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Twitterが瀕死の状態で思うTwitterの本質とは何かということと、イーロン・マスクの何が正しくて何が正しくないかという話

Twitterの本質、あれが作られた理念のところを考えるに、やはりその前身としてRSSという存在があり、それがいまいち流行らなかったという現象について触れていきたいと思う。RSSの技術理念が素晴らしかったのにRSSがまったく流行らなかったのは結局理念よりも商業的なTwitterがRSSで実現できることをもっと一般人にとって便利にやってしまったからというのはある。まあ創業者のジャック・ドーシーにそういう考え方(データとクライアントの分割、分散思考)があったのも事実。

RSSは、各社Webサイトでバラバラにデザイン、データをばらまくWebの世界を再統一して、情報を持っている人・団体が統一のフォーマットで配信し、その情報をクライアントで好きに統合して見れば効率的にポータルサイトみたいなものを実現できるというもの。

使う側の理念としての理念は素晴らしかったが、情報を出す側が各社RSSを出すことの見返りが薄かった。商業的な要素はクライアントにこそ宿るので、そこを管理できないとタダ乗り、フリーライダーになってしまう。

そのRSSの理想的理念をうまく引き継ぎつつ、データとクライアントは1社で集中的にすべて管理し、その見返りとしてなるべくシンプルなインターフェースと無償のAPIを厚くして、情報を出す側と受け取る側の利害のバランスを取っていたのがTwitter。ただで情報をもらうかわりに公共インフラとしての使命感も強かった。少なくともジャック・ドーシーには初期インターネットの理念にもつながる、そういう理念と理想があったと思う。

ところがゴリゴリの「ゼロサムゲーム」型資本主義者で初期インターネットの分散主義は脳内に全くなく、後から入ってきたイーロンマスクにはその理念は一切無関係。だからAPI全廃して、その(情報を出す側と管理する側の)利害バランスを崩してしまった。

イーロンはあれだけ私的にSNS使ってる割にはあまりCGMメディアの本質=情報提供と商用利用との相互補完性を理解しておらず、おそらくはTwitterの無料ユーザーは「宣伝のためにただで使わせてあげてる試用版」という定義なのだろう。情報の対価という概念があまりなく、ChatGPTの無料版ユーザーみたいなもので有料に誘導するためのお試し。

ヤフーニュースなどのポータルサイトは、ビジネス条件としては他社のニュースを自社サイトで配信するのにお金を払ってるわけで、イーロンはなぜ世界中のニュースメディアがTwitterで自主的に無料で情報をばらまいているのか、という利害構造の微妙なバランスの理解に欠けていたと思う。あくまで彼にとってはプロダクトはコンシューマからお金を取って提供するもので、無料ユーザーはお試し。いずれは有料に誘導するのであって無料のまま使われても困る。AWSやらGoogle Colabで一定のアクセスまでは無料というのがあるがまさにあの感覚。あくまで試用版ユーザーだからこんな乱暴で実験的な仕様変更も平気でできるのだろう。それにしても有料ユーザーが基本のサービスとしたっていくらなんでもSLAの概念がなさすぎると思うが。

ちなみに今回のいきなりのTwitter閲覧数制限は、実はサーバー環境を他社クラウドから自社環境に移行するプロジェクトがあって、それに技術的に失敗したから一時的にアクセスを制限したかったため、という説がある。(公式発表ではないので信憑性はわからない)
上記が本当だとしたら、素直に謝罪してロードマップを発表し、一時的な制限を許容するように正直に発表すればよかったと思う。移行プロジェクト失敗を失敗と言いたくなく、「Twitterは俺の持ち物だからどうしようが俺の自由、これはあくまで想定内の実験なのだよ虫けら共よ」と言い張るのは自由だが、上述の「情報を出す側とそれを利用する側のバランス」という力関係を考えずに「失敗ではなく意図した制御」だと言い張るにはリスクが有る

そのリスクというのは「そもそも自社でIPを保有している、または知名度がある有名人、インフルエンサー」である。彼らは知名度と人気がり、数字を持っているので各自で情報を発表する環境を用意すれば人を集めることができるが、個々にITインフラ投資をするのが負担であること、およびTwitterが公共のPRインフラとして今まで機能していたからそれを信用して利用していたわけで、今回のような「虫けらどもめ」という態度では、虫けらではない数字を持つ企業、個人は「このような個人的判断でサービス仕様を実験的に変えられるようでは公式発表のインフラとしては適当ではない」と判断するであろう。自治体も同様。

そうすると数字を持つ企業・個人が無料でTwitterで発表をし、そのトラフィックを広告として売上に変えるというビジネスモデルが完全に崩れてしまう。有象無象の無名個人には圧倒的人気があったが企業や有名人は一切使わない2ch(5ch)や4chanが商業的にどうだったかを考えるとあまりいい未来像は描けないと思う。

まあおそらくトラフィック急減のデータを見て、このアクセス制限は近日中に解除されて何事もなかったかのような顔をしてイーロンはTwitterでジョークでも言うのだろうが、上記の「公式なPRツールとしては使えないので各自発表のインフラを別途用意する」方向に流れることは避けられないと思う。今後自分で数字を持っている人・企業は告知ツールは各々自前実装、分散化させる方向になり、Twitterはそのへんの数字はごっそり失いそう。実際7月1日~2日にかけてなにかイベントや発表があった企業はけっこうな損害だったことだろう。


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