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複雑な議論が絡む「選択的夫婦別姓」をどう整理立てていくか

チャーリーです。
1年間、ビジネス誌「THE21」で連載した内容を特別に公開許可いただいたので、1つずつ記事にすることにしました。

この記事では、複雑な議論が絡む「選択的夫婦別姓」をどう整理立てていくかについて書いています。

選択的夫婦別姓はどう分岐するか
夫婦がどちらの姓を選択するかの推移

選択的夫婦別姓

事実婚で夫婦別姓だと子供の姓はどうなるか?

2021年4月2日、自民党内で「氏制度のあり方に関するワーキングチーム」の初会合が開かれました。選択的夫婦別姓などについて議論するものです。

選択的夫婦別姓を法律で認めるべきかどうかという議論には、様々な論点が複雑に絡み合います。今回は、夫婦同姓と夫婦別姓では、どのような違いがあり、どこに論点が生じるのかを整理しました。それが、議論をするための第一歩だと思います。上の図解は、その整理をしたものです。

前提として、この図解は異性間のパートナーシップを元に作成していますが、同性間のパートナーシップを含む様々な家族の形は議論されるべきことだと考えています。

まず、最初の分岐です。現在の法律では、法律婚をする場合は夫婦同姓にしなければなりません。よく「籍を入れる」という表現をしますが、実際には、夫婦が法律婚をするときには、新たに戸籍を作ります。どちらかの戸籍にもう一人が入るわけではありません。その際、夫婦のどちらかの姓を選んで夫婦同姓になることが定められています。したがって、夫婦別姓にしたい場合は事実婚という選択になるのです。

法律婚と事実婚では、所得税や住民税の配偶者控除を受けられるかどうかなどの違いがあります。

その後、夫婦の間に子供が生まれた場合、夫婦別姓の事実婚だと、その子供は自動的に妻の姓になります。夫が共同親権を持てないからです。

夫の姓にしたければ、夫が子供を認知したうえで、さらに家庭裁判所への申し立てが必要です。

法律婚を選択した場合の次の分岐に注目してみます。

96%は夫の姓に変えている現状をどう考えるか?

法律婚を選択した夫婦がどちらの姓を選択しているかをデータで示したものが、下の図です。1975年には、98.8%が夫の姓に変えており、2015年には96.0%になっています。まだ夫の姓にすることが多い現状があります。この事実をどう見るか、というのは一つの論点になっています。

夫婦の同姓が義務化されたのは、1898年に民法が施行されたときです。これによって、「同じ戸籍に載っているのは同姓の家族」ということになりました。

このときに、基本的に代々長男が受け継ぐ「戸主」が家族に対して大きな権限を持つ「家制度」もできました。

家制度は1947年に廃止されましたが、同じ姓(ファミリーネーム)を持っているのが家族(ファミリー)だという家族観は今も根強く、選択的夫婦別姓に反対する人たちの主な理由の一つになっています。

賛成派の主な理由は、姓が継続しないとアイデンティティーを失う、結婚前の業績が本人と紐づかなくなってキャリアが断絶してしまう、役所への届出やクレジットカードの名義変更などに手間がかかる、といったものです。

通称姓を使う選択肢も検討されていますが、まだ通称姓を使えない場や使うことに説明が必要になるなどの課題があります。

選択的夫婦別姓について注目が集まる中で、いまどの分岐の話をしているのか論点を明確にし、これまでの歴史を大切にしながらも時代に合わせた柔軟な家族観について議論がされることを期待しています。

図解:チャーリー
取材執筆:桃山透

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説明は以上です。

こちらの記事は、PHP研究所が発行しているビジネス誌「THE21」で2021年1月号から12月号まで連載していた「図解で深掘り!時事ワード」の内容を掲載したものです。本記事が掲載された号は以下です。

誌面に掲載するフォーマット上、図解は2枚ずつ掲載しています。

本来は2枚じゃなくもっと枚数をふやして図解すべき内容もあるなと思いつつ、誌面の制限に従い、いったん全て2枚ずつでまとめるフォーマットで揃えています。

今回、日をあける形で記事の掲載を許可いただいたので、少し時間が経過しているものもありますが、ご了承ください。また、記事中にもし間違いなどありましたら直しますので、教えていただけると嬉しいです。

これらのテーマについて記事にしていきます。

  • サステナビリティー・リンク・ボンド【公開済】

  • TESLAの炭素クレジット【公開済】

  • パリ協定【公開済】

  • COVAXファシリティ【公開済】

  • ロングターム証券取引所【公開済】

  • 選択的夫婦別姓【公開済】

  • 規制のサンドボックス

  • 10兆円大学ファンド

  • インパクト加重会計

  • オリンピックのビジネスモデル

  • 東証市場再編

なぜこれらのテーマなのか?と聞かれると、その時々で気になっているテーマだったから、ということで選定基準はかなり属人的です。

振り返ってみれば、大きな枠組みの変化や、面白い仕組み、取り上げるべきイシュー、そういったテーマを選んでいた気がします。もともとの連載のリクエストとしては、時事的な話題をなんらか図解して紹介してほしいということだったので、時事的であることだけ縛りがあります。

掲載した記事は以下のマガジンに入れていきますので、今後の記事が気になる方はぜひフォローしてみてください。

選択的夫婦別姓については本記事に書いたことだけでは到底語り切れないため、また別途記事にしたいと考えています。

以上です。

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