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Acerの裸眼立体視ディスプレイ「Acer SpatialLabs View/ Pro」見てきた

Acerの裸眼立体視ディスプレイ「Acer SpatialLabs View/ Pro」のデモ会の抽選当たったので見に行ってきました。
別にアンバサダーでも宣伝でもなく単なる立体視好きの感想文です。

商品について

https://www.acer.com/ac/ja/JP/content/spatiallabs



少し前にAcerは裸眼立体視ディスプレイを実装したノートPCを出していたのですが、あくまで商品としてはノートPCということでそこまで興味はなかった。ディスプレイ部分だけ切り出して売ってくれないかなーと思っていたらまさにその希望通りの商品を発表、ということで俄然興味が湧いてきた。

ディスプレイのみのやつは「Acer SpatialLabs View」「Acer SpatialLabs View Pro」という商品名。Looking GlassやソニーELF-SR1を同ジャンルの、特殊なメガネなしで裸眼で立体視できるディスプレイ。2022年夏に発売予定。国内販売価格はまだ未定だが、Proじゃない方の本国発売予定価格は1,099ドルなので、ここから類推は可能。ただProは無印よりは高くなるとのこと。

無印とProの違いは、前者は比較的受け手として既存のコンテンツを消費するためのもの、Proはクリエイター向けという位置づけ。法人個人という分け方はしていない。自分のアプリを開発できるのは後者のみ。前者と後者のハードの違いは色空間の違いが後者のほうがプロ向けで広く、それ以外のスペック自体はほぼ同じ。あとProはVESAマウントがある。

構造について

画像で表現できないが立体視できてる
薄い。軽い。

ディスプレイ上部のステレオカメラでアイトラッキングをして視点を切り替える方式(ソニーと同じ方式)。なので解像感は高い。4KディスプレイなのだがHD相当の見え方というイメージ。

見れるサンプルデータに陶器のモデルがあったが模様や質感含めかなり実在感あり。横型のディスプレイなので人形のモデルが上下で切れてそこまで拡大できないのは残念。

アイトラッキング方式なのでLooking Glassと違って下から見上げることもできる。つまり「スカートの中を覗くことができる」(すみません)
くだらないこと言ってるなという感じですがLooking Glassを見た人ってだいたい(上下の視線移動がない)という違和感を指摘するのでわりと重要なポイント。ただしアイトラッキング方式の欠点として「同時に一人しか体験できない」。

Looking GlassやソニーELF-SR1は奥行きの空間性を筐体の工夫で表現しているが、こちらは筐体の薄さ優先でそういうギミックはなし。逆にギミックがないので筐体に組み込んだりとこちら側で工夫できる余地は大きそう。VESAマウントなど、本体だけで完結しない、シンプルな周辺機器として構成されているのは自分的には好印象。

ソニーELF-SR1やLooking Glassが単独の際立った商品として奥行きを実在するように見せるギミックがあり、Looking Glassはそれがディスプレイ全面の分厚いアクリル板でありELF-SR1は三角形のステージのような空間なわけだが、SpatialLabs Viewはそういった凝った仕組みはなく、シンプルなモバイルディスプレイと同じ構造。ただ「演出」がないだけで飛び出して見える立体感については遜色ない。

本体はとにかく薄く、マウントも折り畳めるようになっていて可搬性が高い。重さ1.5kgで持ち上げても「ああこれは持ち運べるな」という感じ。外に出てデモをして回るにはいい感じ。

ACアダプターも小型

立体視の印象

立体視の感覚はソニーELF-SR1に近く、Looking Glassよりも解像感は高い。テカテカした陶器のモデルを見ると、あたかもそこに存在しているみたい。横型のディスプレイなので人型のモデルについては上下で切れるため小さく表示せざるを得ず、そこまで拡大できないのは残念。

奥行きを演出するための構造物はないが、解像感が高いのでそこまで必要なく十分奥行き感を感じることができる。デモでモデルの奥行き位置をマウスで操作できていたが、かなり奥までの範囲を表現できている。

先程述べた通りアイトラッキング方式なので、下から覗き込んだりすることも可能。トラッキングが外れると、立体視はできなくなる。ただ突然見えなくなるのではなく、ふわっと2Dに戻る感じで3Dから2Dへ自然に戻っていく感じがなんだか面白かった。

競合製品を極端に超えるものではないが、まったく遜色もないという感じ。どちらかというと見え方というよりは価格、持ち運びやすさなどの実用面で勝負している印象ではある。

立体視できる範囲の角度は、表示するモデルにも夜ということで名言はしていなかったが、およそ60-90度くらいの範囲で可能だろう、とのこと。Looking Glassは純粋に左右から見たときをレンチキュラーレンズで画像を切り替えているだけなので範囲を超えると急に変になるが、こちらはアイトラッキングで描画を切り替えているのでさきほど言った「ふわっと2Dに戻る」ので範囲を超えて見えなくなったときの「ガッカリ感」は少し軽減されている。

搭載ソフトウェア、SDKなど

3Dモデルを見ることができるアプリケーションが標準でついてくるが、おそらく自分の用途では使うことはないであろう。あと2Dの通常の画像や動画をAIで自動解釈して3Dにして見ることができるアプリケーションも付属しており、なかなかおもしろいが人物がちょっと浮きあがる程度で実用に耐えるほどではなく、あまり使い道は思いつかない。

通常の3Dゲームアプリケーションを自動解釈して立体できるユーティリティも付属しており、これを介してSteamのゲームなどをプレイすると立体視で既存のゲームが楽しめる。これは上記の2D画像を無理やり変換するものより実用的で、近場にあるオブジェクトなどはある程度立体に見える。(遠景はのっぺりした平面感ある)
この機能を使えば通常の3Dアプリとして作って簡易的にこちらで立体視表示ができそうだ。ただ専用SDKで作った立体視に比べるとさすがにかなり劣る。

BlenderやMayaなどのDCCツールに対応しており、立体で見ながらモデリングすることができる。たくさんのソフトに対応してた気がするが、こういう使い方は自分はしないと思うのであまり聞いていなかった。

まあ自分はこの手の製品は自分で開発することが前提なので開発SDKが重要なのだが、現時点で用意されているSDKはUnrealのみ。Unity SDKは要望が多いので対応予定だそうだが、年内に出るかも?という感じ。自分はUnityメインなので早く出してくれないと困る。

その他

大画面版を出す予定があるのか?と聞いたがそれは現時点ではないそう。アイトラッキングを前提としているので基本的に一人用を想定しており、一人で使える範囲のディスプレイサイズでないと意味がないという判断とのこと。個人的にイベントなどではサイネージサイズ(30型以上とか)の大きめのサイズで立体視するインパクトは大きいのでその点では残念。アイトラッキング方式を採用する限りこのおひとりさま専用というのは避けようがないと思われる。

どうやって買える?

日本エイサーの販路、販売代理店あるいはネット通販、とのこと。B2Bしか買えないとか、B2Cだけとかいう区別は設けていないとのこと。ただ昨今の半導体不足により、どの程度日本に入ってくるかなどは不透明。

予想価格

価格は未定なので僕もよくわからないけど、「Proじゃない方の本国発売予定価格は1,099ドル、ただしProはもっと高くなる。さすがにそのまま為替通りとは行かない」というところから「20万円前後」というラインで予想します。20万切ったらスゴイ。ソニーが50万、Looking Glass 4Kが3000ドル(今の為替だと40万くらい?)なのでこれより安いラインであることは確かだと思う。

で、お前買う?

正直ほしい。Looking Glassはシンプルな構造でUnityにも対応しており、なによりパイオニアということで支持しているが、なにしろ海外に拠点がないというのがネック。デモを見たり何か交渉したりというのに英語が必ず関与するし国内代理店もないので気軽に相談するなどできない。Portraitとかならともかく、4K、8Kとか買って壊れたらどうするんだろという不安。

これなら日本支社がしっかりあるし法人営業部門もあるしエイサーの通常のPCと同様に日本の代理店からも買えるしこうやって国内でデモも見れる。安いし仕事で案件で使うならが決まれば買いたい。
でもLooking Glass Portraitみたいに個人向けの価格帯のラインがないので、おもちゃ代わりに勢いで買ってあちこちでデモして、みたいなことはできないのがネック。

ただ持ち運びも便利なのでこれ1台買っとけばあちこちでデモするには最適だと思う。個人的には有償でいいからレンタルがほしいねという感じ。お金があるラボとかなら実験用途でぽんと買えるのかもしれないが、うちは道楽で買うのは今はちょっと無理かな。Portraitで裸眼立体視デモをして、大型受託案件決まりそうならこれを使う、みたいな感じになるのかな。

コンパクトで装飾性がないのであくまで部材として買って、専用設計の筐体に組み込んだりしても面白そう。VESAマウントあるのでそういう使い方もできる。

あと大画面モデル、縦画面モデルが欲しい。一人しか見れないという部分でそもそもサイネージ用途は考えていないかもしれないが、イベントなどに使うのに15.6型はちょっとインパクトが薄い。32型くらいでどーんと出して、さらに縦にも対応できれば人体を原寸大で表示できるし、いろいろ夢が広がると思う。

あとSpatialLabs ViewとProの区分けぶっちゃけいる?という感じ。たぶん個人がこれ買って3DでゲームをやったりYoutubeを擬似3Dにして見る用途ってほぼないと思う。ほとんどがクリエイターが我々みたいなVR開発なんじゃないかな。ハード的にほとんど変わらないものを2ラインでソフトウェア的に分ける意味はあまりわからない。だったらもっと小さくて安いものを個人向けに出したほうが良かったような。


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