見出し画像

映画「落下の解剖学」感想 パルムドールは伊達じゃない!手に汗握る、法廷ドラマ史上に残る緊迫の傑作!

どうも。

今日もオスカー候補作の映画レビュー行きましょう。これです!

はい。「落下の解剖学」。これもオスカーでは5部門にノミネートされた映画ですけど、もう、実績はそれ以上。これに関しては後で語りますけど。

果たして、どんな映画なのでしょうか。早速あらすじから見てみましょう。


舞台はフランスの人の少ない片田舎。散歩していた12歳の体の不自由な少年
ダニエルが盲導犬の散歩から戻ってみると、

彼の父親サミュエルが2階から落ちて亡くなっていました。

その時、家には作家のサンドラ(ザンドラ・ヒューラー)が来客中で話をしていました。彼女は2階でスティールパンの南国調音楽を爆音で聴いていたサミュエルに「音下げてくれない?」と注意をしていましたが、それ以外の詳しいことはわかりません。

警察がサンドラの家に頻繁に訪れ現場検証も行われます。そこに弁護担当のヴァンサン(スワン・アルラウド)も訪れますが、当初彼はサンドラがサミュエルを殺した、きっと法廷も事故死は信じないであろうとの前提で弁護しようとしますが、サンドラは驚き、「私は無実だ。彼が2階から事故で落ちたのだ」と強く主張します。

 ここから、話は少しずつ色々なことが明かされていきます。サンドラはドイツ人でサミュルはイギリス人。ともに文学を志していてロンドンで生活。しかし、サミュエルの提案でフランスの片田舎で生活するようになっていました。

ただ、夫婦の生活は楽ではありませんでした。サンドラは慣れないフランス語での生活に苦しみ、さらに幼少時の交通事故が原因で息子ダニエルが障害持ちになったことへの自責の念を抱えていました。

さらにサミュエルは鬱を抱えており、抗鬱剤を飲む生活を続け、作業中には2階にこもって一人大音量で音楽を聴きながら作業することもわかってきました。

そして裁判が始まります。サンドラは慣れないフランス語に悪戦苦闘しながら必死に自己を弁護。彼女を犯人と断定する検察側の極めて厳しい追及、そしてサンドラの熱意にほだされ懸命に弁護を行うヴァンサン。そして、裁判の様子を心を痛めながら見つめるダニエル。全てが緊迫した空気に包まれ・・・。

・・と、ここまでにしておきましょう。

これはですね

ジュスチーヌ・トリエという、フランスの45歳の女性監督が作った作品です。国内ではかなり知られた監督だったようなんですけど、彼女はこの映画でカンヌ映画祭の最大賞パルムドールを受賞しています。

 それだけじゃなくて、ヨーロッパ映画の最大の栄誉であるヨーロッパ映画賞も受賞し、ゴールデン・グローブの外国語映画賞も、結構映画が話されてる映画でもあるのに受賞し(笑)、フランスのオスカーことセザール賞、イギリスのオスカーことBAFTAアワードでも多部門ノミネートで結果待ち。オスカーでも、作品、監督、主演女優、脚本、編集の5部門でノミネートされています。

 で、結論から先に言ってしまいますと

現時点で見た作品賞候補の中で、僕はこれが一番好きです!


いやあ、びっくり。度肝抜かれましたね。

僕、自分の好きな映画に「法廷映画」ってそんなにないんですよ。やっぱ法律に関してのことなので難しいというのもあるし、日本人の場合、裁判文化の国ではないから共感しづらいとことが文化的にあrつじゃないですか。ブラジルに越してきて裁判が割と日常光景で映される(ブラジルはその辺りかなりオープンです)ので、だいぶかなり慣れてきてたところだったところはあるにせよ、「ここまで緊迫したドラマティックな法廷ドラマ見たの、いつ以来だ?」というのは感じましたね。

僕が好きな法廷ドラマといえば

ビリー・ワイルダーの「情婦」とかですかね。でも、これにしてもマルレーネ・ディートリッヒの証言者としての型破りな演技力とか、裁判と直接関係ない最後のドンデン返しプロットとかが面白かったので、裁判そのものとは言い難いんですよね。

そこいくと、この「落下の解剖学」、裁判そのものがかなり写実的にリアルで、かつドラマティックで熱く、終始緊張しっぱなしなんですよ!

「ああ、本当に白熱する裁判って、こんな感じなんだ!」って改めてピンとくるというか。

この、憎たらしい検事がうまいのなんの!サンドラが不利になる証拠を徐々に徐々に見せていき、それを重ねていくたびにじわじわ情熱的になっていくんですよ。「うわっ、自分がこれを裁判でされたら怖いな」という迫り方をしてくるんですよね。

それを受ける弁護人のヴァンサンがとにかく体温低めで冷静沈着。熱い検事に対してあくまで論理的に裁判を収めようとする、もう弁護士にとっては鏡のような人です。

ただ、そんな彼も人間でして、サンドラにビジネス以上の気持ちが・・なところも、ちょっとこれ、見ものなんですよね。

そして、亡くなった父と母の間で引き裂かれ、裁判の過程で知らなかった両親の秘密も明かされ動揺するダニエル。この子も若く、まだ論理的な思考もそんなにできない年齢ですけど、そのあたりのリアリティが妙に出てて、すごくエモーショナルに心打つものがあるんですよね。

でもやっぱり

やはりザンドラ・ヒューラーにつきますよ。あかされていく秘密の中では夫婦仲がかなり険悪で感情的にも取り乱しているのに、裁判では身の潔白を固く信じ毅然と強い態度を示す。その感情の激しさ、それをコントロールできる人間としての強さ。これがとにかく立派です。

オスカーの主演女優賞でバービーのマーゴ・ロビーがこの人に負けてノミネート逃したの、文句言う人いますけど、まずはこれみてください。絶対文句言えないから!

彼女は

同じくオスカーで監督、作品賞にノミネートされた「関心領域」でも準主演です。この映画がカンヌでは2位相当のグランプリ受賞。去年のカンヌはこの人、一色だったのです。

この人、2015年くらいだったかな、ドイツの謎なシュールすぎるコメディ映画「ありがとうトニー・エルドマン」で、トニー・エルドマンの奇行に悩まされる娘の役で出てまして、その時以来に彼女を見たんですけど、まあ、立派になってますね。

これ、本当におすすめなので是非みてください!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?