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デザインを仕事にするなら熱意だけでなく冷徹さも必要、という話

元WEBデザイナーが、デザインについてつらつらと書いていきます。今回はデザインを仕事にするうえでは熱意だけでなく冷徹さも必要、という事について語ります。職業訓練・スクールでWEBデザインを学んでいる人、就活中の人に読んでいただければ幸いです。


「作る事」が目的ではない事を見失わない

デザインの目的はただ単に「モノを作る」ことではありません。モノの時代からコトの時代へ変化したと言われる昨今は特に顕著になっています。

しかし、デザイナーの中には「モノを作ることが目的」になってしまっている人も結構な数います。特にデザイナーになった動機、理由が「モノをつくるのが好き」である人に多くみられる傾向です。

また、デザインする目的の根底に「自己表現」「自己顕示」の欲求があるデザイナーも、「モノを作ることが目的」になりがちです。

デザインの仕事において「モノを作る事」「デザインする事」はあくまでビジネスのための手段であること、「デザインの目的は何なのか」を、常に忘れないように気を付けましょう。

「作るのが楽しい」に要注意

「作るの楽し~!」って言っている時は、作る事に没頭していて客観性や冷静さを損なっている、ある意味バーサク状態と言えます。

作るのが楽しい気持ち、作る事に対する熱意があるのは悪い事ではないのですが、思いばかりが先走って暴走&空回りする事もよくあります。

鳥嶋和彦さんが週刊少年ジャンプの編集長時代に「ONE PEACE」の連載開始に否定的だったというエピソードがありますが、その理由が尾田栄一郎先生の「熱意はあるけど筆が滑りがち」な点と語っています。

デザインの仕事には尾田先生のような熱意も必要ですが、クライアントワークでデザインする際は、鳥嶋さんのような俯瞰的で冷徹な視点とセットでなければ、仕事として成り立ちません。

デザインもアートも冷徹なるもの

アーティストのジャコメッティは、自身が脱ぎ捨てた靴下を見て、靴下が存在する空間に対して靴下の位置の関係性が正しいかどうかで数日悩んで夜も眠れない、2mの塑像を作るつもりだったが、自問自答と修正を繰り返した結果、マッチ箱に収まるサイズになってしまった、等のエピソードをもっています。

ジャコメッティのエピソードは相当極端な話ではありますが、デザイナーもアーティストも制作する際には常に「これでいいのか?」という自問自答を繰り返しています。デザイナーもアーティストも、熱に浮かされたかのように脇目も振らず制作に没頭・邁進しているように見えて、実際は客観的、冷徹に自身の行動の振返りを度々行っている人が多数派です。

作る事が仕事として当たり前と感じられるようになると落ち着いて行動できるようになりますが、それまでは作る事が楽しい気持ち、溢れる熱意に振り回されないように注意が必要です。

気持ちの暴走、熱意の空回りは初心者、若手デザイナーにはよくある事ですし、皆が一度は経験する事です。デザインを仕事にしたい人、デザイナーになりたい人は、自身の行動を常に客観的、批判的に観察する冷徹さを、まずは身に着けましょう。

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