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乃木坂46の12年の歴史を、次の未来へ繋いでいく。「12th YEAR BIRTHDAY LIVE」最終日を振り返る。

【3/10(日) 乃木坂46 @ さいたまスーパーアリーナ】

乃木坂46にとって、2023年はあまりにも大きな節目の一年であった。2月に最後の1期生・秋元真夏が卒業し、それに伴い、3期生の梅澤美波が新キャプテンに就任。また、3月には、最後の2期生・鈴木絢音が卒業。5月には、2022年末をもってグループでの活動を終了していた1期生・齋藤飛鳥の卒業コンサートが行われた。長年にわたりグループの礎を築いてきた1期生、2期生が全員卒業した後、3期生、4期生、5期生のみの体制で新しいスタートを切った乃木坂46。夏には、毎年恒例の「真夏の全国ツアー」に新体制で臨み、その最終公演でキャプテンの梅澤は、「今、先輩たちの跡をしっかり受け継ぐことができたと証明できたと思います。」と同ツアーの歩みを振り返った上で、「私たちが乃木坂46です。」と力強く宣誓した。その力強い言葉は、これから先は、3期生、4期生、5期生で乃木坂46の未来を担っていくという深い覚悟の表明であった。その言葉に違うことなく、2023年の乃木坂46はこれまで以上にライブ動員の規模を拡大し、決して現状維持に甘んじることなくグループの活動のスケールを広げていく意志を高らかに示してみせた。

そうした大きなターニングポイント、かつ、さらなる飛躍の一年となった2023年を経て迎えた2024年。この2月、グループはデビュー12周年を迎え、3月7日(木)から10日(日)の4日間にわたり、周年ライブ「12th YEAR BIRTHDAY LIVE」がさいたまスーパーアリーナで開催された。毎年この時期に開催されるのが恒例となっているバースデーライブは、グループの歴史の集大成としての意味合いが非常に強いライブで、最初の数年間は、それまでにリリースした全ての楽曲を披露していた。現在は、総楽曲数があまりにも増えたため時間の制約的に不可能となってしまったが、グループの歴史を総括するという大元のコンセプトは現在に至るまで脈々と引き継がれている。今回のバースデーライブは、1日目はグループ結成の2011年から2014年まで、2日目は2015年から2017年まで、3日目は2018年から2020年まで、4日目は2021年から2024年まで、というように、これまでの歴史を4つに区切った上で、各期間から厳選した全123曲を披露するという構成だった。各曲において1期生、2期生が担っていたポジションには現役メンバーが入り、この4日間を通して彼女たちは、かつて憧れの先輩たちが着ていた衣装を身にまとい、憧れの楽曲を歌う、という経験を幾度となく積み重ね続けた。その意味で言えば、近年の、その中でも特に今回の構成のバースデーライブは、グループの歴史の集大成の表現であるのと同時に、卒業メンバーから現役メンバーへの継承が為される場としての意味合いが非常に強いライブであったと言える。


現在、最も上の代である3期生がグループに加入したのが2016年。本格的にライブのステージに立ち始めたのが2017年。それ以降、1期生、2期生の背中を追いかけ続けてきた3期生は、今や4期生、5期生に対して先輩としての背中を見せながらグループ全体を牽引する立場になった。3期生を中心とした現体制の乃木坂46を最も象徴する楽曲の一つが、今回のバースデーライブでも目覚ましい輝きを放っていた"人は夢を二度見る"だ。

この曲は、3期生の山下美月と久保史緒里がWセンターを務めた新体制一発目のシングル曲。いつか自分も憧れの先輩たちのようなアイドルになりたい、という一つ目の夢。そして、先輩たちが卒業した今、次は自分たちこそがグループを担う存在でありたい、という二つ目の夢。この曲で歌われているテーマは、3期生だけでなく4期生にも響き合うもので、3期生をバックアップしながら、5期生に先輩としての頼もしい背中を見せる4期生の存在感が、この日の公演の随所で際立っていた。そうした、期を超えて支え合うメンバー同士の姿は、歴代の先輩メンバーたちが大切に育み続けてきたグループの精神性(それは、自分よりも他者を重んじる利他の精神、そして、そうした一人ひとりの思いやりの心が一つに調和した時に生まれる慈愛のオーラ、温かな一体感、などというように様々な言葉で表現できるものだと思う。)が確かに継承されていることの何よりの証左であると思う。


そして、その精神性は、2022年2月に加入した最も新しい世代である5期生にも確実に継承されている。この日のライブの中盤のハイライトを担ったのが、5期生を主役に据えたパートだった。まず、2022年1月に先輩と初めて対面した時の映像、初の振り入れの映像がビジョンに流れ、「加入して2年、彼女たちの物語はまだ始まったばかり」の文字が映し出される。その後、次々と披露される5期生楽曲。彼女たちにとっての始まり一曲"絶望の一秒前"。先輩たちへの憧れの気持ちをまっすぐに歌った"いつの日にか、あの歌を・・・"。そして、この日のライブ全体における眩いハイライトとなったのが、基本的に各曲が短縮版で歌われるバースデーライブの中で例外的にフルでの披露となった"17分間"だった。

5期生楽曲の一つでありながら、3期生、4期生がライブパフォーマンスに合流するというサプライズ的な展開があり、それはまさに、この歌が、「5期生の歌」を超えて、「乃木坂46の歌」に昇華された瞬間であったように思う。(ライブの終盤では、5期生楽曲"バンドエイド剥がすような別れ方"が、同じくグループ全員で披露された。)加入してからの2年間、5期生のメンバーは、3期生、4期生と別で活動することが多く、それ故に彼女たちは、「乃木坂46の5期生」と名乗ることが多かった。それでも、きっと今回のライブを通して、彼女たちは堂々と「乃木坂46」と名乗る自信を得ることができたのではないかと想像する。

MCパートで、5期生の冨里奈央は、「歴史を紡いでいける人になりたい。」と宣言した。井上和は、"誰かの肩"の曲中で、「愛と優しさの輪で繋がったこのグループと、皆さんのことが大好きです。」と語った。なお、5期生の各メンバーの想いは、2月に発売された5期生の写真集『あの頃、乃木坂にいた』に掲載されているインタビューの中でも語られている。その中でも、一ノ瀬美空の「私たち5期生が先輩方にそうしていただいたように、元気のない子が近くにいたら躊躇なくパッと手を差し伸べて、優しく寄り添える人でありたいです。グループに加入してみて乃木坂46の美しい輝きはメンバーの内面から放たれているものだと感じました。私もその光の一つになれる日を目指して進んでいきたいと思います。」という言葉は、まさに上述したグループの精神性が、5期生にも確かに継承されていることを物語っているように思う。


この日のライブの終盤、5月の卒業を控えた3期生の山下は、「乃木坂46にいる時は、すごく優しい気持ちになれて、みんなが主役になれる。」と語った。そして、彼女が初めてシングル表題曲でセンターを務めた"僕は僕を好きになる"を、またアンコールでは、山下が参加する最後のシングル表題曲"チャンスは平等"を披露した。

山下は、数々のテレビドラマにおける俳優としての活躍を通して、グループの存在を世に広く伝え続けてきたメンバーであり、現行の乃木坂46を最も象徴する存在の一人である。それ故に、彼女の卒業はグループにとって大きなインパクトをもたらす出来事であるが、ただ、これまでの歴代の卒業メンバーたちがそうであったように、山下の表情はとても晴れやかで、メンバーたちに対する絶対的な信頼が滲んでいるように感じた。そして、別れがあれば、新しい出会いがある。現在、6期生のオーディションが進行中で、これから乃木坂46は、今よりもさらに層が厚く、さらに幅広い世代に愛されていくグループになっていくはず。また、きっとそうした変化の過程においても、この12年間、歴代の先輩メンバーたちから継承され続けてきた乃木坂46の精神性は大切に守られ続けていくはず。だからこそ、乃木坂46の未来はきっと明るい。そう強く思う。



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