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パニックで職員を叩いた利用者に対してする関わりは?(支援力UPクイズ5)

Twitterで実施した【支援力UPクイズ5】の解説をしていきたいと思います。
始まった直後、1や4が伸びました。
おもしろいなあと思いつつ見ていました。

これが現実。
みなさん、きっと、わざと間違ってはいないでしょうから、現場では、
こういう関わりがあるということでしょうね。
でも、間違いが3つあるので、解説をしていきましょう!

まず、設問で、「どんな関わりをしていますか?」にしたのは、明らかに不適切な関わりが2つあったからです。どう見ても支援ではないので、「どんな支援をしていますか?」には、しませんでした。

1.いけないことをしたので、注意して謝らせる

叩いたので、それはいけないことという認識だと思いますが、そもそもパニックは、その人その人で様々な形があり、叩くのほかに大声を出したり、物を壊したり、自分を傷つけることなどもあります。

パニックには原因があり、その原因に対し、不安だった・不快だったなどの表現になります。

ですから、この場合、叩くという行動そのものは、いけないことではありますが、その方法でしか、表現ができない人に対して注意をしても、その人には理解ができない可能性があります。つまり、不安や不快を表現した人に注意をするというおかしな構図になり、注意をすることでその行動がなくなることではありません。

また、怒り方によっては虐待にもなりますので、注意という方法ではなく、まずは、その人の困っていることの表現だと認識をしていきましょう。

そして、不安なことや嫌なことがあったのだということが、他者を傷つけるパニックではなく、他の表現方法でできるようになった人もいます。
コミュニケーションの方法は、より正しい方法に変えられる人もいますので、「訴えの仕方を変える支援」をしていきましょう。

さらには、不安や不快を取り除く支援もしていきましょう。

2.痛みをわからせるために、同じくらいの力で叩く

これもありがちな考え方です。
痛みをわからせることが解決につながり、もうやらなくなるだろうという目論見かもしれませんが、これは、虐待に当たります。

残念なことに1%の人がこれを選んでいます。
ということはそういう気持ちで関わり、それが正しいと思って、ご自身が虐待をしていることにも気づいていらっしゃらないと思われます。
また、あなたの方法を見ている他の人が、正しい方法だと勘違いなさることにもつながります。
施設・事業所として、絶対にやり返さない方向で話し合い、なくしていきましょう。

ただ、今まではパニックを起こす人に対して、効果的な支援の方法がわからなかったのだと思います。もっと良い方法がありますので学びましょう。

また、この数字には、改めて着目したいところです。
支援者の1%くらいの人は、この方法を頼っている可能性があると仮定できます。つまり、虐待は実存するということです。しかも知らずに行われている可能性が大きいのです。
そして、あなたがしていなくても、どこかで隠れて虐待につながっている可能性があります。あなたの施設・事業所での虐待をさせないことも重要です。

障害者虐待は、知的障害者に一番多く、さらに、その中でも、行動障害がある人に多くなっています。現実を認識していきましょう。

3.パニックの原因に目を向け、不安・不快を省く

これが正解です。

1の解説でも書きましたが、何らかの原因で、パニックが起きます。
ですから、表面的なパニックの内容に目を向けるよりも、原因は何か?に目を向ける癖をつけてほしいものです。

不安・不快など、その人が困った状態ですので、何に困っているのかを確認して、そのことを取り除けば、パニックにつながらないことになります。

そして、大切なのはここからです。

パニックになる原因がわかったとすれば、事前支援につなげましょう。
パニックになった後の支援ではなく、パニックにならないような支援に目を向けてみることです。そこが一番大切な「支援」となります。

職員としてできることはたくさんあります。
パニックになったご本人は、常に不安・不快の中で暮らしていらっしゃいますので、できるだけ、その人の不安や不快を事前に取り除いたり、不安や不快の対処方法をその人ができるようにしておくことです。

4.その人が叩かない職員だけに、支援を任せる

これの得票数は一定ありましたね。
でも、正しくはないです。
こうしたい気持ちはわかりますが。
特に親御さんは、できる職員に任せたいと思われることでしょう。
でも、集団の中で起きていることですから、他の利用者がたくさんおり、その人だけの世界ではありません。物事は長い目で見ていきましょう。

さて、これをすると「職人芸」の域となり、誰もができる支援ではなくなります。それに、パニックは起きている状態が続くというイメージにもなります。つまり問題は解決していませんし、さらなる問題が待ち構えていることになります。

施設・事業所は大勢の利用者の人たちに対して、支援をする場所ですので、その一人の職員だけに任せるとどうなるか?
例えば、私は55名定員の施設で28人が自閉症の人だった施設にいたことがあります。
当時は職員が9名しかいませんでしたから、「叩かない職員」となると、28人に対してどういう支援になるか想像してほしいのです。

全ての職員が、スキルを身に着けておく必要があります。
誰かに任せれば身につくものではありません。なぜなら、任せている間は、あなたや他の職員は、その機会を作らないことになるからです。

自閉症の人は、不安で不快なことを感じやすい人です。
その人の関わる全ての職員がそのことを知り、そうならないような支援(事前支援)をするのが、その人への配慮であり、支援の本質です。

もし、叩かない職員が異動や退職になったら、どうしますか?質の継続は、できますか?

ひとりに任せるのが支援ではなく、施設・事業所として関わっていくことが支援の前提であると認識してください。

おわりに

今回、コメント付きで回答をお寄せくださった方もいらっしゃいました。
ありがとうございます。
やはり、関心の高さも見えましたが、先ほども書きましたように、虐待が発覚するという大きな課題が見つかってよかったと思っています。

自閉症の人が虐待を受ける確率は高いのは、このようなパニックになった時に職員が接近するからです。何とかしよう、パニックを止めようと思う気持ちが強く、それをやるのは自分しかいないという気持ちが強い、虐待になる確率も高くなるという状況です。

まず、その人が何に不安があり何が不快なのかを認識し、それを解決する際に、どこに障害があるか?に目を向けましょう。
私たち支援者は、障害を軽減することも役割なのです。
何を支援するのか?を事業所として考え実行していけば、パニックになることは減り、パニックがゼロになる人もいるのです。

また、パニックになった時は、むやみやたらに関わらないことも必要で、その人にとって心地よい関わり方や見守り支援という方法もあることを学びましょう。

アンケートにお答えいただきありがとうございました。


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