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【コラム】ラジオ体操をしても生活の質は改善しない?-クラスターランダム化比較試験とは何ぞや?

  先日のオンライン抄読会で、フレイル(虚弱)高齢者に対するラジオ体操の有効性を検証したランダム化比較試験の論文を取り上げました(Osuka Y, et al.2024; PMID: 38403689.)
 
 この研究では、フレイル予備群またはフレイルと評価された日本人高齢者226人が対象となりました。被験者は、ラジオ体操および栄養支援プログラムを実施する介入群と、栄養支援プログラムのみを実施する対照群にランダム化され、健康関連の生活の質(精神領域サマリースコア)が比較されています。
 
 その結果、健康関連の質に統計学的有意な差を認めませんでした。この研究をもってして、ラジオ体操が無意味だと結論して良いでしょうか。
 むろん、結論してはいけないということではないのですが、ラジオ体操の効果は極めて小さい……人工知能(AI)であれば、そのような結論を導き出すように思われます。

 この研究で実施されたラジオ体操は、専門のインストラクターによる60分のグループセッション5回と、自宅における毎日のラジオ体操実施で構成されていました。

 いかがでしょうか。60分もラジオ体操の指導を受けるのは苦痛ではありませんか? 毎日、自宅でラジオ体操をしていて楽しいでしょうか? むしろ生活の質が大きく低下しそうなものです。
 
 ラジオ体操は、公民館の横にある空き地や公園、学校の校庭などに、顔なじみの人たちが集まり、他愛ない会話を楽しみながら体を動かすものでしょう。それが故に生活の質が向上するのだと思います。

 本研究で実施されたような厳格な指導のもとで、黙々と一人で体操するようなものではない気がします。抄読会では、クラスターランダム化比較試験で検証すべきだったのではないかという意見もありました。
 
 今回の【コラム】ではクラスターランダム化比較試験について解説し、上述のラジオ体操の有効性をどのように検討すれば良かったのか、筆者なりに考察してみたいと思います。

クラスターランダム化比較試験とは?

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