見出し画像

ワクワクリベンジ読書のすすめ~『孤独の本質 つながりの力』ヴィヴェック・H・マーシー著~

アメリカ公衆衛生局。「国家の医師」として国民の健康を守ることを目的とした組織であり、著者はそこで第19代・21代の長官をされた方である。

著書は、様々な研究事例から「孤独」の脅威を指摘している。見過ごされてきた健康課題の根本に「孤独」があるとしている。例えば、孤独感が白血病の遺伝子の発現に変化をもたらすことにより、炎症が強まってウイルスへの抵抗力が低下する。また愛する人を失った悲しみ・孤独感による極度なストレスが心臓の機能に悪影響を与えることもあるという。さらには孤独感が強いと、睡眠の質が低下(睡眠が浅くなる)し疲労感やいら立ちが残ることになり、それが次なる健康被害の温床になる。

そのことにどう対処するか。著者は「孤独」と「つながり」の相関関係を見いだした。「依存症や暴力、職場や学校での意欲の低下、政治的分極化など、私たちが社会で直面している実に多くが、孤独やつながりの欠如によって悪化する」としている。 

つながりの必要性は今日では各国・各方面で認識されており、調査研究も数多くある。特に興味深いのは「関係性エネルギー」という考え方。社会的交流の中で生み出される(or奪われる)感情的なエネルギーのことであり、人とのポジティブな強いつながりが感情的に気分をよくするとともに、思考が明確になり記憶力や認知能力が向上するということを意味している。      その結果として、自己肯定感や自己効力感、自己信頼感が高まり、いわゆる生活の質(QOL)の向上がはかられるということなのだろう。もはやそこには健康課題という言葉が疎遠であることはいうまでもない。

著者は執筆の過程で学んだ教訓の中から、将来にわたって社会を癒すための4つの戦略を提案している。社会的なつながりを強化することによってコミュニティを強固なものとし、お互いを守っていくためのメッセージであると考える。
①  毎日愛する人と時間を過ごす。毎日少なくとも15分は大切な人とのつながりに時間を割こう
②  お互い、目の前の相手に集中しよう。アイコンタクトをして、心から耳を傾けよう
③  ひとりの状態を受け入れよう。強いつながりの第一歩は自分自身とのつながりを強めること
④  助け、助けられる。与えること、受け取ること。そのどちらも社会的な絆を強化してくれる
実はごく身近なところにそのヒントがあるようにも感じた。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?