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シンプルな野菜焼きで自然派をアピールしつつ、その陰でもったり餡の天津飯を食う。

また、親が出かけて不在だ。
なかなか不在にならないが、なるときは立て続けになるものだ。

ということで、また1人でランチを作るとする。
それを見越して、散歩がてら前日にスーパーに出かけたが、どうも作りたいものが見えてこず、何も買わずに帰宅する。

家にあるもので作ろう。
腕の見せ所である。


セロリ、パプリカ、ベーコン。これで一品いける。

おとといサルサを作った時のセロリ、パプリカが余っている。

そして、神戸の常宿「神戸クアハウス」の宿泊予約をしたときに付与されたコロナの地域旅クーポンで買った、旅とは無縁のベーコンブロックを短冊状に切って冷凍していたのを思い出す。

これらを自慢のタークの鉄フラでシンプルに炒めるとしよう。

ターク鉄フラでベーコンを焼いていく。油が跳ね回っている。

鉄フラを熱し、じゅうとベーコンを焼いていく。
カリカリにしたいところだが、油のブレイクダンスが激しすぎるので、少し焦げ目がついたところで細切りにしたセロリとパプリカを投入し、鎮静化させる。

鮮やかの一言である。やはり茶系ばかり食べていてはダメだな。

鮮やかである。これを食べれば元気になれそうな気がする。
素材を堪能するために、味付けはシンプルに塩とナンプラーにした。


ヘルシーマンと見せかけて、隣で餡を製造する。

野菜メインのヘルシーおかずを楽しもう、と見せかけたが、鮮やかなパプリカが踊るダンスホールの横から何かが沸き上がる音が聴こえてくる。

ふつふつふつふつ。
音が聴こえてくる方に目をやると、とろりとした熱泉が視界に入る。

小鍋に沸き上がる餡の泉。

水、めんつゆ、醤油、みりん、片栗粉でシンプルに作った餡だ。
火を通すにつれて濁りが晴れ、透明感を増していく。時間とともに餡が清楚な大人になっていく。

スプーンで少し掬って、小指にちょんづけして舐めてみる。
何かが足りないようなぼんやりした味がするが、家メシはキマりすぎてなくていい。あえて味を追加する気にもなれず、これでフィニッシュとする。

と思ったが、何か引っ掛かるものがあり、引き出しから砂糖を取り出し、断腸の思いでひとつまみしてパラパラとふりかけた。


卵布団を生み出す。

何を作るかというと、そうだ。天津飯だ。
冷蔵庫には野菜は他にもあったが、どれをどれくらい使って良いかの判別がつかず、使っても問題ないであろう卵と米で作れるものを思案した。

その時点で炒飯か天津あたりになるのだが、天津の方が作りたさで勝った。
ここは贅沢に卵3つ使ってやろう。

卵の滝。ここからはスピード勝負。

野菜炒めを作った鉄フラをざっと洗った後チンチンに熱し、多めのサラダ油をひく。
そこに塩コショウを少しだけして、さっくりと撹拌した卵を投入する。

肌感覚的には、鉄フラに着地する前からかたまり始める卵。
空気を含ませることを意識しながら菜箸で軽くかき混ぜ、すぐに引き上げた。

とろふわで悪くない。もうちょっと硬めで厚みのあるパターンも作ってみたい。

卵布団かけてもらい待ちの全裸米にそっとかけてやる。危険を知らせるはずの黄色も、卵となると柔らかく優しい色になる。
肌を重ね合わせて両者ともに嬉しそうだ。

成熟した餡をとろーりとかけていく。
もう皿の許容量は超えている。それでも微かな隙間を狙ってパックをするように纏わせていく。


でけた。完璧にでけた。
やはり誰か写真を撮ってくれる人がいないとダメだ。一番おいしい状態で食べたいから一秒たりとも遅れたくないのだ。

その結果、写真がおざなりになる。ジャーナリスト失格である。

もはや皿外に滴り落ちそうなとろ餡。間違いなくうまい。

ジャーナリズムに反旗を翻し、やけどを厭わずに、せっせと口に放り込んでいく。舌が罰を受けたから大目に見てほしい。

優しい。最近こんなにも優しさを感じたことがあっただろうか。
自分が作ったものが自分に一番優しい。そんなもんである。

クセつよ野菜ナンプラー炒め。シャキシャキでなかなかイケる。

色鮮やかなクセつよ野菜炒めもうまい。鉄フラでさっと炒めたからかシャキシャキでジューシーに仕上がっている。

今日もいっぱい食べた。
明日も明後日もいっぱい食べよう。

そんな太い人なりのTODOリストをGoogleカレンダーに刻み、明日の飯の夢を見てぐぅぐぅ眠るのである。

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