歩
8割の計算2割の親切で帯を締めては女の子する
不意にきた予定変更「へいきだよ」やさしくするのをやめられないね
浴衣姿が好きなことそれくらい優秀なスパイだから知ってる
人人人人がそれぞれ生きているビルに写った火の粉が照らす
列の中金魚が帯に泳いでる前の彼女はつまらなさそう
ハーメルン笛はないまま連れられてずるずる進むにんげんの群れ
目を逸らすあなたの左手が泳ぐ気付かないふりしててごめんね
楽しいと思ってるかな、うまくいくことがなくてもちゃんと楽しい?
階段を上がる一歩を案じすぎ 要介護者扱いをされてる
他の人じゃなくて私を見てるって私にわかるくらい見ないで
今どこかわからないでしょ君はここ初めてだもんね教えてあげる、
「花火ってはかなくないね」「はかなくはないね」はかなくなれないふたり
銃声に似ている空に打ち上がるリチウムカリウム熱に撃たれる
均等に散っていくのはなんでかな決まった運命だったのかなあ
花火って首疲れるし人多いテレビでいいし でも綺麗だね
枝垂れてくみたいなひかりが好きという君に頷くわからないけど
光より音が早くて恋よりも愛が早かったのを思い出す
きれいだね、きれいだねって言うのはさ、実は告白なんだよ、知ってた?
「見られたね、君の知り合いだったよね」「…知らん」(もっかい言って)「知らんよ」
りんご飴がりり齧った歯の白さじっとり暑いあかい透明
ほんのりと触れた腕からびりびりと沁みるじりじりと伝わってく
立ち並ぶ屋台の灯りこれいつもどこにしまわれてるの?ポケット?
湖に浮かぶボートを眺めてる 優しい誰かの息子と22時
ひっそりと湖面を見つめるふりをする家族に愛され育った人と
来年はここには来ない夏の夜花火を見るためここには来ない
夜 祭り屋台と花火の灯が消える 灯りがなくても歩いていける
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