーンに置かれたとき、自分の魔力ゾーンの魔力が4つ以上なら~
徴募 - この能力は墓地でも発動する。自分のエンドフェイズが開始したとき、このターンにアタッカーが破壊されているなら~
能力語を持たない発動型能力
能力語を持つ発動型能力と同様のルールテキストを持つ能力であっても、先頭に能力語がついていなければ、その能力は能力語を持たない。例えば《ビスマルク》の2つ目の能力は「アタッカーになったとき~」というルールテキストを持つが、航海ではない。
遺業能力
遺業能力は発動型能力の一種であり、「戦場から墓地に置かれたときに発動できる」ものである。戦場以外の場所(手札、山札、または魔力ゾーン)から墓地に置かれたときには発動しないことに注意せよ。
キーワード能力になっている遺業能力
遺業能力のいくつかはいわゆるキーワード能力になっている。第2弾現在では次のものが該当する。
冥府発動 - 色条件、レベル条件、および魔力コストを無視して、ルールテキストに書かれた能力を発動する。ただし、ルールテキストに書かれた発動条件は満たさなければならない。マホウだけが持つ遺業能力である。
復元 - オモテ向きにして魔力ゾーンに置く。マリョク配置権は使わない。マリョクだけが持つ遺業能力である。
魔力化 - ウラ向きにして魔力ゾーンに置く。マリョク配置権は使わない。
反魂 - 自分の戦場のガーディアン1体を山札の下に戻して発動できる。これを戦場に置く。
冥府発動や復元は、オモテ面がマホウやマリョクであって、ガーディアンである(戦場にウラ向きで置かれている)カードが戦場から墓地に置かれたときに発動できる。
常在型能力
いわゆる常在型能力は発動型能力でない能力である。典型的には「~間」「~際/~に際し」と書かれているが、これらに限らない。常在型能力は発動するわけではなく、その能力を持つカードが所定の条件を満たす間、常に有効である。
例えば、《好太王》の2つの能力はいずれも常在型能力である。また、《毘盧遮那仏像》の2つの能力のうち、1つ目は常在型能力で、2つ目は発動型能力である。
置換効果を作る常在型能力
「~際/~に際し」と書かれた能力はいわゆる置換効果を作る常在型能力である。「~とき」や「~たび」と書かれた発動型能力と混同しやすいので注意せよ。例えば《グスタフ2世アドルフ》の1つ目の能力は、発動型能力ではなく、置換効果を作る常在型能力である。
置換効果はあるイベントを他のイベントに置き換える。上の《グスタフ2世アドルフ》の例では、通常なら「イジンは起きている状態で戦場に置かれる」ところ、その代わりにルールテキストのように「イジンは寝ている状態で戦場に置かれる」ようになる。
キーワード能力になっている常在型能力
常在型能力のいくつかはいわゆるキーワード能力になっている。第2弾現在では次のものが該当する。なお、「アタック+XXXX」と「ブロック+XXXX」はルールカードの解説文をそのまま読む限りでは常在型能力であるか少し怪しいが、類似の「パワー+XXXX」は明らかに常在型能力であるため、やはり常在型能力と解釈してこちらにまとめてみた。
即応 - 戦場に置かれたターンでもアタッカーになれる。
ダブルプレッシャー - 2体以上からでなければブロックされない。
トリプルプレッシャー - 3体以上からでなければブロックされない。
ウォッチャー - 寝ていてもブロッカーになれる。
パワー+XXXX - 常にパワーが XXXX 上がる。
アタック+XXXX - 「アタッカーである間、パワーが XXXX 上がる」と解釈するのが良さそうに思う。(ルールカードの17ページには「アタッカーを選ぶときから、アタッカーでなくなるまでの間、パワーが XXXX 上がります。」と書かれている。)
ブロック+XXXX - 「ブロッカーである間、パワーが XXXX 上がる」と解釈するのが良さそうに思う。
装備能力
いわゆる装備能力は置換効果を作る常在型能力の一種であり、第2弾現在ではハイケイやマリョクが持っていることがある。これは次のような能力とルールテキストの対からなる。
「イジン召喚によって~イジンが自分の戦場に置かれる際、~そのイジンに装備させてもよい。」という能力
「装備 : ~」というルールテキスト
装備能力は少々複雑なため、詳しくは別の記事に譲る。
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