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演技レッスン【演技で『化学反応』を起こすコツ】

こんにちは。
演技講師、アクティングコーチのスギウチです。

この記事では演技力アップに役立つような内容を不定期に書いています。
今回のテーマは【演技で『化学反応』を起こすコツ】という内容です。

観る人の心を動かすような素晴らしいシーンでは必ずといって良いほど、演じている俳優同士の間に「化学反応」が起きています。今年のアカデミー賞などで、たくさんの賞を受賞した映画『ドライブ・マイ・カー』の中でも西島秀俊さん演じる家福が野外での稽古のシーンのときに「今、2人の間で何かが起こっていた」と言っていた、あの瞬間です。あの瞬間を起こすには何が必要なのでしょうか?   

まず、簡単なぼくの自己紹介ですが
ボクは元々20代前半から俳優として活動していて、今から約7年前に俳優から演技講師、アクティングコーチに転向しました。現在も講師として活動中です。今までたくさんのプロの俳優、女優さんのコーチングやオーディション、撮影本番の準備のお手伝いをしてきました。

俳優時代は全く演技のセンスがなく、事務所の先輩から満面の笑顔で「タカシは本当に芝居が下手だなぁー」と爽やかに言われるほどでした。その為、たくさんの演技レッスンやワークショップに通って色々なメソッドを学んできて今に至ります。

では、早速本題に入っていきましょう。

『化学反応』を起こすコツ

先ほどの映画『ドライブ・マイ・カー』での家福さんのセリフ「何かが起こる」瞬間というのは俳優の人たちは常に追い求めている瞬間ではないかと思います。(一部違う人たちもいるかもしれませんが)

観ている人たちも、その「瞬間」に引き込まれていき、何とも言えない至福な気持ちになるものです。

俳優の人たちは、その瞬間を演じる為には「どうすれば良いのか?」とあれこれと試行錯誤を繰り返しているのではないかと思います。ぼくもアクティングコーチの立場から、どうアプローチすれば良いのか、と未だに日々試行錯誤中です。

そんな中で、過去にならった心理学(物理学)の法則から「あぁ、そういうことだったのか」という気づきがありました。

それは演じている俳優の状態がある程度「不安定」になることで『化学反応』が起きやすい状態ができる、ということです。

『化学反応』が起こる法則

シーンの中で、演じている俳優同士が「交流を始めた」「相手と繋がった」「何かが起こった」「共鳴した」などなど、色々な言い方はあると思うのですが、その中に 

「相手役との間に『化学反応』が起きた」という言い方をすることがあります。

まさに演じている俳優同士が反応し合い、頭で考えていたお芝居ではなく、「その場で事が起きる瞬間」なのですが、これを物理の法則で説明できることに気づいてしまったんです。(もっと昔に法則自体は習っていたので、今更なんですが…)

中学生の頃に習った化学式で

C(炭素)+O2(酸素)→CO2(二酸化炭素)

というのがあったと思います。
『炭素を空気中で燃やすことで、二酸化炭素が発生する』ってやつですね。

これは所謂、化学反応が起きて二酸化炭素が発生している状態ですが、ただ単に空気中に炭素を持ってきても二酸化炭素は発生せず、必ず「燃やす」という行為が必要になります。この「炭素を燃やす」ことで活性化状態になり、化学反応が起きて二酸化炭素が発生します。

まとめると、化学反応を起こす(二酸化炭素を発生させる)には、分子を活性化エネルギーで不安定にさせる(炭素を燃やす)必要があるってことです。

この分子を俳優に置き換えてみたところ、演技でも法則通りに起きました『化学反応』が!!

俳優が『不安定』な状態になると「何かが起こる!?」

人間も物質体として考えると分子?原子?素粒子?(よくわからん)として存在しているらしいので、この法則が当てはまるのではないかと思うのですが、

はい、当てはまりました。

演じてもらう俳優がシーンに入る前、もしくはシーン中のどこかで「不安定」な状態になることを自ら選択すると、活性化エネルギーが生まれ、その俳優は所謂「火がついた」状態になります。

それが相手役にも飛び火したりすることで、急にシーンがいきいきとしたものに変わります。

お芝居をしたことがある人ならば、活性化エネルギーが生まれる為に必要な要素として「強い(大きい)感情」を準備してシーンに入ること、を思いつく人が多いかもしれません。もちろんそれもひとつの方法としてありですが、現代の演技のやり方としてはシーン中に「火がつく」方法があると、さらに実践的で良いですよね。

その方法はいくつかあるのですが、その中のひとつが「距離感」を変えてみること、だと思っています。

これは、心理的、身体的、両方の意味で、です。

自分が「安定」している状態のところから、自ら「不安定」になるような「距離感」を選択してみることで、活性化状態(火がつく状態)になる可能性が高くなります。相手にも飛び火しやすいです。

また、この方法の良いところは「相手ありき」のやり方という点です。

感情を中心とした演技をしてしまうと、自分だけで自己完結してしまう演技になりがちな傾向があります。

ところが「距離感」は相手がいなければ、そもそも成立しない概念なので、独りよがりの演技になることを防ぐこともできます。

自分のパーソナルスペースから一歩出てみて、自分を「燃やして」みてください^ ^

さいごに

他にも、自分を「不安定」にする方法はたくさんあります。

また、そのうちご紹介できればと思っているので
気長にお待ちくださーい^ ^

では
スギウチ タカシ

5/29(日)ワンデイWS開催です↓
(こちらは身体に関するワンデイになります)

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