例えば、私が「絵を描くことがとても好きな人」だとする。

小さい頃から絵が好きで、時間のゆるすかぎりいつまででも絵を描いていられるような人。
もしそうだとすると、将来は画家やイラストレーターになりたいとか、美術の勉強をしたいと思うようになるかもしれない。

そして、自分の絵や絵のついたグッズ（ポストカードなど）を販売することもあるかもしれない。

売ったら、もちろん、私は買って欲しいと思うだろう。
それも、できるだけたくさんの人に。

でも、それが本当にやりたいこととぴったり一致しているか？というと、わからないな、と思う。

たくさん買ってもらうために、買ってもらえるような絵のタッチやモチーフを意識してしまうかもしれない。

あるいは、自分の絵がどこかに入賞したり、企業の目に留まったりすることを望んで躍起になるかもしれない。

絵だけで食べていけない事実と、絵で食べていける人になりたいという理想のイメージとに板挟みになって苦しむかもしれない。

だったら、絵を仕事にするんじゃなくて、ただずーっと楽しく絵を描き続けるほうが大事っていう可能性もある。

ビジネス以外の活動を続けていくためには、多くの場合お金が必要になる。

もしくは、時間を捻出するために間接的に生活資金が必要という場合もあるだろう。

でも、そのために、好きなこと（例えば絵を描くこと）に好きじゃないこと（お金を得るために画策したり雑念に悩んだりすること）がくっついてくるのはもったいない気がしてきたのだ。つい最近から。

もちろん、お金儲けや利益を出すためのビジネスが好きという人は、何も気にせずそこに労力を割けると思う。

でも私の場合、例えば宣伝すること自体が苦手だから、自分が利益を出すための活動全般にちょっと尻込みしてしまうところがある。

だったら、必ずしもお金儲けに固執しなくてもいいのでは？と、今更な事実に気がついた。

お金儲けは悪いことじゃない、文化芸術とはいえきちんと売上をアップさせて利益を出せてこそだ、という考え方に学生の頃から触れてきた気がする。

確かに、文化芸術を愛しているから貧乏することを良しとする、という風潮はどうかと思っていた。

お金は大事だから、好きなことをしていても利益はしっかり上げていいじゃないか、と。

それが最近、一周回って「無理に利益出さなくてもいいか」と思い始めた。

もちろん赤字ばっかりではしんどくなるししんどいのは本望じゃない。

でも続けていくためには、お金儲けにまつわるストレスを手放すことも大事じゃないか？と思えてきたのだ。

本当にやりたいことが「できるだけたくさんの人に届けたい」なんだったら、お金は別の手段で調達して、無料で作品を公開するほうがずっと多くの人に届く。

「少しでいいから本当に愛してくれる人に作品を届けたい」のであれば、有料で販売はしても、大々的な宣伝は必要ないはず。

そういう、「自分が本当にフォーカスしたい部分はどこなのか」ということを見極めたほうがいいな、という気づきを得た。

少しずつ、いらない思い込みは手放していこう。