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政治講座ⅴ1739「中国経済光明論とはネガティブ思考(実態)をポジティブ思考(計画)に強制:失政を隠蔽する手段」

 最近、中国の公式発表の人口が14億人という数字が捏造であり、実際は10億人であるという事実が暴露されているようである。
中国の人口は、実は11億人?

少子高齢化は長期的な中国の弱点と言える。1人っ子政策が1979年から始まったが、その下で誕生した第1世代が2022年に満42歳を迎え、出産年齢はおおむね終わった。2人の親に1人の子なので、2世代進めば1人の子が6人(両親と2組の祖父母)を抱える構造になっている。さらに最近は、中国の人口が14億人ではないのでは、という話も囁かれている。もともとデータ自体がいい加減なうえ、データ改ざんも頻繁に行なわれている中国の特徴を鑑みると、この数字自体をどこまで信じていいのかはわからないが、2022年7月、上海の公安当局から中国の10億人分の個人情報が流出したというニュースが流れた。報道によると、氏名、年齢、住所、身分証番号、携帯電話番号、犯罪事案の状況などが記載されているという。注目されたのは、このデータが10億~11億人ぐらいしかないこと。そのため、多くても11億人が本当の中国の人口ではないかと言われている。もし、それが事実であれば人口モデルが完全に狂う。このような国家運営で社会主義の計画経済モデルが成功するはずがない。今回は「中国経済光明論」の報道記事を紹介する。素人考えであるが予断を持たずに俯瞰するとやはり、中国経済はもうお陀仏であるとしか言いようがない。

     皇紀2684年4月16日
     さいたま市桜区
     政治研究者 田村 司

「中国経済光明論」が跋扈するなかで実態がみえにくくなる懸念

~スローガン在りきの政策運営の背後でデフレ懸念に繋がる動きは一段と深刻化する可能性~

西濵 徹
要旨
2023年の中国は経済成長率が政府目標をクリアしたが、供給サイドをけん引役に景気の底入れが続く一方、需要サイドは力強さを欠くなど需給ギャップが広がる動きがみられる。昨年の経済成長率は「名実逆転」するなどデフレ懸念が強まっているが、人民元安を警戒して中銀は利下げに動けないなど「自縄自縛」状態に嵌っている。よって、足下の中国経済を取り巻く環境には不透明感が一段と高まる状況にある。

  • 1月の製造業PMIは49.2と底打ちするも4ヶ月連続で50を下回る推移が続いており、生産活動は活発化するも国内外で受注は弱含むなど先行きに対する不透明感がくすぶる状況にある。他方、非製造業PMIは50.7と上昇しており、サービス業は3ヶ月ぶりに50を上回る水準を回復しているが、製造業同様に国内外双方で受注は弱含むなど先行きへの不透明感がくすぶる。さらに、製造業、非製造業問わず雇用調整圧力が強まることで、先行きの内需が弱含むとともにディスインフレ圧力が強まる懸念がくすぶる状況にある。

  • 昨年末に実施された中央経済工作会議では「中国経済光明論」を高らかに謳う方針が示され、その喧伝に向けて何でもありの様相をみせるなかで統計の「水増し」が疑われる動きもみられる。中国経済の実情をみえにくくするとともに、スローガン在りきの政策運営は世界経済の「悩みの種」となる展開も予想される。

2023年の中国の経済成長率は+5.2%と政府目標(5%前後)をクリアするとともに、10-12月の実質GDP成長率は前年同期比+5.2%、前期比年率ベースでも+4.1%とプラス成長で推移するなど堅調に推移している様子がうかがえる(注1)。なお、足下の景気は供給サイドをけん引役に底入れの動きが続いている一方、需要サイドを巡っては内・外需双方で不透明要因が山積するなど力強さを欠く推移をみせるなど需給ギャップの拡大が意識されやすい状況にある。当局によるゼロコロナへの拘泥が長期化した『後遺症』により若年層を中心とする雇用回復が遅れるなか、不動産市況の調整の動きが幅広い分野にバランスシート調整圧力を招いており、家計消費をはじめとする内需の足かせとなる展開が続いている。また、米中摩擦に加えて、デリスキング(リスク低減)を目的とする世界的なサプライチェーン見直しの動きが外需の足かせとなっている上、昨年の反スパイ法(反間諜法)改正や治安管理処罰法改正案を巡る不透明感も重なり、足下の対内直接投資は純流出に転じるなど景気の足を引っ張る懸念も高まっている。このように需給ギャップが広がる懸念が広がっていることを反映して、昨年の名目成長率は+4.6%と実質(+5.2%)を下回るなど『名実逆転』状態となるなどデフレを意識せざるを得ない状況に直面している。他方、昨年の国際金融市場においては米ドル高の動きを反映して人民元相場が調整の動きを強めたため、米ドル建で換算したGDPは29年ぶりの減少に転じるなど世界経済における存在感低下を招く一因になったと捉えられる。よって、金融市場においては景気下支えに向けた金融緩和に動くとの観測が強まっているものの、中銀(中国人民銀行)は24日に来月5日付で預金準備率を50bp引き下げる動きをみせるも、人民元安を招くことが懸念される政策金利の引き下げには及び腰となるなど『自縄自縛』状態に陥っている可能性がある。こうしたなかで足下の中国経済を取り巻く環境には不透明感が高まっているものと捉えられる。

このように足下の景気を巡っては足かせとなる懸念がくすぶるなか、国家統計局が公表した1月の製造業PMI(購買担当者景況感)は49.2と前月(49.0)から+0.2pt上昇するなど頭打ちしてきた流れが反発する動きがみられるものの、4ヶ月連続で好不況の分かれ目となる水準を下回る推移が続いており、製造業企業を取り巻く環境は依然として厳しい状況にある。足下の生産動向を示す「生産(51.3)」は前月比+1.1pt上昇するなど生産拡大の動きが確認されているものの、先行きの生産活動に影響を与える「新規受注(49.0)」は同+0.3pt、「輸出向け新規受注(47.2)」も同+1.4pt上昇するも内・外需ともに受注動向は50を下回る推移が続いており、足下の生産拡大の動きは期待先行で底入れの動きを強めている様子がうかがえる。事実、こうした状況を反映して生産活動が拡大する動きがみられるにも拘らず「購買量(49.2)」は前月比+0.2pt、「輸入(46.7)」も同+0.3ptとともに小幅な上昇に留まるとともに50を下回る推移をみせるなど原材料の調達を抑制させる展開が続いており、「受注残(44.3)」が同▲0.2ptと受注動向が下振れしていることも影響していると捉えられる。このところの商品市況の調整の動きは「投入価格(50.4)」が前月比▲1.1pt低下する動きに繋がっている一方、家計部門が節約志向を強めるなかで価格競争が激化していることを反映して「出荷価格(47.0)」も同▲0.7pt低下するなどデフレ傾向を後押しする可能性はくすぶる。さらに、生産活動を活発化させているにも拘らず「雇用(47.6)」は前月比▲0.3pt低下するなど調整圧力が強まる動きが確認されており、家計部門にとっては雇用環境を巡る不透明感が消費意欲の重石となるとともに、節約志向を一段と強めることも考えられる。なお、企業規模別では「大企業(50.4)」は前月比+0.4pt上昇して50を上回る推移が続く一方、「中堅企業(48.9)」は同+0.2pt、「中小企業(47.2)」は同▲0.1ptと中堅企業や中小企業を取り巻く状況は厳しい展開となるなど、足下の中国経済が『国進民退』色を強めている様子がうかがえる。

一方、製造業と同様に昨年以降は頭打ちの動きを強めてきた非製造業PMIも1月は50.7と前月(50.4)から+0.3pt上昇して好不況の分かれ目となる水準を維持しており、相対的に企業マインドは堅調さが続いていると捉えられる。業種別では過去2ヶ月に亘って好不況の分かれ目を下回る推移をみせた「サービス業(50.1)」が前月比+0.8pt上昇して3ヶ月ぶりに50を上回る水準に回復する一方、当局による公共投資の進捗促進や前倒しの動きを反映して底入れの動きを強めてきた「建設業(53.9)」が同▲3.0pt低下して一服する動きが確認されており、不動産価格の調整の動きに歯止めが掛からない展開が続くなど需要が弱含みする動きがみられるなかで建設投資の足かせとなっている可能性が考えられるなど、過去数ヶ月とは対照的な様相をみせている。サービス業のなかでは鉄道輸送関連や物流関連、金融関連で好調さがうかがえる一方、このところ低迷が続く資本市場サービス関連や不動産関連に加え、公共サービス関連が弱含みする対象的な動きをみせており、調整の動きに歯止めが掛からない展開が続く不動産市場を巡る状況が足かせとなっていると捉えられる。なお、足下の生産活動に底打ちの動きが確認されているものの、先行きの生産活動を左右する「新規受注(47.6)」は前月比+0.1pt、「輸出向け新規受注(45.2)」は同▲5.7ptと大幅に低下して内・外需双方で受注動向は50を下回る水準となっている上、「受注残(43.7)」も同▲0.2pt低下するなど先行きの生産活動を取り巻く状況は厳しさを増している。また、製造業同様にこのところの商品市況の調整の動きを反映して「投入価格(49.6)」は前月比±0.0ptと横這いで推移しているほか、こうした動きに加えて家計部門の節約志向や価格競争の激化を受けて「出荷価格(48.9)」は同▲0.4pt低下するなど幅広くディスインフレ圧力が強まる流れが続いている。そして、「雇用(47.0)」も前月比▲0.1pt低下して雇用調整圧力が一段と強まる動きもみられるなど、家計部門を取り巻く状況は一層厳しさを増すことは避けられないであろう。

なお、昨年末に実施された中央経済工作会議においては、今年のマクロ経済政策の運営に当たって過去に行われた施策の『焼き増し』とみられる対応が羅列されるなど、足下の中国経済が直面する状況に鑑みれば物足りないと捉えられる。その後に当局が公表している政策についても『小粒感』が強い展開が続いているほか、突如株価対策を目的に2兆元規模の安定化基金創設のほか、ファンドに対して株価指数先物の空売り制限を要請するなどPKO(株価維持政策)に舵を切る動きをみせているものの、起こっている問題への対応としてはちぐはぐ感が否めない。他方、中央経済工作会議においては『中国経済光明論』を高らかに謳うべきという指針が示されるとともに、後押しすべく経済統計にも影響を与える可能性が高まっている。事実、今月26日から始まった春節期間中の人の移動(春運)を巡って、交通運輸部が今年は延べ数として90億人を上回ると昨年から約2倍となるとの見通しを示す一方、その集計方法について自家用車による移動を含めたとするなど『水増し』が疑われるような動きがみられる。こうした状況は、今回のPMIをはじめとして今後公表される経済統計に対する疑念をあらためて惹起することが予想されるほか、中国経済の実態をこれまで以上にみえにくくする可能性がある。ただし、党中央が中国経済光明論を声高に唱える背景には、すべての政策運営を巡って『習近平の中国の新時代の特色ある社会主義』の実現というスローガン在りきで進められていることを勘案すれば、こうした状況を脱却することは極めて難しいのが実情である。党中央が中銀への関与を強めるなど政策の手足を縛る動きがみられることも重なり(注2)、世界経済にとっては中国経済の不透明感という『悩みの種』が尽きない展開が続くことになろう。

中国経済“衰退論”巡り強まる言論統制 入り交じる楽観論と悲観論 河津啓介

2024年2月13日
 中国経済の「衰退論」に、習近平指導部が神経をとがらせている。2024年の経済運営方針を協議した中央経済工作会議は「宣伝と世論の誘導を強化し、中国経済の光明論(楽観論)を鳴り響かせる」と号令をかけた。スパイ摘発を担当する国家安全省が「中国衰退という虚偽の言説を作りだし、体制を攻撃」することに警告を発する物々しさだ。

 強まる言論統制は景気の先行きを巡り国内でも議論があることの裏返しだろう。
 中国経済誌『財新週刊』(23年12月25日)は、空理空論よりも事実を重視する「実事求是」への回帰を求める社説を掲載。
 文化大革命期に、経済が破綻しながら「形勢は良い」と事実をねじ曲げたり、先進国に背を向けて鎖国状態に陥ったりした過去の過ちに言及し、改革・開放路線の「初心」を取り戻すべきだと説いた。
 政府批判とも取られかねない内容だけに、すぐにネット上では閲覧できなくなった。

 別の経済メディア『第一財経』は1月3日の社説で、政治権力が市場から手を引き、権限を手放すことが重要だと提言した。企業や市場への管理を強める習指導部に政策の見直しを求めているようにも読める。

 メディアだけでなく、エコノミストの間でも楽観と悲観が入り交じる。

 楽観派を代表する元世界銀行副総裁、林毅夫氏はネットメディア「観察者網」が1月18日に掲載した講演録で「これまでも中国崩壊論が繰り返されたが、我々は安定した成長を保持してきた」と主張した。

 林氏は「世界で最も競争力を持つ電気自動車(EV)、太陽発電、リチウム電池の発展は、民間企業が主力だ」と述べ、国有企業を優遇し、民営企業を締め付ける「国進民退」との批判はあたらないと指摘。人口構造の変化による労働力の減少についても、技術革新や教育水準の向上の余地が大きい「後発国の優位」がまだ存在するとして、「先進国の理論」によって中国を分析するのは誤りだと強調した。
中国経済の「衰退論」に、習近平指導部が神経をとがらせている。
2024年の経済運営方針を協議した中央経済工作会議は「宣伝と世論の誘導を強化し、中国経済の光明論(楽観論)を鳴り響かせる」と号令をかけた。スパイ摘発を担当する国家安全省が「中国衰退という虚偽の言説を作りだし、体制を攻撃」することに警告を発する物々しさだ。

 強まる言論統制は景気の先行きを巡り国内でも議論があることの裏返しだろう。中国経済誌『財新週刊』(23年12月25日)は、空理空論よりも事実を重視する「実事求是」への回帰を求める社説を掲載。文化大革命期に、経済が破綻しながら「形勢は良い」と事実をねじ曲げたり、先進国に背を向けて鎖国状態に陥ったりした過去の過ちに言及し、改革・開放路線の「初心」を取り戻すべきだと説いた。政府批判とも取られかねない内容だけに、すぐにネット上では閲覧できなくなった。

 別の経済メディア『第一財経』は1月3日の社説で、政治権力が市場から手を引き、権限を手放すことが重要だと提言した。企業や市場への管理を強める習指導部に政策の見直しを求めているようにも読める。

 メディアだけでなく、エコノミストの間でも楽観と悲観が入り交じる。

 楽観派を代表する元世界銀行副総裁、林毅夫氏はネットメディア「観察者網」が1月18日に掲載した講演録で「これまでも中国崩壊論が繰り返されたが、我々は安定した成長を保持してきた」と主張した。

 林氏は「世界で最も競争力を持つ電気自動車(EV)、太陽発電、リチウム電池の発展は、民間企業が主力だ」と述べ、国有企業を優遇し、民営企業を締め付ける「国進民退」との批判はあたらないと指摘。人口構造の変化による労働力の減少についても、技術革新や教育水準の向上の余地が大きい「後発国の優位」がまだ存在するとして、「先進国の理論」によって中国を分析するのは誤りだと強調した。

習政権、経済低迷への「悲観」許さず 「明るい展望」宣伝に躍起 スパイ機関の摘発警戒も

中国観察

2024/2/18 01:00

三塚 聖平
 中国の習近平国家主席。習政権は経済の現状や見通しが明るいという「中国経済光明論」の宣伝に力を入れている=2019年10月(ロイター)

中国の習近平政権が減速傾向にある経済への悲観論を打ち消し、その現状や見通しは明るいとする「中国経済光明論」の宣伝に躍起になっている。前向きな統計を強調する一方、否定的な見方が庶民に広がらないようにメディアへの圧力も強まっているようだ。中国経済の実態が分かりにくくなり、経済政策の方向性が不透明になることが懸念されている。
習国家主席は10日の春節(旧正月)を控えた7日、北京の人民大会堂で中国の経済団体、中華全国工商業連合会の責任者に対して、「民間経済の関係者が発展の自信を固め、中国経済光明論を共同で提唱するよう導かなければならない」と求めた。「光明論」で社会を「正しく導く」・・・


<視点>暗雲漂う中国経済 統制強化に不安と嫌気 中国総局・新貝憲弘

2024年2月7日 06時00分
 中国経済に暗雲が漂っている。上海の株式市場は昨年後半からの下落傾向が止まらず、中国政府の景気対策は「見かけだけで中身がない」(政府系シンクタンク研究者)と見透かされて効果はいまひとつ。しかも「市場や企業にとって、政策のないことが最良の政策の時もある」「政府の権限縮小こそが経済の活力」(経済メディア)とまで皮肉られる始末だ。
 原因として不動産危機や地方財政難などが挙げられるが、根本には習近平(しゅうきんぺい)政権の政策に対する「信頼の欠如」(独立系シンクタンク)がある。統制強化が経済にも及び、民間企業は改革開放路線が終わるのではと疑心暗鬼に陥り、外資も嫌気がさしている

 その一例が習政権が今年の経済方針の一つに挙げた「中国経済光明論」。前向きな話題を積極的に取り上げて景気浮揚のムードを喚起しようという「経済宣伝と世論の誘導」で、昨年の輸出入実績では自動車輸出が日本を抜いて世界一となったことや東南アジアとの貿易拡大を官製メディアがアピールした。メディアを管理する中央宣伝部の意向を受けたものとみられるが、米ドルベースで総額が減少した点や欧米との貿易縮小には触れなかった。

 都合の悪いデータの公表を控える傾向も目立つ。国家統計局は、昨年7月分から16~24歳の若者失業率の公表を取りやめた。大学新卒者の就職難で若者の失業率が社会問題になったことが背景にあったといわれ、昨年12月分から学生分のデータを除いて公表を再開した。この結果、数値は改善したが実態は分かりにくくなった。

 さらに「反スパイ法」外資の中国ビジネス環境に影を落とす。担当部門の国家安全部は「発展と安全は両輪」と強調するが、国家の利益に反する行為を行ったとして日本人を含めた外国人を拘束しており、外国企業の腰が引けているのは言うまでもない。

 これでは「中国市場を選ぶことはリスクではなくチャンスだ」(李強(りきょう)首相)と呼びかけても誰も信じないだろう。中国の大手IT企業に勤める友人は「中国経済を動かしているのは中央宣伝部と国家統計局、国家安全部の3部門だと言われている」と憂える。

 経済誌「財新週刊」も社説で、今求められるのは「教条(主義)から脱却して現実と向き合うことだ」と中国経済光明論をやゆした。ただ、習氏の権力が強すぎて誰も異論を唱えられない雰囲気があり「当面は統制強化の流れは変わらない」(友人)と諦めの声が漏れる。

 先の社説は、社会全体が混乱した文化大革命(1966~76年)に触れ国民経済は崩壊の危機に瀕(ひん)しても政府は『状況は良い』『ますます良くなる』と唱え、先進国だけでなく周辺国からも取り残された」と指摘した。毛沢東(もうたくとう)に誰も逆らえなかった当時と同じ歴史を繰り返すのだろうか。(中国総局)


習近平政権の経済危機対策の柱は「中国経済の未来は明るい」キャンペーンだ!~数字は捏造、懐疑的言論には秘密警察の取り締まり

023.12.22 石 平

習近平、自信を失ったのか

12月11日、12日の両日間、中国共産党政権が年に一度の「中央経済工作会議」を開いた。毎年の年末に開かれる恒例の会議として、翌年の経済運営の方針を打ち出す重要会議として位置付けられているが、今年の場合、中国経済が崩壊最中の状況であるから、どのような「救命措置」が打ち出されるのかは当初ら大変注目された。

その中で、大きな注目を集めたのは、会議に対する習近平主席の姿勢である。会議開幕の11日、習主席は最高指導部メンバー全員を率いて出席し、恒例の「重要講話」を行なったが、12日の会議には完全に欠席したことは判明されている。

12日、習主席はベトナムへの国事訪問を始めたわけだが、新華社通信の報道によると、彼がハノイに到着したのはその日の正午頃であるという。この到着時間から逆算すれば習主席が出発したのは12日の朝であるはず、2日目の「中央経済工作会議」を完全に欠席していることが分かる。

2012年11月に習近平政権成立以来、毎年恒例の「中央経済工作会議」に習氏自身が途中から欠席するのは初めてのこと、最高指導者が中央の重要会議を途中欠席するのもやはり異例なことである。今回の場合、「ベトナム訪問出発のために会議を途中欠席」と解釈することもできようが、それなら習氏自身の一存で会議を1日早めに開くこともできるから、「ベトナム訪問」は途中欠席の必然な理由にならない。

結局、習氏は、党総書記・中央財経委員会主任として中国経済運営の司令塔でありながら、会議が来年の政策方針・経済救済措置を最終的に打ち出す場面を意図的に回避することで、自らの責任回避を図ったのであろう。そしてそれはまた、習氏自身が来年の経済運営に自信を失っていることの証拠であると見て良い。

当然、株価は下落

最高指導者はこのようないい加減な姿勢であれば、民間と経済界は当然、「中央経済工作会議」の結果に完全に失望している。それは、会議閉幕翌日の13日の株市場の反応を見れば分かる。

12日、上海総合指数は依然として3000ポイントの大台を維持していだか、13日、取引開始の時点からいきなり3000ポイントを割ってしまい、前日比34.68ポイント(1.15%)安の2968.76ポイントで取引を終える。同じ日の深圳市場でも、深圳総合指数は1.21%安となった。そして14日、15日の両日とも上海株が下がり続け、15日には2942.55ポイントの終値で今週の取引を終えた。

来年の経済運営の方針を大々的に示したはずの中央経済工作会議はこのようにして、株市場には完全に見放されたのである。

こうなったことの最大の理由は、「中央経済工作会議」が来年の経済運営の方針に関しては、空疎なスローガンの羅列今までの常套文句を並べる以外に、内実の伴った政策措置はほとんど打ち出せなかったことにある。だからこそ習近平自身も途中欠席という異例な対応を取ったのだが、民間の反応はやはり失望の一色である。

注目の「中国経済光明論」

こうした中で、会議が打ち出した来年の経済運営の方針、あるいは「経済救助策」のうち、一つ大変注目されるものがあった。それは、「経済宣伝を強化し世論を導き、中国経済光明論(楽観論)を高らかに唱えよう」、というものである。このような「経済運営の方針」が中央会議によって打ち出されたのは前代未聞のことだから、中国国内では大変な注目を集め、一部のメディアはそれを関連ニュースのタイトルにもしている。

今まで、隠蔽や粉飾を常套手段とする「宣伝工作」というのは、中国共産党政権が慣用する「伝家の宝刀」であるが、それが「経済措置」として使われるのは初めてのこと。しかしそれは裏返しで言えば要するに、今の習近平政権が「宣伝工作」「世論工作」を展開していく以外に、中国経済を救助するための有効なる措置をもはや何も打ち出せない。それこそは中国経済が救いのない絶望的な状況に陥っていることの証拠である。

上述の前代未聞の「経済方針」に従って、中国の国内メデイアは早速、「中国経済光明論を唱えよう」との宣伝キャンーペンを開始、ネット上でも「光明論一色」の世界が出現しているが、彼らは今後おそらく、「経済宣伝=粉飾工作」を行い、深刻な経済状況を覆い隠して嘘八百の「中国経済楽観論」を唱えていくこととなろうが、経済の実態と国民の実感からあまりにもかけ離れる「経済宣伝」は経済状況の改善にどれほどつながるのかが全く疑問。

国家統計局が「数字の解釈良くする」?

こうした中で、12月13日、国家統計局は康義局長の主宰下で、「中央経済工作会議の精神を伝達・学習する会議」を開いた。その中で康局長は「全局員が思想・行動の両面において習近平総書記と党中央との高度なる一致を保たなければならない」と訓示した上で、「数字の公布と解釈を良くし、社会の予測と期待を正しく導く」ことを、統計局の今後の「工作方針」として発表した。

そしてそれはまた、国内では大変注目を集めて一部のネットニュースのタイトルにもなっているが、よく考えてみれば、本来、経済運営の職能担当部門ではなく、数字の統計を専門とする統計局が、経済救助策を打ち出した「中央経済工作会議の精神を学習する」こと自体はそもそもおかしい話であろう。その上で、局長によって示された「数字の公布と解読を良くし、社会の予測と期待を正しく導く」はさらに怪しい

「数字の公布と解釈を良くする」というのは、要するに統計局が肝心の「数字の統計」よりも「数字の公布と解釈」に主眼を置き、それらを「良くする」ことによって、中国経済に対する「社会の予測と期待を正しく導く」としている。だが、ここでの「正しく導く」は今の中国では要するに、政権あるいは政府の望む方向へと導くとの意味であり、まさに「中央経済工作会議」が打ち出した、「経済宣伝を強化し世論を導き、中国経済光明論を称えよう」との方針に合致しているのである。

つまり国家統計局はここで、今後は中央の「経済宣伝」に呼応して、国内世論を「経済光明論」へと導くための「数字の公布と解読」を行っていくことを宣言している。それは理解するようによってはまさに「嘘の数字の偽造宣言」そのものであろう。「世論」を「中国経済光明論」へと「正しく導く」ためには、国家統計局は今後、嘘の数字でも平気で発表していくことを自ら示唆しているのである。

中国の国家統計局今まではずっと「数字偽造の常習犯」ではあるが、今回のように、遠回しの言い方でありながらも堂々と「数字捏造宣言」を出したのは初めてのこと。今後、その数字偽造はおそらく、より一層のやりたい放題となるのであろう。

「中国衰退」と言えば秘密警察が取り締まられる

そして統計局と並んで、本来、国家の経済運営とは全く無関係の国家安全部(秘密警察組織)も動いた。12月15日、国家安全部はその公式アカウントで「経済安全を守る壁を築こう」という論評を掲載。「中央経済工作会議の精神」を受けて、国家安全部としては「全力をあげて中国経済の安全を守る」ことを誓った。

その中で国家安全部は、「中国経済をおとしめるさまざまな常とう句が後を絶たない。その本質は『中国衰退』という虚偽の言説を作り上げ中国の特色ある社会主義体制を攻撃し続けることにある」として、国家安全部としては今後、こうした論調を「国家の経済安全を危害するもの」として徹底的に取り締まることを宣言している。

つまり国家安全部はここで、「経済宣伝を強化し世論を導き、中国経済光明論を称えよう」という中央経済工作会議の方針に従って、それに反する「中国経済衰退論」を秘密警察の力で封じ込めていくことを宣しているが、今後、中国国内ではおそらく、中国の経済状況に対して否定的意見を呈する全ての言論はその取締りの対象となり、「中国経済光明論」だけは許されるのであろう。

こうしてみると、習近平政権が考えている今後の「中国経済救助策」の全容が何となく分かってくるのである。つまり、宣伝部門を総動員して「中国経済光明論」を唱えながら、統計局を動員して「光明論」を支持する嘘の数字を乱発する。その一方においては、秘密警察を動員して「光明論」に反する声を徹底的に封じ込める。これで中国経済はまさに「前途光明」であって薔薇色の一色となっていくのである。

つまり今後、中国経済の成長を背負って「支える」のはまさに習近平政権ならではの「三種の神器」、中央宣伝部、国家統計局、そして国家安全部なのであるが、このような「経済振興策」の下では、中国経済は崩壊しない方がおかしいであろう。

習近平政権、中国不動産バブル崩壊から「国有銀行」まで大ピンチで自滅…世界経済に波及する「ヤバい影響」

真壁 昭夫 によるストーリー

不動産バブル崩壊の負の影響

3月27日、時価総額で世界最大の中国工商銀行(ICBC)は2023年通期の決算を発表した。同行の収益性は、住宅ローンの焦げ付き増加などで低下した。

5大国有銀行の一つである中国交通銀行の副社長は決算会見で、不動産企業の資金繰りが改善するには時間がかかり、関連分野の債権など資産の価格下落圧力は高まるという旨の「警告」を発した。

不動産バブル崩壊の負の影響は、中小の銀行にとどまらず大手の国有銀行にも徐々に波及しつつある。中国建設銀行は、大手デベロッパー“世茂集団(シーマオ・グループ)”の清算を香港の裁判所に申し立てた。国有銀行でさえ、不動産企業のリスクは危険水域に近付きつつあるようだ。

photo by gettyimages© 現代ビジネス

それでも、3月下旬、中国政府は銀行に不動産向けの融資を増やすよう要請を強めた。国有銀行などは当局の方針に従わざるを得ない。そうした状況下、中国政府は供給力の強化を優先している。

世界市場での中国企業のシェア拡大を目指しているはずだが、福祉政策の拡充などは限定的で、国民の節約志向は変わらないだろう。今後も、資産価値の下落、資金需要の低迷によって、中国経済の低迷が続きそうだ。

5大国有銀行にも波及

2020年8月、不動産向けの融資規制である“3つのレッドライン”の実施により不動産バブルは崩壊した。中国の金融業界では、不動産向け融資の割合が高い地方の中小銀行の不良債権が増えた。自力での事業継続が難しくなるケースもある。

4月15日、遼寧省の錦州銀行は上場を廃止し、政府系ファンドの傘下に入る予定だ。事実上の破たん状態にあるとの見方も多い。

そうした負の影響は、5大国有銀行(ICBC、中国交通銀行、中国建設銀行、中国銀行、中国農業銀行)に波及し始めた。

2023年、5行の収益性は低下。不動産関連分野での不良債権の増加が響いた。地方融資平台などへの融資の焦げ付きも業績低迷の一因だ。5行の経営陣は不動産セクターのリスクは当面解消されないだろうと先行きへの警戒を強めた。

中国の銀行にとって、融資対象になる不動産企業と破たん懸念の高い貸出先を明確に分ける必要がある。信用リスクの低さから国有・国営企業への貸し出しは行いやすい。一方、政府の資金援助などが期待しづらい、民間の企業に対する融資態度は硬化するだろう。

TLAC債の発行が意味するもの

融資が伸び悩むと、民間の不動産業者の倒産は増え景況感は追加的に悪化する。失業者は増加し、家計の住宅ローン返済などの負担は増える

中国政府は、そうした状況を避けたいはずだ。3月下旬、中国政府は国内の銀行に対して、政府が作成した“ホワイトリスト”の不動産業者への融資を加速するよう要請した。地方政府が必要とするプロジェクトへの資金提供を急ぐよう銀行に指示を強めた。

4月9日のアジア時間、ICBCは最大で400億元(8400億円)の総損失吸収力(TLAC)債を発行すると報じられた。一般的に、TLAC債は銀行の経営が悪化した際、投資家に損失を転嫁し公的資金を注入せず預金者を保護する手段だ。

今のところ、中国政府は公的資金の注入で不良債権処理を進める考えを示していないTLAC債発行で、銀行に不動産分野のリスクを負担させ、不動産業者の延命を目指す政策方針はより鮮明化した。他の国有銀行も同様の債券の発行を準備しているようだ。

産業政策面で中国政府は、EVやバッテリー、旧世代の製造技術を応用した半導体の製造強化をより重視する。狙いは、輸出増によって景気を回復させることだろう。国有企業などへの産業補助金を積み増し、価格競争力を高め輸出増加につなげる。

それによって、景気の回復を目指す。景況感が改善すれば、不動産企業の破たん処理を経営者の責任で進める考えもあるかもしれない。その損失吸収のため、TLAC債発行を当局は認めたのかもしれない。

世界経済の下振れリスクに

しかし、バブル崩壊後のわが国の経験に基づくと、ゾンビ企業の延命は経済のさらなる悪化につながる。

足許、中国の需要不足は深刻だ。本来であれば中国は景気対策として公共工事などを増やし、政策的に需要を注入しなければならない。

しかし、政府の経済政策は供給力の拡大に焦点が向いている。過剰生産能力はさらに増加し、国有銀行の収益性にも下押し圧力がかかるだろう。

不動産分野で国有銀行などに融資積み増しを求める。産業分野では、国有企業の生産能力を強化し輸出競争力の向上を目指す。

大型のバブルが崩壊したあと、そうした経済政策で本格的な景気回復を目指すことは難しい。今後も不動産分野などで不良債権は増えていくだろう。

状況によっては、1997年にわが国が経験したような金融システム不安が中国で起きる恐れもある。それが世界的な金融危機に発展するとは考えづらいが、世界経済の下振れリスク要因になることは避けられないとみる。

中国経済の減速に関する五つの誤解―米専門家

Record China によるストーリー

米誌フォーチュン(電子版)にこのほど、「中国経済の減速に関するこれら五つの誤解は米国の自己満足につながる可能性があると専門家が警告している」とする記事が掲載された。© Record China

米誌フォーチュン(電子版)にこのほど、「中国経済の減速に関するこれら五つの誤解は米国の自己満足につながる可能性があると専門家が警告している」とする記事が掲載された。

中国メディアの環球時報が9日、要約して伝えたところによると、記事はまず、ジャネット・イエレン米財務長官の訪中に触れ、「意見の相違が高まる中での緊張緩和を目指しており、米中経済関係への関心が高まっている」とし、「中国経済が成長鈍化、不動産危機、半導体などの主要技術に対する米国の輸出規制に苦しむ中で、協力関係の改善を求める動きが出ている。そのため、中国の数十年にわたる成長の歴史が終わりを迎えるという予測が出ている」とした。

その上で、「トップクラスの中国問題専門家は、そのような悲観論に対して、米国が自己満足に陥り、アジアにおける経済と安全保障の優先事項を危険にさらす可能性があると警告した」とし、米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所の上席研究員、ニコラス・ラーディ氏がこのほど、米誌フォーリン・アフェアーズへの寄稿で、「中国の成長は近年鈍化しているが、今後数年間で米国の2倍の速度で拡大する可能性が高い」とし、中国経済に関する五つの誤解を指摘したことを取り上げた。

それによると、一つ目の誤解は、中国経済はもはや米国に追いつき追い越すことができないとの見方に関するもので、中国の国内総生産(GDP)は、2021年の米国のGDPの76%から23年の67%に確かに低下したが、ラーディ氏はその原因を、外国資本の流出や為替レートの下落といった「一時的な」要因に帰した。国際通貨基金(IMF)は、今年中国の物価が上昇し、人民元換算で中国のGDPが押し上げられると予想している。同氏は「米ドル換算の名目GDPは、ほぼ確実に、今年再び米国のそれに近づき、約10年以内に米国のそれを超える可能性が高い」と付け加えた。

二つ目の誤解は、中国の所得、支出、消費者信頼感が弱いというものだが、ラーディ氏はそれがデータによって裏付けられていないとし、むしろ、昨年の1人当たり実質所得は6.1%増加し、消費の伸びがそれを上回ったと述べた。

三つ目の誤解は、中国のデフレが定着しているというものだ。ラーディ氏によると、消費者物価は昨年ほぼ停滞したが、食品とエネルギーを除いたコア物価は0.7%上昇した。確かに、工具や特定の原材料の価格は23年に下落したが、それはエネルギーやその他の商品の価格低下によるもので、その後、今年に入ってから反発している。

四つ目は不動産投資の減少に関連しており、これは伝統的に中国経済の大きな原動力となってきた。確かに、23年の住宅着工件数は21年の半分だったとラーディ氏は認めたが「しかし、その背景を見なければならない。同じ2年間で、不動産投資の減少はわずか20%だった。開発業者がそのような支出のより多くの割合を、以前に開始した住宅プロジェクトの完成に割り当てたためだ。23年には完成件数が7億2433万平方メートルに拡大し、初めて住宅着工件数を上回った」と説明した。

五つ目の誤解は、中国の企業家らが国外に逃亡しているというものだ。ラーディ氏によると、総投資に占める民間部門の割合は14年以降低下したが、その主な原因は不動産市場によるものだ。不動産を除く民間投資は昨年10%近く増加した。あるデータによると、ファミリービジネス(同族企業)の数が23年には2300万社増えて1億2400万社に達した。

ラーディ氏は「中国は多くの問題に悩まされているが、こうした問題を誇張することは誰の役にも立たず、中国が西側諸国に突きつける非常に現実的な課題に直面して自己満足に陥る可能性さえある。それは特に米国に当てはまる」と警告し、「中国は今後も世界経済の成長の3分の1に貢献し、経済規模を拡大するだろう」と予測した。(翻訳・編集/柳川)

中国に成長をもたらした「輸出頼み」策、今は通用しない

Milton Ezrati によるストーリー

中国に成長をもたらした「輸出頼み」策、今は通用しない© Forbes JAPAN 提供

中国政府は商品やサービスの内需不足を、電気自動車(EV)など環境に負荷をかけない製品を外国に輸出して補うことで、自国の経済問題を解決するというやり方でいけると判断した。だが、輸出主導で成長した25年前と異なり、世界は今、中国の戦略に協力する気がないようだ。中国指導部の願望とは裏腹にこの戦略はうまくいっておらず、今後も成果は得られないだろう。

中国経済が切羽詰まった状態であることに疑いの余地はほぼない。2021年に不動産開発大手の恒大集団(エバーグランデ)が経営危機を認めたことから始まった不動産危機は悪化の一途をたどっている。当局が長い間、問題を放置したために、不動産危機は住宅販売と建設活動の低迷を招いている。今年1~2月の住宅販売額は前年同期比33%減、着工は同30%減だった。

問題はそれだけにとどまらない。不動産危機により個人と金融機関は多額の怪しげな債務を抱え、成長を支える金融に負荷をかけている。加えて、住宅販売減は不動産価値を押し下げた。それにともない家計資産は目減りし、消費を抑制している。また、歳入を不動産開発に頼っている地方自治体は不動産危機により債務の返済が困難になっており、住民に基本的なサービスを提供することすら難しくなっている自治体もある

中国の指導部はこうしたさまざまな問題への対応を誤った。何年もの間、不動産危機に向き合わなかったため、問題はさらに広がった。直近の対応も、長期化する不動産開発企業の破綻の影響に対処するには不十分だ。小幅な利下げの効果は何カ月もみられず、中国人民銀行が小幅な利下げに固執していることから、追加で金利を引き下げてもほぼ無駄だろう。また、国有銀行が融資を行う「ホワイトリスト」というプロジェクトの予算は少なく、不動産開発企業が抱える数千億ドル規模の損失を埋めることはできない。製造業と輸出を強化しようとする現在の取り組みも失敗だ。

確かに輸出主導の成長モデルは過去にはうまくいった。実際、このモデルにより中国は1990年代から2010年代にかけて大きく成長した。だが今は状況が違う。当時、中国は輸出に頼るしかなかった。あまりに発展途上で消費者の需要が乏しく、内需は必要なインフラの整備に頼っていた。国内で生産された製品を自国で消費することはできなかったのだ。

最も重要なのは、当時の世界の市場が中国の求めに容易に対応できたことだ。輸出し始めたころの中国の世界輸出におけるシェアはわずか2%程度だったが、現在では15%を占めており、各国が自国の経済を損なうことなく中国の製品を今以上に受け入れることはかなり難しくなっている。中国が25年前と同じ戦略をとれる状況にはない

世界は中国からの輸出の受け入れに否定的であることがますます鮮明になっている。米国は2018年と2019年に中国製品に高い関税を課した。現在はEVやバッテリーなどへの追加関税を検討している。欧州連合(EU)は域内市場での中国製の安価なEVのダンピングに不満を募らせており、報復関税を検討中だ。

英国は、国内にあふれる中国製のトラクターや建設機械に苦慮している。こうした事態は中国国内での住宅建設の減少によりそれら製品に対する需要が減っているためであることは間違いない。英政府はアンチダンピング調査に着手しており、EVについても問題視している。

ブラジル、インド、インドネシア、チリ、メキシコは、鉄鋼やセラミック、化学製品での中国のダンピングを指摘している。チリは中国の鉄鋼に15%の関税をかけることを検討中だ。インドは中国のボルトや鏡、真空断熱フラスコをダンピング品目に追加インドネシアは、中国製品が多く流通することで国内産業が危機に瀕しているとして、合成繊維についてアンチダンピング関税を検討している。

全体として、中国の輸出への反発はかなりのものだ。今年に入ってからだけでも、世界中の政府が中国に対し70以上の輸入関連の措置を発表している。2021年と2022年に取られた措置は50だった。

明らかに、物事は25年ほど前のようには進まないだろう。ほぼ輸出に頼って経済を成長させるモデルは失敗する。過去に成功した記憶があるため、中国政府の計画立案者や政策立案者はおそらく当面は気づかないだろうが、時が経てば状況を悟るはずだ。その時点で中国政府はまだ続いている不動産危機に再び取り組み、それによって内需を拡大するといいだろう。だが内需の拡大は、発展した経済では解決策ではない。中国の経済はすでに発展している。(forbes.com 原文

【中国】経済失速のアリ地獄にハマった習近平テコ入れ策の無意味

アサ芸biz によるストーリー

【中国】経済失速のアリ地獄にハマった習近平テコ入れ策の無意味© アサ芸biz

中国が最大の経済的試練に直面している。鄧小平が改革開放という「大改革」を始めて以来のことだ。

この難局に、習近平国家主席は再構築のテコ入れをすべく、従来の先端科学技術を一段と強化した「技術大国化」、毛沢東返りを思わせる「中央集権的計画経済」への回帰、さらに軍事力を武器に世界の産業の支配を狙うが、果たしてこうした野望は実現できるのか。結論から言うと、それには無理がある。3つの間違いがあるからだ。

最大の間違いは、習近平政府は「消費者」を軽視していることだ。中国経済に不動産が占める比率はGDPの約37%。不動産不況の中で景気回復を起こすには景気刺激を行って消費者心理を改善することが基本だ。が、政府は貯蓄を最優先している国民に社会保障や医療サービス、老後の保障などを打ち出し、消費に向かわせる手を打たない。「安心」できる社会が見通せなければ、国民はカネを使わないで、貯蓄を優先するのは当然だ。繰り返すが、習近平政府は消費喚起に消極的なのだ。

2つ目の間違いは、国内消費の不足を、輸出で補おうとしている点。世界は今、中国が世界に輸出しまくった2000年代のような自由貿易体制は過去のものになっている。米・トランプ元大統領が、中国が知的財産権を侵害していることを理由に中国商品の輸入に関税をかけたのをきっかけに、民主主義体制側が一斉に厳しく対応したばかりか、政治、外交、安全保障を含め独裁政権国家と相容れなくなった

それを象徴するのがEV(電気自動車)だ。自動車発祥の米国をはじめ自動車を国家の主要産業に育てたドイツ、フランスなど欧州が中国製のEVに自国メーカーが駆逐されることを恐れ、パニックに陥ったほどだ。つまり、自国の繁栄のみを重要視し、相手の事情にお構いなく輸出攻勢をかければ反発を買い、最悪は敵対関係に至る

資本主義国家の場合は、民間企業が調整能力をもっているため問題が起こっても回避することが可能だ。しかし独裁の中国では、問題が習主席に届いた時点で、多くが最悪の事態になっている。しかもその習主席は「裸の王様」だから適格な判断が難しい。

さらに、3つ目の誤りだ。改革開放後、中国経済を支えてきたのは、およそ5000~8000万社あると言われる無名の中小零細企業。ところが、中国政府は国家政策に大企業と国有企業を重んじ、それ以外に対しては気まぐれに規則を改廃し、大きく成長する道を塞いできた

明らかな問題があるにもかかわらず中国が方向転換をできないのは、習主席が「聞く」耳を持たないからである。中国の復活は簡単ではない。(団勇人・ジャーナリスト)

参考文献・参考資料

「中国経済光明論」が跋扈するなかで実態がみえにくくなる懸念 ~スローガン在りきの政策運営の背後でデフレ懸念に繋がる動きは一段と深刻化する可能性~ | 西濵 徹 | 第一生命経済研究所 (dlri.co.jp)

《全文公開》「中国経済光明論」の宣伝強化と中国経済の悲観的見通しの公表制限の動向 (cistec.or.jp)

「中国経済光明論」の宣伝強化と中国経済の悲観的見通しの公表制限の動向 (cistec.or.jp)

論壇・論調:中国経済“衰退論”巡り強まる言論統制 入り交じる楽観論と悲観論 河津啓介 | 週刊エコノミスト Online (mainichi.jp)

習政権、経済低迷への「悲観」許さず 「明るい展望」宣伝に躍起 スパイ機関の摘発警戒も 中国観察 - 産経ニュース (sankei.com)

<視点>暗雲漂う中国経済 統制強化に不安と嫌気 中国総局・新貝憲弘:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

習近平政権の経済危機対策の柱は「中国経済の未来は明るい」キャンペーンだ!~数字は捏造、懐疑的言論には秘密警察の取り締まり(石 平) | 現代ビジネス | 講談社(1/5) (gendai.media)

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失望広がる

中国人不在「日本の観光業復活のカギ」はペットだ インバウンド不調の穴を埋める存在になる | 国内経済 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)

習近平政権、中国不動産バブル崩壊から「国有銀行」まで大ピンチで自滅…世界経済に波及する「ヤバい影響」 (msn.com)

中国経済の減速に関する五つの誤解―米専門家 (msn.com)

中国に成長をもたらした「輸出頼み」策、今は通用しない (msn.com)

【中国】経済失速のアリ地獄にハマった習近平テコ入れ策の無意味 (msn.com)

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