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東証の市場再編がされると何が起こる?4つのポイント図解まとめ

チャーリーです。
1年間、ビジネス誌「THE21」で連載した内容を特別に公開許可いただいたので、1つずつ記事にすることにしました。

この記事では、東証市場再編について紹介します。

東証市場再編

東証一部に上場していても3割は時価総額が基準未満

東証市場再編で3つの市場になる

東京証券取引所(東証)は、2022年4月に、現在は4つある市場区分を3つに再編します。基本的には、一部上場企業は、主にグローバル企業向けのプライム市場に、二部やJASDAQスタンダードに上場している企業は、主に中堅企業向けのスタンダード市場に、JASDAQグロースやマザーズに上場している企業は、主に新興企業向けのグロース市場に移行します。

再編するのは、各市場の区分が曖昧であることが問題視されていたからです。

例えば、JASDAQグロースとマザーズは、歴史的な経緯から別の市場になっていますが、共に新興企業向けであることは変わりません。

一部に上場しているのに小粒だと言われてしまう企業が多数存在するのも問題となっています。理由は後述しますが、「時価総額250億円以上」という基準を満たしていない企業が約3割も存在するのです。

また、一部上場企業の4割以上で、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回っています。これは、会計上、企業が存続するよりも解散して純資産を株主に分配したほうがいいと市場からみなされていることを示します。

なかなか上場廃止にならないため、持続的に企業価値を上げる動機づけも不足します。それでも投資家からお金が入ってくるという、不健全な状態になっていると指摘されていました。

市場再編で企業の質が向上し、投資家にプラスの影響が

東証市場再編の主なポイントは4つあります。

東証市場再編のポイント

1つ目は、市場変更の基準を変えること。一部に上場するには時価総額が250億円以上必要なのに、二部やマザーズからの市場変更なら40億円で済んでいました。これが、時価総額の基準が満たせていない一部上場企業が増えてしまう原因になっていました。再編後は、一律で250億円以上が基準となるため、この問題が解消されます。

2つ目は、流通株式の定義変更です。これまでは企業間の持ち合い株が10%未満なら流通株式にカウントされていましたが、再編後は10%未満でもカウントされません。これにより、上場株の流動性が高まることが期待されます。

3つ目はガバナンスの強化です。例えば、プライム市場上場企業は、全取締役の3分の1以上を独立社外取締役にするよう求められます。

4つ目はTOPIX(東証株価指数)の定義変更です。これまでは一部上場の全銘柄が対象となっていましたが、再編後は、流動性の基準を満たしていれば、どの市場でも組み入れられます。逆に、プライムであっても、流動性が低ければ、TOPIXから外されます。

大きな再編なので経過措置が設けられるものの、これらの基準を満たせず、何らかの判断を迫られている企業が数多くあります。上場廃止や市場変更になれば、資金調達などの計画が狂い、従業員らにも影響がおよぶでしょう。

ただ、中長期的には、市場全体が適正化、最適化されていくと思います。また、投資家がより安全に株を売買できるようになることで、上場企業の企業価値の向上にもつながるでしょう。

図解:チャーリー
取材執筆:桃山透

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説明は以上です。

こちらの記事は、PHP研究所が発行しているビジネス誌「THE21」で2021年1月号から12月号まで連載していた「図解で深掘り!時事ワード」の内容を掲載したものです。本記事が掲載された号は以下です。

誌面に掲載するフォーマット上、図解は2枚ずつ掲載しています。

本来は2枚じゃなくもっと枚数をふやして図解すべき内容もあるなと思いつつ、誌面の制限に従い、いったん全て2枚ずつでまとめるフォーマットで揃えています。

今回、日をあける形で記事の掲載を許可いただいたので、少し時間が経過しているものもありますが、ご了承ください。また、記事中にもし間違いなどありましたら直しますので、教えていただけると嬉しいです。

これらのテーマについて記事にしてきました。

  • サステナビリティー・リンク・ボンド【公開済】

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  • インパクト加重会計【公開済】

  • オリンピックのビジネスモデル【公開済】

  • 東証市場再編【公開済】

なぜこれらのテーマなのか?と聞かれると、その時々で気になっているテーマだったから、ということで選定基準はかなり属人的です。

振り返ってみれば、大きな枠組みの変化や、面白い仕組み、取り上げるべきイシュー、そういったテーマを選んでいた気がします。もともとの連載のリクエストとしては、時事的な話題をなんらか図解して紹介してほしいということだったので、時事的であることだけ縛りがあります。

掲載した記事は以下のマガジンに入れていきますので、他の記事が気になる方はぜひフォローしてみてください。

この記事で、連載の公開はひとまず最後になります。ここまで読んでいただき、ありがとうございました!

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