見出し画像

デザインの仕事で初心者がやりがちなNG行為3選

元WEBデザイナーが、デザインの仕事についてつらつらと書いていきます。今回はデザインを仕事にするうえで知っておかなければならない常識、ルール、マナーの一部について語ります。職業訓練・スクールでデザインを学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。


プロのデザイナーとして知っておかなければならない常識、ルール、マナー等の不文律が多数存在する

デザイナーとして仕事をするうえで、デザイン技術、理論以外にも知らなければならない、業界に存在する常識、ルール、マナーといったものが多数存在しています。

制作会社や広告代理店等に所属して、ある程度の規模・知名度のある企業の案件をこなしていると自然と身につくのですが、意外な事にネット上でもこのような情報が出回る事は少ないようです。

業界経験が短い、あるいはスクール卒業後すぐ、独学で学んですぐにフリーランスとしてデザイナーを始めた人や、クリエイティブに詳しくないクライアント、個人事業主をメインに仕事をしている人の中には、これらの業界の常識、プロのデザイナーとして知っておかなければならない常識が欠けている人が見受けられます。

クラウドソーシング等で実績、経験を積んでから、クライアント直請け等で高額案件を受注したいと考える人は多い様ですが、高額案件の大半はこのような業界に横たわる不文律的な常識、ルール、マナーを守ったうえで仕事をしていかなければなりません。知らないでやってしまうと、色々トラブルになりますので注意が必要です。

デザイン初心者がやりがちなNG行為3選

・企業ロゴ、製品ロゴを独断で改変する

デザインの仕事、特にクライアントワークにおいて、企業ロゴや製品ロゴ、特にCI、VI、BI等と呼ばれ、単なる「ロゴマーク」ではなくアイデンティティという位置づけでデザインシステムの根幹に設定されているロゴの扱いは

「神聖ニシテ侵スヘカラス」

であり、ロゴに手を加える事は一切禁止です。

大手企業ロゴは大抵の場合ガイドラインが設定されていますので、そこに記載されているルールに沿って利用する事になります。そのようなガイドライン、ルールの存在を知らないクライアント側の窓口担当者も多いので、他社ロゴを扱う時は注意が必要です。

ガイドラインが設定されていなくても、基本的にどのようなロゴでも下記のような扱いはNGになる事が多い、あるいはマナーの悪い行為とみなされるので、避けた方が良いでしょう。

  • ロゴの形状、ロゴタイプの文字組み、色等を改変する

  • 視認性を上げるために縁取り、袋文字にする

  • 縦横の比率を変更する

  • ロゴの背景に色、柄を敷く

  • 反転、回転させる

  • 許可なくシンボルマークとロゴタイプを分けて使う

  • 保護領域(アイソレーション)を守らず、ロゴ以外の要素を近接あるいはロゴに被せる

  • ロゴを柄模様等の装飾要素として用いる(ヴィトンがやってるからOK、にはなりません。企業ロゴは特に。)

・商品画像、モデルに文字等の要素が被る

商品画像、モデル画像に文字などの要素が被るデザインは、バナー等、狭い面積に沢山の掲載要素があるときにやってしまいがちな行為ですが、クライアント側がクリエイティブにあまり詳しくないとOKがでてしまう事が多いです。

ある程度以上の知名度、規模のある企業案件では商品画像に文字等の要素が被るとNGになる、厳しい場合はロゴと同じく、商品画像周辺に十分な余白をとって、保護領域を設けなければならない事があります。

中小企業、ベンチャー、スタートアップ企業でも、ブランディングに力を入れていたり、クリエイティブに詳しい担当者だったりすると、商品画像に文字等の要素が被るのはNGを出される事があります。

また、広告費用に巨額を投資できる企業はモデルに芸能人や有名人を起用する事が多くなります。その場合、モデルの画像に文字等の要素が被るのはNGです。特に明確なルールがあるわけではありませんが、顔と髪周りは要素を被せてはならない保護領域だと考えておいた方が無難でしょう。

・提供された画像素材の加工、反転、回転

普段からフリー素材、購入素材ばかりを使ってデザインをしているデザイナーは、デザイン素材はどのような加工を施しても問題ないと考えてしまいがちですが、クライアントから提供される素材には、加工に関して制限が設けられている事があるので注意が必要です。

デザイナーがやりがちな加工の中でも、特に下記に挙げるような加工はNGとなる場合が多いです。

  • 商品画像、モデル画像の左右反転、縦横比の変更

  • 商品画像、モデル画像の回転

  • 過度な色調補正、色味の変更

  • フィルタ処理(ぼかし含む)

拡大縮小、トリミング、切り抜き、微細な色調補正等はOKであることが多いですが、場合によっては縮小以外の加工・調整は一切禁止という素材もあります。また、広告代理店等を経由している案件は、アートディレクター等から素材の扱い、加工に対して指示がある場合も多いので、その場合は指示通りに仕事をする事になります。

大手企業の案件では、商品写真素材等、デザインに必要な素材は撮影の段階からアートディレクターのコントロール下にあります。また、撮影された画像をフォトグラファー自身が補正を加えていたりするので、色調の補正等は必要ない場合もあります。

このような提供素材を使ったデザインは、デザイナーが自由にできる部分は意外と少ないので、楽な仕事に思えるかもしれませんが、自由度が低く制限された条件下で、微に入り細を穿つような仕事、最大限のパフォーマンスを求められるため、なかなか大変です。

また、芸能人、有名人の画像の使用については、芸能事務所や本人から利用規定、NG行為等が、クライアントを経由して通達される事があります。また、成果物に関して事務所チェック、本人チェックが入る事がよくあります。デザイナーが好き勝手加工できるものではないので、扱いには細心の注意が必要な素材でもあります。

企業のマスコットキャラクター、商品としてのキャラクターについても、ロゴ同様に「スタイルブック」と呼ばれるルールブックが存在し、そこに記載されている事以外の利用方法、改変はNGとなります。

デザイナーとしての「常識」を知らないままでは高単価案件から遠ざかる

クラウドソーシング界隈にあふれている単価の安い案件、クライアントがクリエイティブに詳しくない素人案件、副業程度で務まるような単純な案件だけを請負うのであれば、このような常識が無くても務まる事もあると思います。

しかし、ある程度以上の質の仕事、単価の高い案件になってくると、このようなクリエイティブの常識、ルール、マナーは「プロとして知っていて当然」という前提で動いている事が多くあります。

デザイン初心者ですぐにフリーランスになったデザイナーが思うように案件になかなかありつけない、成り上がりをもくろんでも一定水準より上の案件にたどり着けないのは、職務遂行能力、責任能力の低さ、縁故や伝手の無さだけでなく、このような常識、ルール、マナーを知らないことも、理由の一因としてあります。

これはデザイナーに限った話ではなく、コーダー、エンジニア界隈でもそれぞれにその業界の常識、ルール、マナーが存在します。それを知らないうちは案件から遠ざけられる傾向は、コーダー、エンジニア界隈でも同様にあります。

デザイナーとしての常識の有無は、ポートフォリオに掲載されている成果物を見れば大体わかります。常識を欠いた成果物を臆面もなく掲載していたのでは、たとえその案件のクライアントがそれで良しとしていたとしても、他のクライアントに好印象を与えるとは限りませんし、下手をすると高単価案件獲得のチャンスを逃す原因になりかねません。

デザイン初心者のうち、本格的なクリエイティブの仕事に関わりたいと考えている人は、そのキャリアの出来るだけ早い段階でクリエイティブの世界の常識が身に付くような環境、案件に接するように心がけましょう。常識のない仕事の積み重ねは、拙い仕事の積み重ね同様に、自身の評価に影響を及ぼし、自身のキャリアの足枷となる事を覚えておきましょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?