見出し画像

限定的に規制を緩めることで実証実験ができる政策「規制のサンドボックス」

チャーリーです。
1年間、ビジネス誌「THE21」で連載した内容を特別に公開許可いただいたので、1つずつ記事にすることにしました。

この記事では、限定的に規制を緩めることで実証実験ができる政策「規制のサンドボックス」について紹介します。

規制のサンドボックスとは
規制のサンドボックスの概要図

規制のサンドボックス

規制緩和のための実証実験が規制でできない“負のループ”

革新的な技術が次々と誕生していますが、それらを実用化するには、実証実験を行なってデータを蓄積することが必要です。ところが法律や規制が足かせとなり、実証実験ができないケースが多くありました。

これでは事業者が必要なデータを得ることができません。規制当局も、データがなければリスクを測ることができず、規制改革に踏み切れないという、負のループが生じていました。このままでは新しい事業の誕生の妨げになり、日本の競争力が落ちてしまいます。

そこで、2018年6月、実証環境を提供し技術革新の加速を促すことを目的として、内閣官房主導でスタートしたのが「規制のサンドボックス」です。

規制のサンドボックスは、2014年に英国でフィンテックの技術革新を目的に初めて導入され、日本では成長戦略の一環として、国家戦略特区法や構造改革特区法を改正して導入されました。

この制度により、事業者は規制当局に申請して許可されれば、期間や場所、参加者などの条件つきで実証実験が行なえるようになりました。

事業者は必要なデータを蓄積し、規制当局に提出することが可能となり、規制当局はそれを規制改革に活かすことができるようになったのです。

例えば2019年には、Luupという企業がこの制度を利用して、電動キックボードの実証実験を横浜国立大学のキャンパス内で約3カ月間行ないました。それを踏まえて、2021年4月に、政府の特例措置のもとで、電動キックボードのシェアサービスを開始しています。

一元的窓口も設置。まだ知らない事業者も多い?

2つめの図解は、規制のサンドボックスの概要を「対象者」「政策」「実施者」の3段に分けて整理したものです。

真ん中の段にあるように、政策には目的と手段があります。規制のサンドボックスの目的は、実証データを蓄積すること。手段は、事業者に対して、地域や期間を限定して規制を緩和することです。

対象者である事業者がこの制度を利用する場合、計画の届け出を主務大臣(事業所管大臣・規制所管大臣)に対して行ないます。申請に際しては、内閣官房に設けられた一元的窓口に相談することができます。

「実験参加者」とは、事業者の実証実験に同意し、協力してくれる人たちのことです。

実施者である各省庁は、蓄積された実証データを、全国的な規制見直しの判断材料とします。判断に際しては、第三者委員会である革新的事業活動評価委員会に見解を送付して意見をもらい、それも参考にします。

今のところ、この制度で認定されたプロジェクトの数は少ないのですが、導入されてから数年しか経っていないので、まだ知らない事業者が多いからかもしれません。より多くの事業者に知っていただき、積極的に利用していただきたいと思います。

図解:チャーリー
取材執筆:桃山透

・・・

説明は以上です。

こちらの記事は、PHP研究所が発行しているビジネス誌「THE21」で2021年1月号から12月号まで連載していた「図解で深掘り!時事ワード」の内容を掲載したものです。本記事が掲載された号は以下です。

誌面に掲載するフォーマット上、図解は2枚ずつ掲載しています。

本来は2枚じゃなくもっと枚数をふやして図解すべき内容もあるなと思いつつ、誌面の制限に従い、いったん全て2枚ずつでまとめるフォーマットで揃えています。

今回、日をあける形で記事の掲載を許可いただいたので、少し時間が経過しているものもありますが、ご了承ください。また、記事中にもし間違いなどありましたら直しますので、教えていただけると嬉しいです。

これらのテーマについて記事にしていきます。

  • サステナビリティー・リンク・ボンド【公開済】

  • TESLAの炭素クレジット【公開済】

  • パリ協定【公開済】

  • COVAXファシリティ【公開済】

  • ロングターム証券取引所【公開済】

  • 選択的夫婦別姓【公開済】

  • 規制のサンドボックス【公開済】

  • 10兆円大学ファンド

  • インパクト加重会計

  • オリンピックのビジネスモデル

  • 東証市場再編

なぜこれらのテーマなのか?と聞かれると、その時々で気になっているテーマだったから、ということで選定基準はかなり属人的です。

振り返ってみれば、大きな枠組みの変化や、面白い仕組み、取り上げるべきイシュー、そういったテーマを選んでいた気がします。もともとの連載のリクエストとしては、時事的な話題をなんらか図解して紹介してほしいということだったので、時事的であることだけ縛りがあります。

掲載した記事は以下のマガジンに入れていきますので、今後の記事が気になる方はぜひフォローしてみてください。

また、本記事で紹介した図解は、政策図解というフレームワークに沿ったものを使っています。政策図解について気になる方はこちらのマガジンをぜひご覧ください。

以上です。

読んでいただきありがとうございます。図解総研の活動資金に使わせていただきます!