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”常に話がわかりやすい人”が必ず共通して持っているスキル - たとえ話 -

エピソード

日頃より色々な人と会話していると、”常に話が分かりやすい人”に出会うことがある。観察していると彼らが必ず共通して持っているスキルがあった、”たとえ話”である。なぜ彼らは、常に様々な角度から”たとえ話”を繰り出せるのか?

”話がわかりやすい人”のスキル「たとえ話」

例えば、IT業界における以下のような話を、”IT業界以外の人”や”新人”に対して説明する際、わかりにくく説明する人と、わかりやすく説明する人がいる。

お題:
「ERPシステムとはなんですか?ほかのシステムとはどう違うのですか?」

ITに疎い人にはわかりにくい説明(専門的な説明)

「ERPとは”Enterprise Resource Planning”の略で、企業の経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」を集約して適切に分配・活用する考え方や、それを実現するシステムのことです。企業内の主要業務に必要なデータを統合・管理することで、情報活用を促進し、迅速な経営判断を可能にします。
基幹システムは生産管理・在庫管理・人事システムなど、主要な業務ごとにシステムが独立しています。対してERPは、複数の主要業務をひとつのシステムで一元管理する点が大きな違いです。基幹システムはERPに比べ、導入準備に工数がかからず比較的容易に導入できる点がメリットです。しかし、異なる業務間でのデータのやりとりには複数システムにおいて連携が欠かせません。」

”ITトレンド”より抜粋 https://it-trend.jp/erp/article/system
 ※”ITトレンド”は、そもそも”業界関係者向け”の情報サイトなので、
”ITトレンド”がわかりにくいと言っているわけではありません、情報も正確です

ITに疎い人にもわかりやすい説明(たとえ話)

「服で言うと、”つなぎ”か、”シャツ・ズボン”かの違いです。”つなぎ”がERPです。”つなぎ”があればそれ1枚で全身がカバーできます、個別に買いそろえるよりかはだいたい安いです。欠点は、個別に好きなものを選べないところや、どこか1か所破れたり古くなったら全部を変えないといけないところです。
”シャツ・ズボン”はそれぞれ選んで買いそろえることが必要です。逆にそれぞれ好きなものを選べるという利点があります。交換の単位も個別に可能です。」

話が分かりやすい人の、ITに疎い人向けの説明より

ちなみに、上記のたとえ話としては、ほかにも以下のような場合もある。

  • 「ミニコンポ」と「CDデッキ・スピーカーなど個別に買いそろえる」の違いで例える

  • 「テレビデオ」と「テレビ・ビデオデッキを個別に買いそろえる」の違いで例える

そもそも”たとえ話”の利点は何か?

”たとえ話”をすると何がよいのか?

  • 本質的なことを直感的に理解してもらいやすい
    - 特に専門知識を持たない人に説明する際に有効

  • メリット・デメリットを想定できる
    - 例えた先で起こるメリット・デメリットは、例えられた元でもおよそ同じことが言える

  • 課題への対策を練られる
    - 例えた先で起こる課題やその対策は、例えられた元でもおよそ同じことが効く

なぜ”たとえ話”をどんどん出せるのか?

1つの事象に対して、たくさんのたとえ話をどんどん出せる人がいる。なぜ量産できるのか。見ていると以下のような共通点があった。

  • 常に個別の事象や物事を、「抽象化」して捉えている
    - 上の例で言うと、日頃から「つなぎ」や「ミニコンポ」「テレビデオ」の”一体型と分離型の違い”という、特徴・本質・メリット/デメリットを整理し、頭にストックしている

  • 話すテーマに応じて「抽象化」から「具体化」への変換を行っている
    - 上の例で言うと、”一体型と分離型の違い”という「抽象化」された概念から、「ERPシステム」「つなぎ」「ミニコンポ」「テレビデオ」…という「具体化」されたものへの変換を行っている

そんなことを考えていたら、以前読んだ「具体と抽象」(細谷 功著)という本に以下の興味深いことが書かれていたことを思い出した。

【第6章】往復運動 - たとえ話の成否は何で決まるか -
「たとえ話」は、説明しようとしている対象を具体的につかんでもらうために、抽象レベルで同じ構造を持つ別の、かつ相手にとって卑近な世界のものに「翻訳」する作業といえます。説明したい新しい概念や事例を、身近な事例で似ているものを使って説明するのです。 たとえ話のうまい人とは「具体→抽象→具体という往復運動による翻訳」に長けている人のことをいいます。
うまいたとえ話の条件を考えてみましょう。
 ①たとえの対象がだれにでもわかりやすい身近で具体的なテーマ(スポーツやテレビ番組など)になっている。
 ②説明しようとしている対象と右記テーマとの共通点が抽象化され、「過不足なく」表現されている。
「抽象化の品質」を決めるのが二点目の条件です。共通点が、他にはあてはまらないような共通点であること、そして、二つの領域の相違点が、説明したいポイントとは関係ないものであることが必要です(そうでないたとえ話はフィット感がなく、「なんかちょっと違う」となります)。
つまり、「共通点と相違点」を適切につかんでいることが抽象化、ひいてはたとえ話の出来映えを決定するというわけです。

細谷功.具体と抽象
株式会社dZERO
細谷功.具体と抽象 株式会社dZERO

参考になった書籍

まとめ

  • ”たとえ話”は、専門知識を持たない人に、本質を直感的に理解してもらう際に非常に有効

  • ”たとえ話”を自由に繰り出すには、日頃より物事を「抽象化」し、本質をつかむ・整理する・ストックする

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