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コンペティションは世界を拓くのか

この記事はPR記事ではありません。学生の皆さんや、大副業時代と言われるなかで「何かをやらなければならない」と思っている人に向けて、コンペティションが持つ可能性や現状を素直に書いています。少しでもみなさんの挑戦の参考になれば幸いです。


僕が初めてコンペティションという仕組みに挑戦したのはたしか20歳くらいの時で、当時建築学科に所属していたこともあり、年に10個近くの建築コンペに挑戦をしていた。学生時代に勝ったコンペティションは、0。ゼロだ。大学院時代も含めれば40から50近く挑戦して、結果はゼロ。

それだけ挑戦し続けたのは、コンペティション受賞者が身近にいて、何かしらの高い評価に憧れを持っていたからかもしれない。

その後大学院を卒業し、25歳という若さで独立した時に、またコンペティション熱が再熱した。当時は、独立したてで仕事が少なかったことや、リーマンショックもあって働いていた設計事務所からの給与の支払いも滞ったままやめてしまったことを、誰かのせいにする時間があるなら「やれることをやろう」と思ったからだ。

おそらく、今後近い将来、デザイン・建築・アート、それ以外の分野に関わる人たちの多くが、25歳だった若かり頃の僕の状態を体験するのではないか、という怖い予測をしている。

でも、その怖さを希望に変えてくれたのが、僕にとってはコンペティションだったのだ。

本noteは「コンペティションは世界を拓くのか」をテーマに、僕自身のコンペティション経験をお伝えすることで、これからコンペに挑戦をしようとする方々にとってきっかけや行動の機会になればと思っている。


【1】LEXUS DESIGN AWARDとの出逢い

先日、第一回LEXUS DESIGN AWARD 2022のオンライン説明会でファシリテーターとして登壇させていただいた。

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これは2021年10月11日締め切りの国際デザインコンペティション「LEXUS DESIGN AWARD2022」への挑戦を検討している方々を対象に、コンペの目的、概要、そして挑戦の意義などをお伝えする1時間のオンライン説明会だ。

※説明会は全2回。1回目は終了、2回目は9月17日に開催予定。どなたでも無料で視聴可能なので、興味がある方は下記↓URLから応募いただきたい。


昨年1.5万PV視聴された2021年コンペティションPR動画でも、受賞者の対談動画で出演の機会をいただいた。



僕はLEXUS DESIGN AWARD 2017で「MASS PRODUCTION TO UNIQUE ITEMS」という作品を提出、パネル受賞した。この作品は陶器の焼き直しを行うことができる移動式窯である。大量生産された皿や陶器などを焼き直しすることで唯一無二のプロダクトへと変化させることができる窯だ。

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受賞後、SFC(慶應義塾大学 湘南藤沢キャンパス)や東京造形大学などでPRイベントに登壇したり、LEXUS Intersectで作品展示に参加させてもらうなど、LEXUS 事務局より随時依頼される仕事に取り組んできた。

そして当時から4年経った今なお、こうして関係する仕事を依頼いただいていることをまっすぐに見れば、僕自身LEXUS DESIGN AWARDの恩恵を受けている、と言えるだろうし、LEXUS DESIGN AWARD側から見ても価値のある人材になっているだろうと感じる。それは手前味噌ながら作品の良し悪しもあるとは思うが、作品以外で依頼されたことを真摯に、丁寧にこなしてきた結果だと考えている。

しかし、現在のところ、受賞した作品「MASS PRODUCTION TO UNIQUE ITEMS」が直接的にビジネスになったり、商品が売れたりしているわけではないのだ。


【2】コンペティション受賞によって起こった“広がり”

ここまで読んでくださった方は、コンペ受賞による「恩恵」が大きいように感じているかもしれないが、そうハッキリ言い切れるものではない。しかし、受賞+その後の自身の活動が加味されることで、

・目に見える“広がり”
・目に見えにくい“広がり”

があるのではないか、と僕は感じている。順に紹介をしたい。


目に見える“広がり”

僕は、25歳で独立し、個人事業主になってから多様な分野でのコンペティションで受賞してきた。代表的なものは以下だ。

・LEXUS DESIGN AWARD 2017 PANEL WINNER
・Under 35 Architects exhibition 2016 選出
・横浜アートコンペティション2015 入選
・日本建築学会近畿支部都市計画部会主催 続々現場主義 特別賞
・愛知建築士会名古屋北支部建築コンクールにて古谷誠章賞 受賞
・第4回建築コンクール佳作 受賞
・古湯温泉ONCRIアートコンペ「トコノマノコト」 入賞
・第6回建築コンクール審査員賞(江尻憲泰賞) 受賞
・Art in the office CCC award 入選
・第24回・25回紙わざ大賞 入選
・コニカミノルタ主催ソーシャルデザインアワード2016「プロジェクト賞」

建築、デザイン、アート、社会問題に至るまで分野は多岐に渡る。僕にとってコンペティションは「仕事以外で生まれてしまう発想を世に出す機会」として捉えていたこともあり、それが仕事になるだろう、みたいな期待は全くなかったし、実際に仕事になることはほとんどなかったというのが事実だ

しかし、コンペティションをきっかけに、作品を見た若い世代(学生や20代〜30代の建築家)に発見され、卒業設計展覧会の審査員を務める機会をいただいた。

Diploma×KYOTO'20(Day3)

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これはほぼボランティア(交通費と宿泊費はもらえる)で、仕事とは意味合いが違うかもしれない。しかし、元々学生や若い世代に何かしたいという思いが強かったことから、こうした「目に見える“広がり”」の機会を得れたことは大変嬉しいことであった。


目に見えない“広がり”

当たり前のことだが、僕はコンペティションだけに取り組んできたわけではない。組織やプロジェクトを立ち上げたり、企業・個人コンサルティング、プロダクト制作など分野を問わず幅広く仕事をしてきている。

その中でLEXUS DESIGN AWARD受賞以降、特に印象に残っている体験がある。それはクライアントや関係者から言われるこの言葉だ。

「YouTube(HP)を見ていたら、竹鼻さんが出ていらっしゃって、驚きました!」


映るのは一瞬なのだが、2017年にこの動画が公開された頃からそう言われるようになった。仕事相手のことを事前に調べることはよくあることだと思うが、こうした出演の機会によって、仕事相手側に意図せず「目に見えない信頼」ポイントがオンされていると感じることがある。仕事の初動期に、お互いの信頼関係を構築することはとても重要であり、その部分で「目に見えない“広がり”」の価値を感じることがある。

しかし、それは初期のきっかけに過ぎないとも感じている。その後、良い仕事関係を継続させていくためには、コンペ受賞の経験だけではなく、常に自身が成長し、挑戦し続けることが大切だと感じている。


【3】意義があると感じるコンペティション紹介

さて、ここまで僕の経験を踏まえ、フラットな気持ちで「コンペティションの価値」を紹介してきたつもりだ。僕自身は、コンペティションを受賞できたとて、すぐに直接的に大きな仕事につながるといった経験はしてこなかったが、漢方薬のように様々な場所でその価値を感じる機会はあったことを、お伝えできればと思っている。

一方で、コンペティションをきっかけに世界に羽ばたいたり、有名になった人たちも沢山存在する。自分が知っている限りではあるが、重要で価値あるコンペティションもここで少しだけ紹介したい。



VOCA展

受賞をきっかけに大学の准教授になられた方もいる。


文化庁メディア芸術祭 - JAPAN MEDIA ARTS FESTIVAL

https://j-mediaarts.jp

束芋さんなど多くの作家を輩出している。


KOKUYO DESIGN AWARD

日本発信の国際コンペで、作品が世界でも評価されている。


CREATIVE HACK AWARD

次世代の実力者が出てきている新しいコンペティション。


空間デザイン・コンペティション

社会人から学生までが参加する建築コンペティション。日本を牽引する建築家が多く参加している。


サンスター文具 文房具アイデアコンテスト

審査員にプロから芸能人まで多様な価値観で判断してもらえる珍しいコンペティション。


TOKYO MIDTOWN AWARD デザインコンペ

日本を代表するデザインコンペティションの一つ。


キヤノンフォトコンテスト

出展数が1万を超える歴史あるフォトコンテスト。


SHACHIHATA New Product Design Competition

印鑑はなくなりつつあると言われながらも、1000を超える作品が出展されるハンコの価値を多様に捉える価値あるコンペティション。


六甲ミーツ・アート 芸術散歩

地方のコンペティションとしては価値のあるアートコンペティション。


富山デザインコンペティション

プロダクトデザイン出身者であれば誰でも憧れるようなコンペティション。


紙わざ大賞

大人から子どもまで参加でき、受賞者も多い。受賞者は美術館などで展示会に参加できる。



【4】挑戦するときに気をつけるべきコンペティション

この記事を読んでいる方の中には、これからコンペに挑戦しようと思っている方も多いと思う。だからこそ、全てのコンペティションに意味があるかと言われたら決してそうではないし、悲しいかな、挑戦して意味があったと思えるコンペティションの方が実は少ない、と感じてきたことも併せてお伝えしておきたい。

例えば、あるホテルのコンペ事務局から参加依頼が来た時、条件が以下だった。

・入り口ホールに置くためのアート作品
・提出までに時間がない
・制作品や運搬費などは自費
・勝っても負けても提出作品の著作権はホテル側が持つ
・賞金はなし
・あなたの実績になる

誰でも分かると思うが、このようなコンペティションに参加する意味は少ないし、作品や時間が消費されることの方が多い。でもこのようなコンペティションが多いことも事実だ。だから僕はいつも日本最大級のコンテストサイト登竜門を見てコンペティションを選んではいるが、しっかり自分で責任を持って選ばないと、かなり大変なことになることも多いと感じている。

当初紹介したLEXUS DESIGN AWARDは、受賞時の単発的な価値だけに止まらず、さまざまな価値の広がりを感じることができる、めずらしいコンペティションであると感じている。今は開催が難しいが、以前は受賞者や事務局の皆様との交流会なども開催されていた。このように、過去受賞者の体験や情報を得やすいコンペティションは参加する価値のあるものと判断してもいいかもしれない。

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【5】結局、コンペティションは参加するべきか否か

コンペティションを他で例えるなら、ツイッターやFacebookなどの現代のSNS(10年前はもっと価値が高かったという意味)に似ているのかもしれない、と感じている。

取り組むことで誰かと繋がったり、自分のことを知ってもらえるチャンスもあるし、もしかしたら新しい仕事や立場を得られることもあるが、やり方や繋がり方を間違えれば危険さえある。そしてそれだけに時間を浪費しても、大きな価値にはなるとも限らない……

しかし、この記事を読んでいる人の中で、以下のような思いを持っている人は挑戦をお勧めしたいと思う。

・普段の仕事が上手くいかない
・もっと視野を広げたい
・仕事では使えない発想がある
・世界を感じてみたい
・何かに挑戦してみたい
・作品や発想に対して学校や会社以外の意見が欲しい
・少しお金が欲しい
・時間が余っている

僕は現在、仲間とコンペティションに挑戦しているが、その際の合言葉は「宝くじは買わないと当たらない」である(笑)

「コンペティションは世界を拓くのか」…この問いに全力でYESと答えるのは難しい。しかし「コンペティションに挑戦してみないと(自身の)世界は広がらない」とは強く感じている。


【参考】コンペティションに勝ちやすくなる資料

後に、これまでの経験をまとめたコンペティションに勝ちやすくなるための過去記事やマガジンを貼っておくので、気になる方は読んでみて欲しい。

コンペティション資料作りから物撮り、まちづくりまでをまとめたマガジン


LEXUS DESIGN AWARD 2021で提出した内容を全公開


最後に伝えたいこと


コンペティションは世界を拓くのか、という問いの答えは、真っ直ぐに言えば"あなた次第"だと思う。ただ、やはり買わない宝くじは当たらないと同じことが言えるだろうし、他にも僕自身コンペティションから学んだことが本当に多い。

伝えたいことをどのように見てもらうか、どう見せれば目を引くのか、審査員の好みはどれか、どんなスキルが必要なのか、作ったことがないけれどやってみよう、特にLEXUS DESIGN AWARDはテーマを自分の中から見つけなければならない、など、コンペティションに育ててもらったことがたくさんある。

勝つだけではない価値がコンペティションにはある

これは紛れもない事実であることも最後にお伝えしておきたい。


ここまで読んでいただきありがとうございました。





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