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どこに行っても物足りなかった私が見つける新しい風景

たくさんの情報の中から行く場所を自分で選んで出かけても、ちっとも楽しくないということが続いていました。

行列が絶えないお店
話題のニューオープンカフェ
絶対にはずさない絶景スポット

情報を見ている時は確かにときめいていたのに、行ってみるとなんだか楽しめない。

私は見ていた情報について疑いをかけました。

情報に踊らされている?
情報が盛ってあるから?
情報の選定ミス?

もしかしたら、これらの犯行かもしれないけれど証拠不十分で不起訴。

そんな時、マルセル・プルーストの言葉が私に手錠をかけました。

真の旅の発見は、
新しい風景を探すことではない。
新しい目で見ることなのだ。

マルセル・プルースト

私はのけぞりました。

ちっとも楽しくないのは、私がどこに行っても情報の答え合わせばかりをしていたから…

要するに犯人は自分自身だったのです。

私は自分に対しての罪を償うために、「新しい目で見る」練習をしていく決心をしました。

今回は東京の半蔵門でその練習をしました。

半蔵門の駅を降り立つと、ビルばかりのオフィス街という感じでしたが、少し歩けば皇居のお堀が見えてぱーっと視界が開けます。

しかし、その日は皇居は閉門していました。

これは「新しい目で見る」チャンスです。

今まで見てきた情報以外のことに目を向けて見つけた半蔵門のハイライトをどうぞお楽しみください。

空茶率ゼロ%のお店

まず、訪れたのは「甘味おかめ」というお店です。

ビルの一階にひっそりと奥ゆかしく存在する、おかめ本店。

中に入ると、一変。
広々として温もりのある内装が私を高揚させます。

豊富なメニューの中から赤飯おでんセットを頼んで食べていると、私はある違和感をいだきました。

ほうじ茶の湯呑みが常に満たされているのです。

湯呑みが空になる前に店員さんがつぎにきてくれるからです。

彼女たちはお茶つぎだけをしているわけでなく、注文を取り、配膳をし、精算をし、無駄のない動きでお客を急かすことなく回転させます。

日本語を勉強されている海外の方に「てきぱき」という言葉を説明したかったら、このお店は最適の環境だと言えるでしょう。

そんな気持ちの良い接客を感じながら、赤飯おでんセットを食べ終わるとホクホクと体が熱くなりました。

ふぅっと手のうちわであおぎながら、メニュー表を眺めます。

ソフトクリームがドーンと乗った、ぜんざい
いろんなフルーツが盛られた、あんみつ
シンプルな、みつ豆

どれも昔からある王道の甘味たちが並んでいます。

逡巡したのち、私は季節限定の苺あんみつを選びました。

お食事を頼むとハーフサイズも頼めるのがありがたいです。

ちょうど手のひらで覆えるくらいの器にこんもり盛られたあんこにいちごが映えていました。

あんこはとがりのない甘さで、サラサラ食べられます。

ひんやりとしたものが喉を通ると、すーっと熱が冷め、自分の体に初夏の風が吹くのを感じました。

もう一回だけほうじ茶をついでもらい、ゆっくり味わって店を後にしました。

葉桜と中華丼

上機嫌になった私は、そのまま外を散歩しました。

近くには皇居のお堀沿いに公園があります。

桜の木が満開のシーズンを終えて、新芽の緑が出始めていました。

これは何かに似ている。

透き通った黄緑とまだらに残るピンク色。

あ、これはこの前作った中華丼…!

春キャベツと紅白かまぼこを使った中華丼は、新緑と葉桜そのものでした。

この瞬間、レシピは「情報」から「いつでも取り出せる私の葉桜」として変化を遂げました。

モネの絵画

この日はあまりにも爽やかで、いつまででも歩きたい気分でした。

お堀の水面みなもはキラキラと光を跳ね返し、若葉はサンサンと光を吸収しています。

竹橋駅近くまで歩いて国立近代美術館にでも寄ってから帰ろうと思い、お堀の周りの街道を歩き始めました。

両面に緑がゆらゆらと揺れ、都会にいる感覚が薄れます。

皇居に入れる扉はことごとく閉まっていて、今日が閉門していることを知ります。

そうこうしているうちに目指していた美術館に辿りつき、まさかの休館日…

しかし、この日の私はそんなにがっかりはしませんでした。

歩き始めて最初に見た景色が、私の中にあるクロード・モネの絵画だったからです。

あれは、モネのポプラ並木…

画像情報がこの景色を通して私の記憶になり、スマホを見ずにいつでも思い浮かべることができます。

新しい目で見ると、そういうことが起こるのかもしれません。




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