見出し画像

9.自由の女神

自由の女神像と言えば、アメリカのニューヨークにあるあの巨大な「Statue of Liberty」が真っ先に頭に浮かぶ。この、日比谷公園にある乗松巌氏の野外彫刻も、同じ名前で呼ばれている。

右手を高々と上げているポーズも、似ている。ただし、ニューヨークの自由の女神がトーチ(たいまつ)を掲げているのに対し、乗松氏の像は指をまっすぐそろえて腕をびしっと伸ばしている。もう一つの違いは、左手に抱えている物。ニューヨークの自由の女神はアメリカの独立記念日である「1776年7月4日」とローマ数字で刻印された銘板を持っている。日比谷公園の像は竪琴(リラ)である。

竪琴と聞いて連想するのは、ギリシア神話のアポロンだろう。それによって、竪琴には知恵や調和、平和といったものを象徴するようになった。

さて、ここで1950年(昭和25年)という、この彫刻がこの場所に設置された年の日比谷公園を振り返ってみる。東文研アーカイブデータベースによると、この女神像は1950年(昭和25年)11月3日に除幕式が行われたと記されている。

日比谷公園に自由の女神建立(年月:1950年11月)
二科会員乗松巌制作の自由の女神像が日比谷公園に建てられ三日除幕式を行つた。

https://www.tobunken.go.jp/materials/nenshi/2254.html

太平洋戦争下に軍用地となった日比谷公園は、戦後連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ)に接収され、敷地の一部は米軍宿舎やダンス場として利用された。その接収が解けたのは、1951年(昭和26年)である。そしてその年に、第1回野外創作彫刻展が開催された。つまり、この自由の女神像がこの場所に設置された1950年は、まだGHQが日比谷公園の一部を接収していた頃。そして、野外彫刻展が始まるよりも前であった。

まだアメリカ軍が日比谷公園にいる中、このようにニューヨークの自由の女神と酷似した像を建て、尚且つ知恵と平和を象徴する竪琴を持たせるのは、なにかすごいことだなと思うのです。

そして、未来に向けてこの強い意志を感じる表情。かっこいい銅像だなと思います。

参考資料

日比谷公園に自由の女神建立 :: 東文研アーカイブデータベース
https://www.tobunken.go.jp/materials/nenshi/2254.html


「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。