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スキルを身につける

以前、Schooというオンライン学習プラットフォームで、「クリエイティブ脳を掘り起こすアイデア教室」というテーマで3回ほど授業を受け持ったことがあります。その中で、「アイデアを形にするプロジェクトマネジメント」という授業で、このスキルの習得について少しお話をしました。

一般的に、世の中にある習得可能なスキルはだいたい「1万時間」修練を積み重ねればプロのレベルに到達できるそうです。フロリダ州立大学のエリクソン博士は、これを「1万時間の法則」と名付けました。例えば、外国語を身につけようと思った時に、1万時間勉強し続ければ、ネイティブばりに言葉を理解し、読み書き会話ができるようになるということ。職人さんや、伝統芸能の達人なども、おしなべて1万時間の鍛錬を続ければその道のプロになれる、と。

1万時間と言われてもイメージがわきづらいと思うので、もうちょっと分かりやすく例にしてみましょう。

例えば、必ず毎日1時間トレーニングをするとして、1年で365時間。1万時間に到達するのは27年後です。トレーニングの時間を増やして毎日2時間にすると、13年目に達成。4時間ずつで、約7年。さらに倍の1日8時間ずつみっちりトレーニングを続けると、3年半でプロレベルに到達するということですね。

あなたがもし「英語が喋れるようになりたい」と思った時、実はすでに学校の英語の授業で学んだ基礎知識が身についているため、そこから1万時間を費やす必要はありません。中学から高校まで、きちんと英語の授業を受けていれば、それだけで約1,000時間は英語の勉強をしているわけですし、授業以外のテスト勉強や予習・復習、あるいは洋楽を聴いたり洋画を観たり、英語に触れる機会は多々あると思います。そもそも、語学力の基礎として母国語の日本語がすでに備わっている状態なので、それらも加算すると(個人差はありますが)高校卒業までにだいたい6,000~7,000時間分の英語力の基礎は身についていることになります。なので、あと3,000時間分をなんとか頑張れば、英語が流暢に話せるようになるでしょう。少なくとも、理論上は。

もしあなたが英語を身につけようとして、平日1時間ずつ欠かさず英語の勉強をしたとします。1年365日から土・日・祝日を引いた日数は、246日間。これを続けると、12年目で目標の3,000時間が達成できます。ただ、はたしてあなたが12年間勉強したとして、12年前に学んだことをまだ覚えているでしょうか?最初の頃に勉強したことを忘れてしまっていたら、何年かけても必要な知識やスキルを身につけることはできません。学んだことを忘れないように維持していくのも、実は大変なのですよね。

短期留学が有効なのは、英語に触れる時間を一気に増やすことができるから。起きている時間のすべてを英語漬けにして、ひたすら語学力を磨き続けることができれば、1年も経たずに英語がペラペラになるということも可能です。そして、ひとつの外国語を習得すると、またもう一つ次の外国語を習得しやすくなります。

身につけたいスキルがあるとしたら、それを達成するために必要な時間を割り出し、日々の生活にトレーニングや学習を組み込むと、目標に到達するまでの道のりが見えてきます。

語学の習得に近道はないですが、ただし普通に勉強しているだけでは効率が悪くモチベーションもあがりにくいです。すでに理解している同じ部分を繰り返すだけでは、時間が無駄になってしまいます。せっかく覚えたものも、やがて忘れてしまったり。

どうやって学べばよいのでしょうか。

語学

今から11年前、私はTOEICの試験を受けるために英語の勉強をしていました。きっかけは、英語学習教材を販売する出版社「アルク」さんのチャレンジ企画。コーチにTOEICの達人で書籍も複数出版しているヒロ前田さんをお迎えし、3名の参加者が3か月間でそれぞれTOEICのスコアアップにチャレンジするというもの。その様子をブログにアップしつつ、最終的にはそのチャレンジの様子をMOOK本にも掲載するという内容。

このプログラムに参加した時点で、私はまだ一度もTOEICを受験したことがありませんでした。そんな状態で、よくこのプログラムに参加したなと思いますが、前述のメンターもそうですが、私は面白そうなものを見つけると後先あまり考えずに飛び込んでしまうクセがあります。

英語を学ぶということでは、私は大学の4年間をアメリカに留学して過ごしていましたし、その後も1年間ロサンゼルスで仕事もしていました。人並みに、英語力はあるつもりでした。しかし、最初のTOEIC模試を受けたとき、愕然としました。885点しか取れなかったからです。まがりなりにも留学をして大学も卒業したのに、その程度しか点数が取れないことがショックでした。

その時、ヒロ前田さんからこういうアドバイスを受けました。

「TOEICで良い点数を取るには、英語力だけでは足りません。受験力も必要になってきます。時間内により効率的に、確実に回答するために、受験力を磨きましょう」

いわゆる、TOEICならではのお作法というのがあります。ビジネス寄りの文章を理解するため、学んでおくべき単語があります。その中で交わされる会話なども、ある程度パターン化され、頻出の表現などもあります。また、回答にあたって設問と選択肢を理解するための文章の読み方なども、少しの工夫でだいぶ効率が上がります。そういった、細かい受験力をひとつひとつ身につけていきました。時には、マークシート回答に適した筆記具や、消しゴムなども研究したり。

自分の中で一番役に立った勉強法は、カプセルホテルに自主的に「カンヅメ」になってひたすら模試を受け続けたこと。普段勉強している環境から少し離れて、気が散りやすい環境であってもいかに試験に集中できるか。一晩滞在して、6時間かけて模擬試験を計3回受けました。連続して模試を受けたことで、本番当日も集中力が途切れることなく、やりきることができました。

3カ月のTOEICチャレンジは、本当にあっという間でした。アルクさんやヒロ前田さんからおすすめされた書籍やアプリを使い、自分でExcelにまとめた英単語帳なども活用しつつ、途中仕事でニューヨーク出張もあったので大いに英語に触れつつ、いよいよ人生初のTOEICテスト。十分すぎるほど準備をしたので、初めての試験も楽しんで受けることができました。ヒロ前田さんがおっしゃっていた、TOEICならではの世界観があって、飛行機が遅れたり、請求書が間違っていたり、会議やパーティの招待があったり。TOEICの登場人物としてかなりの頻度で出てくる「Gupta」さんを試験中に見つけたときは、ちょっとニヤリとしてしまいました。

結果は、965点。900点台が目標ではあったので、無事に達成はできましたが、正直もっと点数は取れたかもなと思いました。それでも、初めて受験したにしては、上出来かなと。アルクさんや、ヒロ前田さんのサポートなしでは、ここまでできなかっただろうなと思います。

すごく楽しいチャレンジ企画で、自分にとってもたくさんの学びがありました。スコアアップを狙うために、英語力だけでなく、さまざまな角度から受験力も向上させるということ。自分で課題を見つけて、それを克服していく。なによりも、伴走してくれる方がいるということがモチベーションの維持にもつながりました。

そんなわけで、今でも日常的に仕事で英語を使いつつ。昨年は3カ月ほどオンラインでチェコ語のレッスンを受けました。新しい言語を学ぶというのは、楽しいですね。

今年は、気まぐれに英検準一級を受けてみました。高三で大学受験を控えた娘が、S-CBT形式の英検を受験していて、それがComputer Based Testingという、会場に行ってパソコンに向かって受けるテストだということで、どんなものなのか興味があったので。通常、英検準一級は初日に一次試験として筆記とリスニングがあり、別の日に二次試験として面接形式のスピーキングテストがあります。S-CBTの場合は、一日で完結し、スピーキングもパソコンに録音するというもの。受験者はマイク付きのヘッドセットをつけ、パソコンに向かって設問を聞いて声に出して回答します。これを何十人かでやるのは、かなりシュールでしたよ。これもまた、面白い体験でした。

そして、今年は11年ぶりにまたヒロ前田さんの企画にも参加していました。「TOEICテスト Part 5 スコアアップマラソン」と題して、8月から12月までの5ヶ月間で、毎月240問ずつ、合計1,200問のTOEIC問題にチャレンジするというもの。ちょうど先日、最終回の解説ライブ配信が終わったところ。これもまた、楽しくて学びにつながる企画でした。

「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。