Vtuberがライブ配信主体なのは別に動画編集がめんどくさいからではない、という話

こういうツイートを見かけたのですが、僕はちょっと見解が違っていて別にVtuberは動画編集が大変だから配信中心になってるわけではない、というお話

Vtuberの3Dから2Dの流れと淘汰圧

VtuberはバーチャルYoutuberの略で、もともとYoutuberのCG版として登場しました。なので黎明期のVtuber、キズナアイ、ミライアカリ、電脳少女シロなどはみんな動画勢でした。文化としては初音ミクやMMDの下地があった上で出てきたものとも言えます。当初はキズナアイをロールモデルとしてVtuberといえばCGモデルをモーションキャプチャで動かすものがほとんどでした。

流れが変わったのが2018年の春で、にじさんじがいきなり登場しました。彼女たちは3DCGじゃなければバーチャルじゃない、という不文律をまったくものともせずにLive2Dで顔だけ動く、という状態で2Dでライブ配信を中心にVtuber活動を始め人気を博しました。当時それに異を唱える人もたくさんいましたが、結果は今を見て分かる通り、2Dライブ配信スタイルがVtuberの主流になりました。

3Dは「贅沢品」

当初異端と思われた2Dが主流になった理由はいろいろありますが、結局の所「コスト」の問題が一番大きい。CGは制作するコストが高い(外注すると200万前後)、CGをモーションキャプチャで動かすのもコストが高い(機材も高いが所有してたとしても一人では無理で別途技術に習熟したスタッフがいる)、必然更新頻度が下がるし人数もそうそう増やせない。

にじさんじはLive2Dを採用することで制作コストの問題を一気に解決。デビュー時いきなり8人、その後も順次追加して総勢100名以上になっています。配信もLive2Dであればスマホだけで動かせるということで自宅で演者に勝手にさせることで、ほぼ毎日配信、という高頻度での展開が可能になりました。

3Dと2DのVtuberはその後も同時並行で運営されていたのですが、結局の所コストがかからない→人を増やせるという相乗効果のほうが勝ち、次第に

1.Live2Dでまず大量デビュー
2.人気が出た人から順次3D化
3.3D化しても3D配信はイベント的にしか行われず基本は2D配信

という流れがVtuber事業の「勝ちパターン」として確立しました。

つまり第一のVtuberがライブ配信主体なのは「配信主体の事業者が勝った=淘汰圧」ということが言えます。

バーチャルの制限の中でできる活動

上記とも関連しますが、バーチャルの体を持つVtuberならではの制限事項、という面もあります。通常のYoutuberは動画主体なのにVtuberだけなぜ配信主体なのか。Youtuberであればカメラを回して自分で体を動かせば即動画が撮れますが、Vtuberで全身を動かす、というのがとにかくハードルが高い。Live2Dでは首から上しか動かせないし、3Dモデルは持つこと自体ハードルが高い。持っていてもそれを全身で動かすのがまた大変。機材も高いしそれを動かす技術力も必要で、たまたま本人が技術に詳しかった、またはメンバーの中に詳しい人がいた、という状況でもない限り、例えば女性一人で自宅で3D配信を行うことはほぼ厳しい。お金がある企業でさえ動かすのに高価な機材とスタッフの稼働が必要でそうそう毎日できるものではないのです。

逆に言うと上記の条件をクリアしている(たまたま本人が技術に詳しかった、または詳しい人と組んで活動していた)を満たしているVtuberなどは動画で勝負している人も多いです。おめシスとかぽこピー(ぽんぽこ&ピーナッツくん)などはたまたま詳しいメンバーがいたことから3D&動画中心で活動しています。

コスト・頻度の制限のため2D主体で活動(首からしか動かせない)という制限の中でどういう内容で勝負するか、と言うとワイプで顔だけ抜いて配信するスタイル=ストリーマー路線を踏襲するのが一番合理的、という結論になります。

人気Vtuberは編集された「切り抜き」動画が勝手にできる

また人気Vtuberが動画主体にならないもう1つの理由として、切り抜き動画がどうせできるから、というのもあります。人気Vtuberは配信だけして長時間の(見づらい)アーカイブが残るのですが、それを別の第三者が勝手に切り抜き動画を作ってアップする、という文化があります。切り抜き動画はファンとしての善意のことも多いですが、人気のあるVtuberの切り抜きは再生数を稼ぐことができるので作る側としても作るモチベーションが生まれます。著作権的にグレーな面もありますが、多くのVtuber事務所は黙認していることが多いです。これは見やすい短尺の切り抜き動画から興味を持つ人が増えて実際に人気の登録者が流入するという現象があるためです。またYoutubeの場合は動画IDから検知して切り抜き動画の収益が元動画所有者に還元される仕組みもあるため、特に損はしない、ということもあります。

切り抜き動画は見どころだけ短尺で編集されテロップも入り、従来のYoutube動画と同等に非常に見やすいものになっています。つまり勝手に切り抜き動画が作られる人気Vtuberの場合、ライブ配信のメリットと短尺編集動画のメリットを現時点で同時に受けられているのです。

以上がVtuberが動画主体ではなく配信主体になる理由です。けして「編集が大変だから」からではないのです。また技術の進歩などでまた将来的にも流れが変わるかもしれません。

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