【洋画】「ナチス第三の男」

「ナチス第三の男(The Man with the Iron Heart)」(2017年、フランス・イギリス・ベルギー合作、セドリック・ヒメネス監督)。

ナチスドイツSS(親衛隊)のイメージ通りの冷酷な人物で、“金髪の野獣”と恐れられて、総統には“鋼鉄の心臓を持つ男”と讃えられ、“理想的なアーリア人”とも言われたSS及び警察大将、ゲシュタポ及び諜報部長官、国家保安本部長官「ラインハルト・ハイドリヒ」を描いたもの。

様々な諜報活動や工作でナチ政権を陰で支えた立役者だ。

プチナチヲタの俺は、前から彼の冷静沈着・冷酷非道で人間味の全くない仕事っぷりが気になってたから、映画を見つけてコレは観なきゃと借りた。

ハイドリヒは1942年、早朝のプラハで、オープンカーに乗ってるところを、英国及び亡命チェコ政府が送り込んだチェコ人部隊に襲撃され爆弾を投げつけられて重傷を負い、1週間後に死亡したが、映画の後半はこの暗殺部隊にも焦点を当てている。

映画は、ハイドリヒが女性問題で海軍を除隊となり、親衛隊指導者ヒムラーの面接を受けて即決採用、諜報活動で親衛隊のトップに昇り詰めて、他にも各種要職に就き、突撃隊粛清の長いナイフの夜事件に関わり、水晶の夜やホロコースト、国防軍幹部の失脚を企み、プラハで暗殺されるまでと、その後、暗殺の報復として5000人ものチェコ人らの虐殺、暗殺部隊の抵抗までを描く。

ナチの悪名高い移動虐殺部隊アインザッツグルッペンを組織したのもハイドリヒである。

もし戦後、生きてたとしても絶対に裁判で即死刑となるであろうから、暗殺されたことで、近代で、彼以上、冷酷で残虐な人物はいないと伝説化してる部分もあるようだ。

レーム粛清にしろ、ユダヤ人虐殺にしろ、実は、総統は及び腰だったのを、ハイドリヒがいろいろと手を回して実行させたのだ。

彼のことを“生まれながらの諜報家”と評したヒムラーは、彼と組んで数限りなく残虐な行為をやって来た訳だが、ハイドリヒの、この徹底した実行力はどこから来てるのだろうか。

ユダヤ人の絶滅政策を策定して、アイヒマンを発掘したのも彼だし。ソ連のスターリンによる赤軍大粛清のキッカケを作ったのも彼だし、大戦の始まりであるポーランド侵攻作戦の立案者も彼、総統暗殺未遂事件を利用したのも、日本のゾルゲ事件の裏にも彼がいる。

ナチス政権は、ハイドリヒなしでは成り立たなかったであろうと思われる。彼は総統のことを「あの老いぼれめ」なんてバカにしてた面があったけど。

おっと、映画はちょっと散漫な感じがしてイマイチだったけど、歴史の史実を知るという学びになったかも。もっとハイドリヒの内面に迫って欲しかったなぁ。

ナチスという異常な政権下だからこそハイドリヒの才能が開花したものだと思うけど、いつもながら、単なる異常で冷酷な男として描くばかりではナチスと高官らの本質は見えてこないだろう。ハイドリヒの激しいワンワンスタイルはわかったけど(笑)。





脳出血により右片麻痺の二級身体障害者となりました。なんでも書きます。よろしくお願いします。