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エッセイ/ワセリンと睡眠不足

冬。別名を、手指ガサガサの季節。

今年の冬も、私の手は荒れに荒れていた。人差し指と中指の側面はひび割れ、拳を作ったときにポコンと出る指の付け根の骨部分(分かってもらえるだろうか)はピキッと割れて血が滲んでいる。
タイツを触れば引っかかり、こうなると、娘のさらさらつやつやした頬に触れるのが、どうにも申し訳なくなってしまう。

客観的に見ても可哀想なほどボロボロの手を持て余した私は、ふと思い立って、指先から手首までくまなく、薬局で買ったワセリンを塗りたくって寝ることにした。
ベタベタして、なんとも言えず気持ちがわるくて、羽毛布団にこのベタベタがついてしまうのではといつものように手を布団に潜らせることもできず、バンザイ姿で寝ようとしたが、どうにも落ち着かない。
眠気も相まって、だんだんと苛立ちさえ覚えてきた。

こんな可哀想な手をしていながら、私はどうして、こんなにひょうきんなポーズで眠りにつかなければならないのか。

そもそも、私は冬自体は嫌いではない。
毎日の雪かきは少々骨が折れるしいつも以上の早起きは身体にこたえるけれど、それでも夜になり冬の雪道が街灯に照らされた光景なんかは好きだし、クリスマスやお正月などイベントの雰囲気にも少しわくわくする。

そんな私は、冬の乾燥とワセリンべたべたによる睡眠不足を許容するべきなのだろうか。

二律背反、そんな思いを抱えたまま、おかげで昨日よりもしっとりしている手をさすりながら、私は今日の仕事に取り掛かった。

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ハンドクリームやワセリンを塗った手に着けるための保湿用の手袋があると知りました。
今度買ってみようと思います。

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